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差の証明
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「はぁーーーー、なんだよ。あんだけ粋がってたからあいつが勝つと思ってたのによぉ」
「まさかあっちの覇気が無さそうなルーキーが優勢になるなんてな」
「俺達の眼も曇っちまったもんだ」
八対二でバーバスの勝利に賭けていた冒険者の方が大きく、最近のティールの噂を知っている者や大穴に賭けてみようと考えていた者達は内心ウハウハだ。
(最近他のルーキーとは比べ物にならない量のモンスターを狩ってくる奴がいるとは聞いていたが……ドンピシャだったみたいだな)
(マジかよ、偶には調子乗って賭けてみるかと思ったが……とんでもないルーキーだったみたいだな)
バーバスがルーキーの中で決して弱い部類な訳ではない。
寧ろルーキーにしてはそこそこ強いというのがベテラン冒険者達の印象であった。
だが……そのバーバスと戦っているティールは格が違った。
身体強化を使ってパワーとスピードも上がった。
そんな状態であってもバーバスの斬撃はティールに一回もまともに当たらない。
逃げ足が速いどうこうの問題では無く、避け慣れている。
そしてその動きはベテラン達にティールが戦い慣れているんだと結び付けられる。
こうなることを最初から予測していたエリックリーシアは何故か胸を張って喜んでおり、バーバス派だったルーキー達は口をあんぐりと開けて固まってしまっている。
(……そろそろ終わりだよな)
もう奥の手は完全に残っていないだろうと判断したティールは回避から攻めに転じる。
「なわっ!? がっ! ぐっ!!?? うそ、だろっ!!!」
この世界ではレベル差によって身体能力などは容易に覆る。
ただ、まだティールが自分よりレベルが上だと解っていないバーバスは自分より体格がショボいティールにここまで圧倒されている状況が信じられない。
「お前、受けは下手糞なんだな」
ティールが攻めに転じたことでバーバスは強制的に受けるか避けることしか出来ない。
そして上手くスピードを調整されているのでバーバスは攻撃を受けるしかない状況だ。
一撃一撃がバーバスの攻撃よりも重く、受けが全て弾かれ、崩されてしまう。
(もう……良いよな)
バーバスが完全に反応出来ない速度で動き、木剣で大剣を弾き飛ばした。
「いでっ!?」
「ほい。これで俺の勝ちだよな」
得物が弾かれたことに気を取られた隙に剣先を喉元に突き付けられたバーバスは動くことが出来なかった。
(く、クソッ!!! なんでだよ……なんでなんだよっ!!!! エリックに負けるなら解る、だが!! なんでこんなクソガキにまで、俺が!!!!)
もう十分に追い詰められた。ここから逆転することなど不可能状態にも拘わらず、バーバスはまだ自分の負けを認められていなかった。
だが、この試合の勝敗を決めるのはバーバスの意地……いいや、くだらないプライドではなく審判であるエリックの判断だ。
「そこまで、勝者はティールだ!!!」
その言葉により模擬戦が正式に終わった。
ティールの勝利に賭けていた冒険者達はまさかの結果に喜び、バーバスの勝利に賭けていた冒険者達は大きなため息を吐きながら去って行く。
「待てよ……待てよっ!!!! まだ!! 俺は負けてねぇッ!!!!」
「いいや、バーバス。君の負けだ。どう考えても、あそこから逆転は不可能だ」
手札がゼロであったバーバスに逆転の手段は無かった。
物語の主人公の様に新しい力に目覚めることも無い。
正直な話、目覚めたところでティールに負けるという結果は変わらない。
どう足掻ていも……今のバーバスがティールに勝つ可能性は万に一つも無いのだ。
「エリックの言う通りよ。自分の得物は弾き飛ばされて手になく、喉元に剣先を突きつけられた状態からどうやって逆転するのよ。エリックなら何とか出来る?」
「無理だね。そもそも剣先を喉元に止めた。その止めるという余裕がある時点で完全に負けだよ。だって……止める余裕があるという事は、突き刺す時間があったということなんだから」
模擬戦だからこそ、ティールは剣先を喉元に突き付けただけで終えた。
だが、これが実戦で襲われた状況であれば既に切り捨てている。
何はともあれ、現段階で二人の間にはどうしようもなく埋められない差があるというのが証明された。
「まさかあっちの覇気が無さそうなルーキーが優勢になるなんてな」
「俺達の眼も曇っちまったもんだ」
八対二でバーバスの勝利に賭けていた冒険者の方が大きく、最近のティールの噂を知っている者や大穴に賭けてみようと考えていた者達は内心ウハウハだ。
(最近他のルーキーとは比べ物にならない量のモンスターを狩ってくる奴がいるとは聞いていたが……ドンピシャだったみたいだな)
(マジかよ、偶には調子乗って賭けてみるかと思ったが……とんでもないルーキーだったみたいだな)
バーバスがルーキーの中で決して弱い部類な訳ではない。
寧ろルーキーにしてはそこそこ強いというのがベテラン冒険者達の印象であった。
だが……そのバーバスと戦っているティールは格が違った。
身体強化を使ってパワーとスピードも上がった。
そんな状態であってもバーバスの斬撃はティールに一回もまともに当たらない。
逃げ足が速いどうこうの問題では無く、避け慣れている。
そしてその動きはベテラン達にティールが戦い慣れているんだと結び付けられる。
こうなることを最初から予測していたエリックリーシアは何故か胸を張って喜んでおり、バーバス派だったルーキー達は口をあんぐりと開けて固まってしまっている。
(……そろそろ終わりだよな)
もう奥の手は完全に残っていないだろうと判断したティールは回避から攻めに転じる。
「なわっ!? がっ! ぐっ!!?? うそ、だろっ!!!」
この世界ではレベル差によって身体能力などは容易に覆る。
ただ、まだティールが自分よりレベルが上だと解っていないバーバスは自分より体格がショボいティールにここまで圧倒されている状況が信じられない。
「お前、受けは下手糞なんだな」
ティールが攻めに転じたことでバーバスは強制的に受けるか避けることしか出来ない。
そして上手くスピードを調整されているのでバーバスは攻撃を受けるしかない状況だ。
一撃一撃がバーバスの攻撃よりも重く、受けが全て弾かれ、崩されてしまう。
(もう……良いよな)
バーバスが完全に反応出来ない速度で動き、木剣で大剣を弾き飛ばした。
「いでっ!?」
「ほい。これで俺の勝ちだよな」
得物が弾かれたことに気を取られた隙に剣先を喉元に突き付けられたバーバスは動くことが出来なかった。
(く、クソッ!!! なんでだよ……なんでなんだよっ!!!! エリックに負けるなら解る、だが!! なんでこんなクソガキにまで、俺が!!!!)
もう十分に追い詰められた。ここから逆転することなど不可能状態にも拘わらず、バーバスはまだ自分の負けを認められていなかった。
だが、この試合の勝敗を決めるのはバーバスの意地……いいや、くだらないプライドではなく審判であるエリックの判断だ。
「そこまで、勝者はティールだ!!!」
その言葉により模擬戦が正式に終わった。
ティールの勝利に賭けていた冒険者達はまさかの結果に喜び、バーバスの勝利に賭けていた冒険者達は大きなため息を吐きながら去って行く。
「待てよ……待てよっ!!!! まだ!! 俺は負けてねぇッ!!!!」
「いいや、バーバス。君の負けだ。どう考えても、あそこから逆転は不可能だ」
手札がゼロであったバーバスに逆転の手段は無かった。
物語の主人公の様に新しい力に目覚めることも無い。
正直な話、目覚めたところでティールに負けるという結果は変わらない。
どう足掻ていも……今のバーバスがティールに勝つ可能性は万に一つも無いのだ。
「エリックの言う通りよ。自分の得物は弾き飛ばされて手になく、喉元に剣先を突きつけられた状態からどうやって逆転するのよ。エリックなら何とか出来る?」
「無理だね。そもそも剣先を喉元に止めた。その止めるという余裕がある時点で完全に負けだよ。だって……止める余裕があるという事は、突き刺す時間があったということなんだから」
模擬戦だからこそ、ティールは剣先を喉元に突き付けただけで終えた。
だが、これが実戦で襲われた状況であれば既に切り捨てている。
何はともあれ、現段階で二人の間にはどうしようもなく埋められない差があるというのが証明された。
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