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変わった理由はなんだ?
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「ティール、ちょっと良いかい?」
「あぁ、別に良いぞ」
朝から森の中に入り、モンスターを十数体ほど狩ったティールは昼過ぎには街に戻っていた。
そしてギルドで素材や魔石んの換金が終わったところでエリックに声を掛けられる。
二人はそのままオシャレなカフェに移動し、軽食を頼む。
「もしかしてだけど、バーバスに何か良いアドバイスでもした?」
「?? どういう事だ」
「最近バーバスが一人で突っ走ることはなく、仲間のことを気に掛けながら頑張ってるって話を聞いてさ。ゴブリンの群れの討伐が終わった後の様子からじゃ考えられない雰囲気だ」
「そうかもしれないな」
エリックの言う通り、バーバスの雰囲気は少し前の状態からは考えられないほど変わっていた。
今のバーバスの目からは黒い感情を全く感じられない。
「別に……俺は何もしてないよ。バーバスにも何か思うところがあったんじゃないか?」
「その可能性は否定出来ないけど……あの状態のバーバスが自力で感情を抑える、もしくは霧散させることが出来るかな」
エリックはこの前の討伐でいささかバーバスに失望していた。
パーティーのリーダーであるにも関わらず、自分の功績を得るためだけにパーティーメンバーの存在を蔑ろにしていた。
だが現在のバーバスは全く違う。百八十度対応や考えが変わっていた。
「……俺は何もやってないぞ。ガレッジさん辺りが良いアドバイスをしたんじゃないか? ルーキーにベテランの言葉は突き刺さることが多いだろうかな。俺達より長く生きて、多くの冒険を乗り越えてきた人の言葉だ……俺とじゃ全く重さが違う」
「ベテランの人達の言葉、か……そうだね。確かに重くて突き刺さる言葉を掛けてくれるかもしれない」
(ホっ、とりあえず俺が関与してたってのはバレなさそうだな。でも、リーシアはガレッジさんから頼まれてバーバスに目を覚まさせる言葉を伝えたってのは話さなかったか……要らない心配をさせたくないってことなのかもな)
お互いの事を信頼していて、真実をハッキリと伝えていてもどこか不安に思ってしまうのは仕方がない。
「まっ、良いことじゃないか。あいつが暴走しなければパーティーメンバーが無駄に傷を負ったり死ぬことはない。周りに迷惑を掛けることもなくなる……良いことばかりだ」
「……そうだな。良い流れが来てるんだ、喜ぶべきだろう。同期として負けないように頑張らないとね」
一度は失望した同期だが、今は何か理由があって改心している。
自分のライバルと呼べる者になるかもしれない。そう思うと自然と心のガソリンが燃え上がってきた。
「ところで、ティールはいつまでこの街にいるんだい?」
「エリックもガレッジさんと同じ事を訊くんだな。後五日後ぐらいには別に街に行こうかと思ってる」
「そう遠くない内に違う街に移るとは思っていたけど、随分と早いね」
「かもしれにな。ただ……俺的にはそろそろ違う街に移っても良いかと思えたな」
まだ心の中には思春期の男子らしいモテたい、彼女が欲しいなんて思いがある。
ただ……それよりも冒険者として多くの人と出会い、冒険者人生を充実させたいという思いもある。
「それなら……ダンジョンがある街にでも行くのもありだよね」
「ダンジョンか、それはありだよな。やっぱり俺達冒険者にとって夢がある場所だし」
ダンジョンに潜ってモンスターを倒し、罠を躱して宝箱を手に入れて一攫千金を獲得!!!
男だけではなく、冒険者なら誰であっても夢見るシチュエーションだ。
しかし現実はそう簡単には上手くいかない。
それはティールもエリックも解っている。
「今はまだリーシアと二人だけだから潜ろうとは思えないけど、いずれパーティーが四人……五人ぐらいになったら挑戦しようと思ってる」
「そうだな、それぐらいがベストなんだろうな……俺は一人でも問題無く潜れるマジックアイテムでも手に入れたら潜ろうかな」
実際のところは酸のスキルで自動で動くモンスターを生み出せるので睡眠時の襲撃などは問題無い。
立体感知のスキルを習得しているので奇襲にも難無く対応出来る。
「……ティールはさ、もしかしたら特別なギフトを持っているのかい?」
「ッ!」
いきなり深いゾーンに入ってきた言葉にどう返せば良いのか戸惑ってしまう。
「あぁ、別に良いぞ」
朝から森の中に入り、モンスターを十数体ほど狩ったティールは昼過ぎには街に戻っていた。
そしてギルドで素材や魔石んの換金が終わったところでエリックに声を掛けられる。
二人はそのままオシャレなカフェに移動し、軽食を頼む。
「もしかしてだけど、バーバスに何か良いアドバイスでもした?」
「?? どういう事だ」
「最近バーバスが一人で突っ走ることはなく、仲間のことを気に掛けながら頑張ってるって話を聞いてさ。ゴブリンの群れの討伐が終わった後の様子からじゃ考えられない雰囲気だ」
「そうかもしれないな」
エリックの言う通り、バーバスの雰囲気は少し前の状態からは考えられないほど変わっていた。
今のバーバスの目からは黒い感情を全く感じられない。
「別に……俺は何もしてないよ。バーバスにも何か思うところがあったんじゃないか?」
「その可能性は否定出来ないけど……あの状態のバーバスが自力で感情を抑える、もしくは霧散させることが出来るかな」
エリックはこの前の討伐でいささかバーバスに失望していた。
パーティーのリーダーであるにも関わらず、自分の功績を得るためだけにパーティーメンバーの存在を蔑ろにしていた。
だが現在のバーバスは全く違う。百八十度対応や考えが変わっていた。
「……俺は何もやってないぞ。ガレッジさん辺りが良いアドバイスをしたんじゃないか? ルーキーにベテランの言葉は突き刺さることが多いだろうかな。俺達より長く生きて、多くの冒険を乗り越えてきた人の言葉だ……俺とじゃ全く重さが違う」
「ベテランの人達の言葉、か……そうだね。確かに重くて突き刺さる言葉を掛けてくれるかもしれない」
(ホっ、とりあえず俺が関与してたってのはバレなさそうだな。でも、リーシアはガレッジさんから頼まれてバーバスに目を覚まさせる言葉を伝えたってのは話さなかったか……要らない心配をさせたくないってことなのかもな)
お互いの事を信頼していて、真実をハッキリと伝えていてもどこか不安に思ってしまうのは仕方がない。
「まっ、良いことじゃないか。あいつが暴走しなければパーティーメンバーが無駄に傷を負ったり死ぬことはない。周りに迷惑を掛けることもなくなる……良いことばかりだ」
「……そうだな。良い流れが来てるんだ、喜ぶべきだろう。同期として負けないように頑張らないとね」
一度は失望した同期だが、今は何か理由があって改心している。
自分のライバルと呼べる者になるかもしれない。そう思うと自然と心のガソリンが燃え上がってきた。
「ところで、ティールはいつまでこの街にいるんだい?」
「エリックもガレッジさんと同じ事を訊くんだな。後五日後ぐらいには別に街に行こうかと思ってる」
「そう遠くない内に違う街に移るとは思っていたけど、随分と早いね」
「かもしれにな。ただ……俺的にはそろそろ違う街に移っても良いかと思えたな」
まだ心の中には思春期の男子らしいモテたい、彼女が欲しいなんて思いがある。
ただ……それよりも冒険者として多くの人と出会い、冒険者人生を充実させたいという思いもある。
「それなら……ダンジョンがある街にでも行くのもありだよね」
「ダンジョンか、それはありだよな。やっぱり俺達冒険者にとって夢がある場所だし」
ダンジョンに潜ってモンスターを倒し、罠を躱して宝箱を手に入れて一攫千金を獲得!!!
男だけではなく、冒険者なら誰であっても夢見るシチュエーションだ。
しかし現実はそう簡単には上手くいかない。
それはティールもエリックも解っている。
「今はまだリーシアと二人だけだから潜ろうとは思えないけど、いずれパーティーが四人……五人ぐらいになったら挑戦しようと思ってる」
「そうだな、それぐらいがベストなんだろうな……俺は一人でも問題無く潜れるマジックアイテムでも手に入れたら潜ろうかな」
実際のところは酸のスキルで自動で動くモンスターを生み出せるので睡眠時の襲撃などは問題無い。
立体感知のスキルを習得しているので奇襲にも難無く対応出来る。
「……ティールはさ、もしかしたら特別なギフトを持っているのかい?」
「ッ!」
いきなり深いゾーンに入ってきた言葉にどう返せば良いのか戸惑ってしまう。
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