上 下
73 / 693

守るために

しおりを挟む
ゾルとの美味い夕食を終え、ティールは宿へと戻る。

(ゴブリンの群れ、か……俺と他のルーキー達とでは差があるか、楽な討伐って訳じゃないんだよな)

一対多数の戦いにも慣れているティールにとっては造作も無い作業だ。
一番ランクが高いモンスターでもCランク。

ゴブリンジェネラルは他のゴブリンやその上位種と比べて身体能力が遥かに高い。
だが、複数の身体強化系のスキルを持っているティールはそれを容易に追い抜ける。

(そもそも、ゴブリンの巣が無ければ何も心配する必要は無いんだけどな)

塵も積もれば山となる。ゴブリンも数が増えれば面倒な敵だ。
特にゴブリンリーダーやゴブリンジェネラル、ゴブリンキング等の同族を統率する立場のモンスターは他の同族の身体能力を強化するスキル、統率等を持っているので厄介極まる。

「はぁーーー……いっそ、俺だけで潰すか?」

ティールが持っている手札を全て使えばゴブリンの群れを全滅することは出来るのか、否か。
結果としては出来る。

通常種や上位種のゴブリンではティールのスピードに追い付くことが出来ない。
同等のスピードを持っているのジェネラルぐらいだが、ティールには酸のスキルを使用して味方を増やすことが出来る。

乱戦にも慣れているティールなら消して不可能な目標ではない。

(でも、急に目撃情報が増えているゴブリンが消えたらそれはそれでギルドが混乱するか。ふぅ……本当に迷うな)

「ティールじゃないか、今帰り?」

「……エリックか。あぁ、今丁度夕食を食べ終わって宿に帰るところだ」

「そうなんだ、僕も一緒だよ。それにしても……暗い表情をしていたけど、何か嫌な事でもあったのかい?」

ティールは気付いていないだろうが、良く見れば表情には不安な感情が顔に出ていると解る。

「いや……うん。まぁ、ちょっとな」

「それは、僕とかには相談出来ない内容なのかな」

(……別に極秘って訳じゃ無いし、勘の良い奴ならもう既に知ってるか)

ゾルからも他の冒険者に伝えてはならないとは言われてないので、ティールはエリックに今自分が考えている可能性について話す。

「エリック、ここ最近ゴブリンの目撃情報が多いのは知ってるか」

「……うん、僕もここ最近の依頼最中に襲われることが多い。僕やリーシアは大丈夫だったけど、他の同じルーキー達の中では怪我を負った人達もいる。相変わらず油断ならないモンスターだよ」

正面から襲うよりも奇襲に慣れているゴブリンに苦戦してしまうルーキーは多い。
その奇襲を防いでしまえば問題はないが、そこでダメージを食らってしまうと崩れてしまうことがる。

「そうだな……それで、そのゴブリンなんだがもしかしたら巣を作っているかもしれないらしい」

「っ! それは本当なのかい」

「いや、まだ確定じゃない。でも、ギルドの職員からその可能性があるって聞いたんだ」

「ギルドの人が……そうか。それは可能性としては高いということだね」

過去に冒険者が嘘の情報を恨みがある同業者に伝え、暗殺したという事件があった。
それ以降、ベテランの冒険者は親しい同業者からの情報以外、基本的に同業者からの情報よりも、ギルドからの情報の方が信用するようになった。

勿論、ルーキー達にはその様な意識は無いが、単純にエリックの中でギルドからの情報は信用出来る。

「もしかしたら、その討伐に僕達も参加するかもしれないってことかな」

「まぁ……そういうことだな。要請が来たら……お前は参加するのか?」

今ティールが一番気になっている内容を尋ねる。

「リーシアとパーティーを組んでいるから僕だけの判断では決められないけど……多分参加すると思うよ」

「そうか……お前らの実力を考えれば、参加しようと思うのは当然か」

エリックとリーシアの実力を考えればゴブリンの上位種は大抵倒すことが出来る。
ただ、ゴブリンジェネラルに関しては強敵ゆえに、二人では倒せない可能性の方が高い。

「ティールはどうなんだい? やっぱり参加するつもりなのか」

「俺は……そうだな。多分、参加する」

本人の口からおそらくではあるが、参加すると伝えられた。
それなら、守りたいと思う友人の為にティールは参加すると完全に決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ
ファンタジー
異世界ものですが、基本バトルはありません。 主人公の目的は世界の文明レベルを上げる事。 日常シーンがメインになると思います。 結城真悟は過労死で40年の人生に幕を閉じた。 しかし、何故か異世界の神様のお願いで、異世界 の文明レベルを上げると言う使命を受け転生する。 転生した、真悟はユーリと言う名前で、日々、ど うすれば文明レベルが上がるのか悩みながら、そ してやらかしながら異世界ライフを楽しむのであ った。 初心者かつ初投稿ですので生暖かい目で読んで頂くと助かります。 投稿は仕事の関係で不定期とさせて頂きます。 15Rについては、後々奴隷等を出す予定なので設定しました。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...