あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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ブンブン丸だな

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(……なんというか、大雑把過ぎるな)

まさに力技というべき斬撃ばかりがティールに迫るが、そのどれもが掠りもしない。

「はぁ、はぁ、はぁ、クソが!! 逃げ足だけは一丁前だな!」

「そりゃどうも。お前のブンブン丸による攻撃も大したものだな。良い風を起こしてくれるじゃないか」

バーバスの挑発よりもティールの挑発の方が上回り、野次馬達もティールの言葉に確かにと思いながら頷く。

バーバスの筋力が足りないという訳ではないが、あまりにも攻撃が単調なのでティールにとってバーバスの攻撃を風を起こす扇風機だった。

「おい、さっさと身体強化のスキルを使えよ」

それを使ってようやくバーバスはティールの遊び相手となる。
身体強化を使用していないバーバスなど、子供の相手をしているのとなんら変わらない。

「もしかしてだけど……身体強化のスキルが使えないって訳じゃないよな?」

それは本当に単純な疑問だった。
あれだけ粋がっていた相手が前衛の必須スキルである身体強化を使えないなど、考えられない。

ただ、バーバスは身体強化のスキルを有している。
有しているのだが……本気でティールを相手に身体強化を使わずとも勝てると思っていた。

その傲慢な考えの結果、スタミナは消費したが相手に掠り傷一つ負わすことが出来なかった。

「調子に乗ってんじゃねぇぞッ!!!!」

(大した実力も無いのに調子に乗ってんのはそっちだろ)

心の中で悪態を突きながらも身体強化で強化されたバーバスの攻撃を当たり前の様に躱していく。
そしてこの段階でもティールは身体強化のスキルを使用していない。

身体強化を使うか使わないかでその差は大きく変わるが、レベルの差がそれを潰してしまう。
幼い頃からモンスターを狩ってきたティールと、冒険者になってからモンスターを倒し始めたバーバスとではそこに大きな差がある。

(大剣だから攻撃が多少なりとも大雑把になるのは解るけど、いくらなんでも力任せ過ぎるだろ)

上段からの斬撃……横、上、斜めから放たれるがそのどれも当たらない。
バーバスにとっては全て全力で放っているので一つでも当たれば一気に形勢逆転だと考えている。

だが、そのどれもがティールにとって読みやすい動きだった。

(こいつ……もしかして誰にも基礎を教えて貰っていないのか? 体の動かし方すら無理矢理だし……モンスターあいてならそれで通じるかもしれないけど、同じ人間相手にそんな適当な動きで敵う訳ないだろ)

不規則な動きが相手に混乱を招く場合もあるが、それは常識を逸した動きであればの話。
バーバスの動きは単純に基礎不足なだけであり、その動きも単純で読みやすい。
デメリットしかない動きと言える。

「おい、そろそろ本気を出したらどうだ」

「いつまでも、逃げられると思うなよっ!!!!」

「お前の攻撃なんていつまでも逃げられるに決まってるだろ」

パワーとスピード、タフネスも上がっているが、全て空振り。
そして一撃一撃に全力を込めているバーバスと動きを十分に読んで避けているティールでは体力の消耗に大きな差がある。

「お前……その程度の実力しかないのにあそこまで粋がってたのか? 実戦的な実力ならリーシアとそこまで変わらないんじゃないか? いや、真っ当な動きをしている分、リーシアの方が上かもな」

これは実際にリーシアと模擬戦を行ったうえでの感想。
バーバス程度の実力では得物で攻撃を受けることすらなく、全て躱せてしまう。

そして惚れた女より弱いと告げられたバーバスの頭に再度血が上り、更にブンブン丸状態になる。

(大剣が高威力ってのは解るけど……小技を繋げてフィニッシュまで持っていくのが妥当だと思うんだけどなぁ~)

野次馬達もバーバスとティール、どちらが上なのか解ってしまう。
確かにティールはバーバスの攻撃を避けてばかりだ。バーバスの方が優勢に見えるかもしれない。

ただ、ティールの表情を見れば一目瞭然だった。
この勝負、完全にティールの勝ちだと解った冒険者達の中で、バーバスの勝ちに賭けていた者達は悪態を突き始めた。
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