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異様な数

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「よう、ティール。今帰りか?」

「ゾルさん……はい。今日の狩りは終わって素材や魔石の換金が終わったので」

「そうか、それなら一緒に晩飯でも食わないか?」

ゾルとは少し前に一緒に飯を食べているので、特に警戒する意味は無いと思い、ティールはその誘いに乗った。
空いてそうな店を見つけ、適当に料理を頼んでお腹を空かせながら後は待つのみ。

「最近の調子はどうだ?」

「特に問題無くって感じですね。依頼も順調にこなせているんで」

「まっ、お前の実力を考えれば問題無く達成出来るだろうな」

既にティールがFランクに似合わない実力を持っている事はギルド職員なら全員が知っている。
討伐依頼は自分のランクに見合う内容を選んでいるが、ギルドで換金する時に出す素材や魔石の量や質が異常だ。

例年、ルーキーという枠には収まらない実力を持つ新人が現れる事は稀にある。
しかし……ティールはそんな者達とは比べ物にならない実力を持っている。

(なんて言えば良いんだろうな……ティールが持っている手札を全て知っている訳じゃ無いから断言は出来ないが、他のルーキー達とは持っている基礎能力や技術に差があり過ぎる)

元Cランク冒険者だったゾルの考えは正しく、幼い頃から高め始めたティールの技量はルーキーと比べることもおこがましい位置にまで登っている。

「最近は新しい武器を買ったので、その武器の試し斬りを行っています」

今日も爪撃や突進のスキルを使った戦闘の方かにも、刀をメインにした戦闘も行っていた。

「新しい武器か……どんな武器を使い始めたんだ?」

「刀です。リーシアと武器屋を回っていた時に偶々……本当に偶々買えたんで」

(そうだよ……今更だけど、本当に偶々だよな。豹雷なんて業物をたった金貨を五枚で買えるなんて……他の刀達も同じだけどさ)

その優しさに困ることはあるが、あの時はバースの店に連れて行ってくれたことにティールは感謝している。

「ほぉ~~、刀か。扱いが難しい武器だってのは知ってるが……難しいか?」

「そうですね。ある程度の器用さが必要だと思います。両刃の剣とは使い勝手が違いますからね」

「やっぱりそうなのか。ハンマーとか戦槌を使ってるような奴らには扱えない武器なんだろうな」

「ん~~~~……そ、そうですね。あんまり否定出来ないです。ただ、ハンマーや戦槌にも良いところがあるのは事実ですからね」

あまりにも皮膚が堅く、斬撃に耐性があるモンスターなんてごろごろいる。
ティールの実力ならば難無く倒せるかもしれないが、ゴーレムなどは剣や槍などを使っているルーキーには天敵とも言える。

「打撃系が有効なモンスターもいるからなぁ~……なぁ、ティール。森の中で変化は無いか?」

「変化、ですか? いや、特には……ゴブリンが五体程集まって行動していたのを最後に見ましたけど、それぐらいはいつも通りかと思って見逃しました」

「ゴブリン、か……」

「どうかしましたか?」

油断して調子に乗っていたら足元を掬われる可能性はあるが、しっかりと油断せずに挑めば倒せないモンスターでは無い。

そもそも通常のゴブリンは大した力を持っおらず、戦い方もド素人そのもの。
上位種に進化したとしても、ルーキーの域を超えているのであれば負けることは基本的に無い。

「最近、ゴブリンの発見数が例年と比べて増えているんだ。倒したルーキーしかり、ティールみたいに今日はいいやと思って見逃した場合に確認した数も含めてそこそこな数になる」

「それは……もしかして小さな群れでは無く、大きな群れがあるかもしれないという事ですか?」

「拠点と作るほどに大きくなっている可能性がある。規模にもよるが……ジェネラルがいてもおかしく無い」

ゴブリンの将軍、ゴブリンジェネラルはCランクのモンスターにカテゴライズされており、ルーキーではまず勝てない相手だ。
通常種のゴブリンやゴブリンアーチャー、ソードマン、メイジとは訳が違う。

「もう少し調査が必要だが、場合によっては巣を潰すために大掛かりな作業を行うだろうな」
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