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残念ながら、才能の壁
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「クソッ!!!」
ルーキー達でキラードッグを倒し終えた直後、バーバスは不機嫌な表情を隠そうとしない。
結果的に自分の一撃でキラードッグ一体を仕留めた。
だが、その間にティールは五秒ほどの間に三体のキラードッグを倒し、自分達が戦い終える頃には解体して魔石を回収し終えていた。
(クソッ! 何が……俺とあいつの何がそこまで違うってんだッ!!!!)
ティールは強いそれはもう認めざるをえない。
自分は一対一で戦って負け、自分達は複数人で倒したモンスターは三体、たった数秒の間に倒してしまった。
世の中、才能という理不尽な壁は存在する。
それはバーバスもなんとなくだが解っていた。
しかしそれでも……それでも、歳上である自分と歳下であるティールにここまでの差があるのか納得出来なかった。
「やっぱりティールの動きはいつ見ても柔軟だね」
「戦い慣れてるだけだ。臨機応変に、な。それに戦い続けていれば一対多数で戦う事もる。それに慣れればまずどいつから片付けて、どうやって攻撃しようかっていうのが素早く考えられる」
その言葉を聞いてそうなのかもしれないと感じる。
だが、自分にはそんな経験がまだない。
何故既に自分より遥か先を走っているのか……その理由を知りたいと強く思った。
ただ、そこに明解単純な……バーバスも薄々気が付いている才能の壁というのが要因であった。
知性……それはティールが神から授かった奪取≪スナッチ≫と同じギフト。
このギフトがあったからこそ、ティールは幼い頃から自分が何をすれば戦うための力が得られるのかを考えられた。
バーバスが努力をしていない訳ではない。才能が全くないのでもなく……言ってしまえよーいドンと走り出すタイミングがティールは知性のお陰で他の子よりも早かった。
ただただそれだけの話。
そう、それだけの話だが……それを聞いたところでバーバスの苛立ちが消えることは無い。
(どうやったら……どうやったら俺はあいつに追いつけるんだよッ!!!!)
普通ならバーバスの方が先輩なので何歩も先に行っている筈。
現にバーバスより後に冒険者になった者はバーバスより実力が低い。
「一対多数の戦いか……経験がない訳じゃないけど、そういったところを意識していなかったな……ティールは何を意識して戦ってるんだい?」
「何を……そうだなぁ~~、相手がどの位置にいるのか。後はどう動こうとしてるのかっていうの把握するのが重要かもな」
「どの位置にいて、どう動いているのかを把握、か……中々難しいね」
これはルーキーにしては優れた実力を持つエリックでも完璧には行えない。
エリックにも無意識な状態でモンスターが次はこういった動きをしてくる、何処にいるかなどを正確に把握出来る瞬間がある。
だが、それは体が無意識的に動いた。無我の境地などの極限まで集中した状態の時に得られる感覚に近い。
しかしティールはそれを意識して完全に予測と把握している。
まぐれで捉えず、実力で捉える。
それが出来れば一対多数の戦いでも苦戦することは無いだろうというのが、ティールの言葉の内容だ。
「ガレッジ……ただのルーキーじゃねぇってのは本当に良く解ったが、それでもちょっと異常じゃねぇか?」
「そう、だな……確かにそうかもしれない。でも、それぐらい解っていなければラージアスキャットには勝てないかもしれないだろ」
「それはそうか……でも、俺がああいった実戦で重要な内容をしっかりと体と頭で理解したのはDランクになってからだぞ。それはまだ冒険者になって一か月も経っていない子供が……なぁ、もしかして貴族の子息なんじゃねぇのか」
「あぁ~~……無きにしも非ずな考えだな。普通に平民っぽいけど……そういった線も考えられるか」
名前を偽って冒険者となる貴族の子供はそこそこいる。
逆にどうどう冒険者になる時に家名をギルドに伝える者もいる。
どちらにも良し悪しは無い。
だが、ベテラン陣は仮にティールが貴族の子息であるならば、ここまで実力が高いのにも納得出来る。
(その可能性はあるかもしれないが……そういった匂いはあんまりしないんだよな)
過去に貴族と対面したことがあるガレッジは、その時受けた貴族のオーラや雰囲気に独特な匂いを覚えており、ティールにそれらは当て嵌まっていなかった。
ルーキー達でキラードッグを倒し終えた直後、バーバスは不機嫌な表情を隠そうとしない。
結果的に自分の一撃でキラードッグ一体を仕留めた。
だが、その間にティールは五秒ほどの間に三体のキラードッグを倒し、自分達が戦い終える頃には解体して魔石を回収し終えていた。
(クソッ! 何が……俺とあいつの何がそこまで違うってんだッ!!!!)
ティールは強いそれはもう認めざるをえない。
自分は一対一で戦って負け、自分達は複数人で倒したモンスターは三体、たった数秒の間に倒してしまった。
世の中、才能という理不尽な壁は存在する。
それはバーバスもなんとなくだが解っていた。
しかしそれでも……それでも、歳上である自分と歳下であるティールにここまでの差があるのか納得出来なかった。
「やっぱりティールの動きはいつ見ても柔軟だね」
「戦い慣れてるだけだ。臨機応変に、な。それに戦い続けていれば一対多数で戦う事もる。それに慣れればまずどいつから片付けて、どうやって攻撃しようかっていうのが素早く考えられる」
その言葉を聞いてそうなのかもしれないと感じる。
だが、自分にはそんな経験がまだない。
何故既に自分より遥か先を走っているのか……その理由を知りたいと強く思った。
ただ、そこに明解単純な……バーバスも薄々気が付いている才能の壁というのが要因であった。
知性……それはティールが神から授かった奪取≪スナッチ≫と同じギフト。
このギフトがあったからこそ、ティールは幼い頃から自分が何をすれば戦うための力が得られるのかを考えられた。
バーバスが努力をしていない訳ではない。才能が全くないのでもなく……言ってしまえよーいドンと走り出すタイミングがティールは知性のお陰で他の子よりも早かった。
ただただそれだけの話。
そう、それだけの話だが……それを聞いたところでバーバスの苛立ちが消えることは無い。
(どうやったら……どうやったら俺はあいつに追いつけるんだよッ!!!!)
普通ならバーバスの方が先輩なので何歩も先に行っている筈。
現にバーバスより後に冒険者になった者はバーバスより実力が低い。
「一対多数の戦いか……経験がない訳じゃないけど、そういったところを意識していなかったな……ティールは何を意識して戦ってるんだい?」
「何を……そうだなぁ~~、相手がどの位置にいるのか。後はどう動こうとしてるのかっていうの把握するのが重要かもな」
「どの位置にいて、どう動いているのかを把握、か……中々難しいね」
これはルーキーにしては優れた実力を持つエリックでも完璧には行えない。
エリックにも無意識な状態でモンスターが次はこういった動きをしてくる、何処にいるかなどを正確に把握出来る瞬間がある。
だが、それは体が無意識的に動いた。無我の境地などの極限まで集中した状態の時に得られる感覚に近い。
しかしティールはそれを意識して完全に予測と把握している。
まぐれで捉えず、実力で捉える。
それが出来れば一対多数の戦いでも苦戦することは無いだろうというのが、ティールの言葉の内容だ。
「ガレッジ……ただのルーキーじゃねぇってのは本当に良く解ったが、それでもちょっと異常じゃねぇか?」
「そう、だな……確かにそうかもしれない。でも、それぐらい解っていなければラージアスキャットには勝てないかもしれないだろ」
「それはそうか……でも、俺がああいった実戦で重要な内容をしっかりと体と頭で理解したのはDランクになってからだぞ。それはまだ冒険者になって一か月も経っていない子供が……なぁ、もしかして貴族の子息なんじゃねぇのか」
「あぁ~~……無きにしも非ずな考えだな。普通に平民っぽいけど……そういった線も考えられるか」
名前を偽って冒険者となる貴族の子供はそこそこいる。
逆にどうどう冒険者になる時に家名をギルドに伝える者もいる。
どちらにも良し悪しは無い。
だが、ベテラン陣は仮にティールが貴族の子息であるならば、ここまで実力が高いのにも納得出来る。
(その可能性はあるかもしれないが……そういった匂いはあんまりしないんだよな)
過去に貴族と対面したことがあるガレッジは、その時受けた貴族のオーラや雰囲気に独特な匂いを覚えており、ティールにそれらは当て嵌まっていなかった。
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