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後ろには行かせない
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ティールだけではなく、リーシアやバーバスも一目で解ってしまった……目の前のモンスターは桁外れに強い。
鑑定を使用して調べたティールはその情報に絶望を感じた。
現れた虎タイプのモンスターのランクはB。
名前はブラッディ―タイガー。全長四メートルから五メートルの体を持ち、対象は薄い黒の上に多数の赤い線が刻まれている。
習得しているスキルの最低レベルは三。そして最高レベルは七と、ランク通りの化け物だ。
(クソッ!! ……間違いなく強者の部類だ。いきなり襲い掛かることはなく、じっくりとこっちを観察している。嗤っている様子もない……完全に嘗めていない証拠だ)
己の実力を下に視て、七割程度の力で襲ってきてくれた方がまだ勝率は高くなっていた。
(倒せるか!? 持っている実力、スキルを全て使えばなんとかなるかもしれない。ただ、それでも後ろの二人を守りながらは絶対に無理だ)
ティールの力は規格外。
それは紛れもない事実だ。
努力と才能を惜しみなく伸ばし続け、まだまだ伸びしろがある。
だが……それでも目の前に立つモンスターが強敵なことに変わりはない。
残された道筋は……ティール一人で戦って残りの二人に応援を呼びに行かせるという道しか残っていない。
(ふぅーーーー……そうだ、俺はいつもと変わらず冒険をしに来たんだ。これは……超えるべき冒険だ)
バーバスとリーシアはそもそも戦力にならないが、完全に戦意を折られている。
「お前ら、街に戻ってこの事を伝えろ。Bランクのブラッディ―タイガーが現れたってな」
「お、お前らって……おい、お前はどうするんだよ!!!」
「俺が一人の残ってこいつと戦うに決まってるだろ。時間を稼ぐ……だから二人はさっさと街に戻って残っている冒険者達を呼んで来てくれ」
街からブラッディ―タイガーという脅威を退けるにはこの方法しかない。
それは頭で解っていても、心では理解出来ないところがリーシアにはあった。
「駄目よ! ティールも逃げないと……相手はBランクなんでしょ!? まともに戦って勝てる訳がない!!!」
「まともに戦うつもりなんてない。それに……逃げながら戦って勝てる相手でもないんだよ。それに、結果的にこいつを街まで案内するかもしれない。そうなった時の被害を考えろ……ここで誰かが残ってた相手をするのが最善の対処法だ」
「ッ!! ……それなら、バーバスだけが戻って私が後衛として残る!! だから「お前ら二人がいても足手まといなんだ!!!! さっさと街に戻れ!!!!」ッ!? てぃ、ティール……」
「直ぐに、直ぐに応援を呼んでくる。だから死ぬなよ。行くぞリーシア!!!」
「……ッ!!!!!」
このまま残ってティールと一緒に戦いたい。
しかし本人にハッキリと足手まといだと言われてしまった。
言われなくても解っていた。自分ではティールの隣に立って戦えないと。
それを頭では解っていたリーシアは涙を流しながら街に向かって全速力で駆け出した。
「よう、待たせてしまって悪いな。それとも待ってくれていたのか?」
モンスターは基本的に人を他のモンスターと同じく倒し、食べるべき相手だと考えている。
しかし己の意志を持っている。
中には強者との戦いにしか興味がない、なんて個体も存在する。
もしかしたら目の前のモンスターはそんな個体なのかもしれないと思う。
「どういうつもりで待ってくれたのかは知らないが……絶対に二人は追いかけさせない。こっから先、後ろに行けると思うなよ」
全ての強化スキルを発動させ、全力の殺意と戦意がティールの体から溢れ出す。
二人の様子を静かに眺めていたモンスター達は悲鳴を上げてその場から逃げ出した。
それ程までに今のティールは他者を脅かす存在となっている。
だが……目の前に立つブラッディ―タイガーだけは口端を吊り上げ、好戦的な笑みを浮かべていた。
ブラッディ―タイガーにとって街へ応援を呼びに行った二人のことなど既に忘れていた。
興味があるのは目前で自分に立ちして全力の殺意と戦意を向けて来る人間の子供。
ティールが戦闘態勢を取るように、ブラッディ―タイガーもいつでも戦いを始められるように体勢を低くして構えた。
鑑定を使用して調べたティールはその情報に絶望を感じた。
現れた虎タイプのモンスターのランクはB。
名前はブラッディ―タイガー。全長四メートルから五メートルの体を持ち、対象は薄い黒の上に多数の赤い線が刻まれている。
習得しているスキルの最低レベルは三。そして最高レベルは七と、ランク通りの化け物だ。
(クソッ!! ……間違いなく強者の部類だ。いきなり襲い掛かることはなく、じっくりとこっちを観察している。嗤っている様子もない……完全に嘗めていない証拠だ)
己の実力を下に視て、七割程度の力で襲ってきてくれた方がまだ勝率は高くなっていた。
(倒せるか!? 持っている実力、スキルを全て使えばなんとかなるかもしれない。ただ、それでも後ろの二人を守りながらは絶対に無理だ)
ティールの力は規格外。
それは紛れもない事実だ。
努力と才能を惜しみなく伸ばし続け、まだまだ伸びしろがある。
だが……それでも目の前に立つモンスターが強敵なことに変わりはない。
残された道筋は……ティール一人で戦って残りの二人に応援を呼びに行かせるという道しか残っていない。
(ふぅーーーー……そうだ、俺はいつもと変わらず冒険をしに来たんだ。これは……超えるべき冒険だ)
バーバスとリーシアはそもそも戦力にならないが、完全に戦意を折られている。
「お前ら、街に戻ってこの事を伝えろ。Bランクのブラッディ―タイガーが現れたってな」
「お、お前らって……おい、お前はどうするんだよ!!!」
「俺が一人の残ってこいつと戦うに決まってるだろ。時間を稼ぐ……だから二人はさっさと街に戻って残っている冒険者達を呼んで来てくれ」
街からブラッディ―タイガーという脅威を退けるにはこの方法しかない。
それは頭で解っていても、心では理解出来ないところがリーシアにはあった。
「駄目よ! ティールも逃げないと……相手はBランクなんでしょ!? まともに戦って勝てる訳がない!!!」
「まともに戦うつもりなんてない。それに……逃げながら戦って勝てる相手でもないんだよ。それに、結果的にこいつを街まで案内するかもしれない。そうなった時の被害を考えろ……ここで誰かが残ってた相手をするのが最善の対処法だ」
「ッ!! ……それなら、バーバスだけが戻って私が後衛として残る!! だから「お前ら二人がいても足手まといなんだ!!!! さっさと街に戻れ!!!!」ッ!? てぃ、ティール……」
「直ぐに、直ぐに応援を呼んでくる。だから死ぬなよ。行くぞリーシア!!!」
「……ッ!!!!!」
このまま残ってティールと一緒に戦いたい。
しかし本人にハッキリと足手まといだと言われてしまった。
言われなくても解っていた。自分ではティールの隣に立って戦えないと。
それを頭では解っていたリーシアは涙を流しながら街に向かって全速力で駆け出した。
「よう、待たせてしまって悪いな。それとも待ってくれていたのか?」
モンスターは基本的に人を他のモンスターと同じく倒し、食べるべき相手だと考えている。
しかし己の意志を持っている。
中には強者との戦いにしか興味がない、なんて個体も存在する。
もしかしたら目の前のモンスターはそんな個体なのかもしれないと思う。
「どういうつもりで待ってくれたのかは知らないが……絶対に二人は追いかけさせない。こっから先、後ろに行けると思うなよ」
全ての強化スキルを発動させ、全力の殺意と戦意がティールの体から溢れ出す。
二人の様子を静かに眺めていたモンスター達は悲鳴を上げてその場から逃げ出した。
それ程までに今のティールは他者を脅かす存在となっている。
だが……目の前に立つブラッディ―タイガーだけは口端を吊り上げ、好戦的な笑みを浮かべていた。
ブラッディ―タイガーにとって街へ応援を呼びに行った二人のことなど既に忘れていた。
興味があるのは目前で自分に立ちして全力の殺意と戦意を向けて来る人間の子供。
ティールが戦闘態勢を取るように、ブラッディ―タイガーもいつでも戦いを始められるように体勢を低くして構えた。
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