あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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自信の作用

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「あら、ティールじゃない。今日は訓練しにきたの?」

「……そういうリーシアは訓練か?」

声だけで誰が自分に話しかけてきたのか解った。
木剣を持ったリーシアが後ろに立っていた。

(……いや、訓練をしに来たのは分る。でも、なんで木剣?)

遠距離攻撃が専門の人でも、多少の接近戦が出来た方が良い。
それはティールの中で常識だ。

でも、わざわざ長剣を使う必要は無い。

「最近討伐依頼を受けてばかりって聞くけど、ちゃんと休んでるの?」

「昨日はちゃんと休んでた。というか、村にいたときは連日森の中でモンスターを狩ってたからなぁ……別にそこまで大して疲れてない」

村から都会にやって来て周囲の環境は変わった。
だが、生活サイクルは大して変わっていない。

なので特別疲れたという感覚も無い。

「……それって普通におかしいと思うのだけどね」

「そうか? 自分から望んで狩ってたからあんまり分らん」

ティールとしてはそれが当たり前だった。
他の子供達でもギフトを得た者達は訓練を積み重ねている時間が多かったと、うっすら覚えている。

「やっぱりサクッとグレーグリズリーを倒すだけはあるわね」

「あれはリーシアとエリックが先にボコボコにしてたからだろ。俺はたまたま止めを刺しただけだ」

「あの時はそういう状況だったかもしれないけど、本当は一人でも倒せるんじゃないの?」

ティールが本気で戦っているところは、まだ見たことが無い。
でも、絶対に自分より強いと直感で解った。

(エリックより強いかは二人共接近戦タイプだから分からないけど……でも、耐格差で言えばエリックの方が有利よね)

確かに二人の間には三年という差がある。
十二歳と十五歳の三歳差というのは非常に大きい。

ティールはまだまだ成長期であり、まだまだこれから背が伸びて肉も付く。
ただ、現時点ではエリックには及ばない。

「さぁ、どうだろうな」

リーシアの問いにすっとぼけた表情で答えるが、慌てながらとはいえ今よりも幼い頃に一撃で仕留めている。
完全に実力で倒したという訳では無く、運も重なっての結果。

それでもティールが十歳以下の年齢でグレーグリズリーというDランクのモンスターを倒したという結果は変わらない。

「謙虚ね。冒険者なんだからもう少し自信を持っても良いんじゃない? 別に威張り散らせって言ってる訳じゃ無いのよ」

「でも、その自信が自分の成長の枷になる場合もある」

「それは……そうなる場合もあるかもね。けれど、何かに挑むときに……その自信が背中を押してくれることもある筈よ」

リーシアの考えは間違っていない。
確かなバックボーンは挑戦する者の背を押してくれる。

だが、ティールの考えは違った。

「……その考えは間違っていないと思う。けど……俺は、その自信が自分を殺す可能性があるとも思っている」

「ん~~~~……それは否定出来ないけど、ちょっとネガティブ過ぎない」

「かもな。でも、勝負には自分の手札を正確に理解した状態で挑むべきだ」

死んだら元も子もない。
死んだら……何も感じることが出来ない、そこで全てが終わってしまう。

ただ……ティールにも自分の命をベットする場面はあると思っている。

「けど、自分の命を賭けてでも助けたい存在が後ろにいる……そんな時は、そういう考えを捨てで勝負に挑むべきなのかも、な」

「おぉ~~~~、随分熱いところもあるじゃない」

「冒険者は冒険をするな。それは冒険者にとって生き延びるには従わなければならない鉄則だけど、どこかで冒険しなければならない場面に直面する……そしてそれを乗り越える。だから俺達は冒険する者なんだろ」

「……ティールって実は三十歳ぐらいだったりする?」

「おい、なんでそうなるんだよ」

「だって……そんな感想、ベテランの冒険者でなければ出ないわよ」

たまたま訓練場にいたベテランの冒険者達はティールの言葉にうんうんと頷いている。

(そんな加齢臭することを言ってたか?)

まったくそんな事は無い。
いつも通りルーキーらしからぬだけ。ある意味、通常運転だ。

「まぁそんな事より、ちょっとは休めた?」

「あぁ、問題無いな」

極限まで体をイジメていた訳では無いので、リーシアと話している間に殆ど回復した。

「それじゃ、ちょっと私と模擬戦してよ」
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