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その感情は悪では無い
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そして集合時間になり、全員が集まった。
そこでガレッジはルーキー達を纏めるリーダーとしてティールを任命した。
ティールはその話を事前に聞いていたので特に驚きはしない。
エリックとリーシアは多少驚くも、妥当な結論だなと思って落ち着いた。
だが、それ以外のルーキー達は全く驚きを隠せていない。
ティールが強いというのは先日のバーバスとの決闘で解っていた。
しかし、それでも自分達を纏めるリーダーに任命されるとは思って無かったのだ。
バーバスはないだろうと思っており、エリックが自分達を纏めるリーダーだと予想していたが、それは見事に外れた。
そしてこの結果に一番納得していないのがバーバスだった。
「なんでこいつが俺達を纏めるリーダーなんすか!!!」
「なんでって訊かれてもな……こいつがお前らの中で一番強い、理由はそれで十分じゃないか?」
実力だけが全てという訳ではないが、実力が物言う世界だ。
大体のルーキー達はそれだけで納得してしまう。
バーバスに勝ったティールに自分達が勝てるか? 絶対に無理だと思っている。
パーティーで戦えば勝てると考えている者は少々いるが、タイマンで戦って勝てると思っている思い上がりはいない。
(まっ、強いだけが理由じゃないけどな)
その状況に応じて適切に動ける、そういった考えもある。
ガレッジは強さだけでティールをリーダーに選んではいない。
ティールがいなければエリックをリーダーに選ぼうと思っていたが、ティールはエリック以上に場数を踏んでいると思わせる強さがある。
その事実をガレッジの勘が見事に見抜いていた。
「それは……でも、こいつはまだ冒険者になって一か月も経ってない素人っすよ!! そんな奴にリーダーが務まる訳無いじゃないっすか!!!」
冒険者の中で素人だろうとベテランだろうと、実戦での強さには関係無い。
それを身に染みて解っているベテラン達であっても、バーバスが反対しようとしている気持ちが解からなくはない。
バーバスは冒険者になってから数年経っている。
エリックとリーシアと同じ年に冒険者になった同期であり、苦しい思いをしながらも一歩ずつ会談を上がってきた。
そんな自分達を差し置いて冒険者になって一か月も経っていない素人が自分達の上に立つなど、考えられない……認められない。
「バーバス、お前がティールに決闘で負けてその悔しさがまだ消えていないのは解るが、それを依頼に持ち込むな。確かにティールは冒険者になって一か月も経っていない様だが、それでもその強さは本物だ。きっと冒険者になる前に相当鍛えてきたんだろうな」
ギフトのお陰で得た力もあるが、大体は積み重ねてきた鍛錬と実戦で手に入れた。
そこは間違ってはいない。
「お前は冒険者になって数年程度、この街から殆ど出ていないから殆ど知らないのかもしれないが、別に冒険者じゃなくても強い連中は幾らでもいる。年齢が低くても才能があって幼い頃から努力を重ねてきたガキってのは総じて強いんだよ。バーバス、お前はまだまだ幼いガキの頃からちゃんとした鍛錬を重ねてきたのか」
「・・・・・・」
自分の過去を思い返し、人に胸を張って誇れる程努力をしていないバーバスの口は完全に閉じてしまう。
「ティール、お前はどうだった?」
「最初は投擲の訓練がメインでした。それから体術やスタミナ強化の訓練を始めて、ある程度戦える様になったら村の外に出てモンスターと戦ってました。解体に関してもその時に経験を重ねてました」
「お、おぉう! そうか。思ったよりもキッチリしたものだったな。まっ、そういうことだ。バーバス、お前とティールじゃ冒険者になる前に積み重ねてきた訓練と実戦の量が違い過ぎるんだよ。だからお前はあっさりと負けた」
「ッ……」
言い返したい、なんとか言葉を探して言い返したい。
だが、それは紛れもない事実なので一つも言葉が出なかった。
「悔しいって感情が悪い訳じゃねぇ。でもな、負けた……弱いという感情を受け入れなきゃ強くなれねぇんだよ。お前らも、そこは忘れんなよ。んじゃ、そろそろ行くぞ」
バーバスからの反論も無くなったのでようやく討伐隊はゴブリンの巣へと出発した。
そこでガレッジはルーキー達を纏めるリーダーとしてティールを任命した。
ティールはその話を事前に聞いていたので特に驚きはしない。
エリックとリーシアは多少驚くも、妥当な結論だなと思って落ち着いた。
だが、それ以外のルーキー達は全く驚きを隠せていない。
ティールが強いというのは先日のバーバスとの決闘で解っていた。
しかし、それでも自分達を纏めるリーダーに任命されるとは思って無かったのだ。
バーバスはないだろうと思っており、エリックが自分達を纏めるリーダーだと予想していたが、それは見事に外れた。
そしてこの結果に一番納得していないのがバーバスだった。
「なんでこいつが俺達を纏めるリーダーなんすか!!!」
「なんでって訊かれてもな……こいつがお前らの中で一番強い、理由はそれで十分じゃないか?」
実力だけが全てという訳ではないが、実力が物言う世界だ。
大体のルーキー達はそれだけで納得してしまう。
バーバスに勝ったティールに自分達が勝てるか? 絶対に無理だと思っている。
パーティーで戦えば勝てると考えている者は少々いるが、タイマンで戦って勝てると思っている思い上がりはいない。
(まっ、強いだけが理由じゃないけどな)
その状況に応じて適切に動ける、そういった考えもある。
ガレッジは強さだけでティールをリーダーに選んではいない。
ティールがいなければエリックをリーダーに選ぼうと思っていたが、ティールはエリック以上に場数を踏んでいると思わせる強さがある。
その事実をガレッジの勘が見事に見抜いていた。
「それは……でも、こいつはまだ冒険者になって一か月も経ってない素人っすよ!! そんな奴にリーダーが務まる訳無いじゃないっすか!!!」
冒険者の中で素人だろうとベテランだろうと、実戦での強さには関係無い。
それを身に染みて解っているベテラン達であっても、バーバスが反対しようとしている気持ちが解からなくはない。
バーバスは冒険者になってから数年経っている。
エリックとリーシアと同じ年に冒険者になった同期であり、苦しい思いをしながらも一歩ずつ会談を上がってきた。
そんな自分達を差し置いて冒険者になって一か月も経っていない素人が自分達の上に立つなど、考えられない……認められない。
「バーバス、お前がティールに決闘で負けてその悔しさがまだ消えていないのは解るが、それを依頼に持ち込むな。確かにティールは冒険者になって一か月も経っていない様だが、それでもその強さは本物だ。きっと冒険者になる前に相当鍛えてきたんだろうな」
ギフトのお陰で得た力もあるが、大体は積み重ねてきた鍛錬と実戦で手に入れた。
そこは間違ってはいない。
「お前は冒険者になって数年程度、この街から殆ど出ていないから殆ど知らないのかもしれないが、別に冒険者じゃなくても強い連中は幾らでもいる。年齢が低くても才能があって幼い頃から努力を重ねてきたガキってのは総じて強いんだよ。バーバス、お前はまだまだ幼いガキの頃からちゃんとした鍛錬を重ねてきたのか」
「・・・・・・」
自分の過去を思い返し、人に胸を張って誇れる程努力をしていないバーバスの口は完全に閉じてしまう。
「ティール、お前はどうだった?」
「最初は投擲の訓練がメインでした。それから体術やスタミナ強化の訓練を始めて、ある程度戦える様になったら村の外に出てモンスターと戦ってました。解体に関してもその時に経験を重ねてました」
「お、おぉう! そうか。思ったよりもキッチリしたものだったな。まっ、そういうことだ。バーバス、お前とティールじゃ冒険者になる前に積み重ねてきた訓練と実戦の量が違い過ぎるんだよ。だからお前はあっさりと負けた」
「ッ……」
言い返したい、なんとか言葉を探して言い返したい。
だが、それは紛れもない事実なので一つも言葉が出なかった。
「悔しいって感情が悪い訳じゃねぇ。でもな、負けた……弱いという感情を受け入れなきゃ強くなれねぇんだよ。お前らも、そこは忘れんなよ。んじゃ、そろそろ行くぞ」
バーバスからの反論も無くなったのでようやく討伐隊はゴブリンの巣へと出発した。
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