53 / 723
自信の作用
しおりを挟む
「あら、ティールじゃない。今日は訓練しにきたの?」
「……そういうリーシアは訓練か?」
声だけで誰が自分に話しかけてきたのか解った。
木剣を持ったリーシアが後ろに立っていた。
(……いや、訓練をしに来たのは分る。でも、なんで木剣?)
遠距離攻撃が専門の人でも、多少の接近戦が出来た方が良い。
それはティールの中で常識だ。
でも、わざわざ長剣を使う必要は無い。
「最近討伐依頼を受けてばかりって聞くけど、ちゃんと休んでるの?」
「昨日はちゃんと休んでた。というか、村にいたときは連日森の中でモンスターを狩ってたからなぁ……別にそこまで大して疲れてない」
村から都会にやって来て周囲の環境は変わった。
だが、生活サイクルは大して変わっていない。
なので特別疲れたという感覚も無い。
「……それって普通におかしいと思うのだけどね」
「そうか? 自分から望んで狩ってたからあんまり分らん」
ティールとしてはそれが当たり前だった。
他の子供達でもギフトを得た者達は訓練を積み重ねている時間が多かったと、うっすら覚えている。
「やっぱりサクッとグレーグリズリーを倒すだけはあるわね」
「あれはリーシアとエリックが先にボコボコにしてたからだろ。俺はたまたま止めを刺しただけだ」
「あの時はそういう状況だったかもしれないけど、本当は一人でも倒せるんじゃないの?」
ティールが本気で戦っているところは、まだ見たことが無い。
でも、絶対に自分より強いと直感で解った。
(エリックより強いかは二人共接近戦タイプだから分からないけど……でも、耐格差で言えばエリックの方が有利よね)
確かに二人の間には三年という差がある。
十二歳と十五歳の三歳差というのは非常に大きい。
ティールはまだまだ成長期であり、まだまだこれから背が伸びて肉も付く。
ただ、現時点ではエリックには及ばない。
「さぁ、どうだろうな」
リーシアの問いにすっとぼけた表情で答えるが、慌てながらとはいえ今よりも幼い頃に一撃で仕留めている。
完全に実力で倒したという訳では無く、運も重なっての結果。
それでもティールが十歳以下の年齢でグレーグリズリーというDランクのモンスターを倒したという結果は変わらない。
「謙虚ね。冒険者なんだからもう少し自信を持っても良いんじゃない? 別に威張り散らせって言ってる訳じゃ無いのよ」
「でも、その自信が自分の成長の枷になる場合もある」
「それは……そうなる場合もあるかもね。けれど、何かに挑むときに……その自信が背中を押してくれることもある筈よ」
リーシアの考えは間違っていない。
確かなバックボーンは挑戦する者の背を押してくれる。
だが、ティールの考えは違った。
「……その考えは間違っていないと思う。けど……俺は、その自信が自分を殺す可能性があるとも思っている」
「ん~~~~……それは否定出来ないけど、ちょっとネガティブ過ぎない」
「かもな。でも、勝負には自分の手札を正確に理解した状態で挑むべきだ」
死んだら元も子もない。
死んだら……何も感じることが出来ない、そこで全てが終わってしまう。
ただ……ティールにも自分の命をベットする場面はあると思っている。
「けど、自分の命を賭けてでも助けたい存在が後ろにいる……そんな時は、そういう考えを捨てで勝負に挑むべきなのかも、な」
「おぉ~~~~、随分熱いところもあるじゃない」
「冒険者は冒険をするな。それは冒険者にとって生き延びるには従わなければならない鉄則だけど、どこかで冒険しなければならない場面に直面する……そしてそれを乗り越える。だから俺達は冒険する者なんだろ」
「……ティールって実は三十歳ぐらいだったりする?」
「おい、なんでそうなるんだよ」
「だって……そんな感想、ベテランの冒険者でなければ出ないわよ」
たまたま訓練場にいたベテランの冒険者達はティールの言葉にうんうんと頷いている。
(そんな加齢臭することを言ってたか?)
まったくそんな事は無い。
いつも通りルーキーらしからぬだけ。ある意味、通常運転だ。
「まぁそんな事より、ちょっとは休めた?」
「あぁ、問題無いな」
極限まで体をイジメていた訳では無いので、リーシアと話している間に殆ど回復した。
「それじゃ、ちょっと私と模擬戦してよ」
「……そういうリーシアは訓練か?」
声だけで誰が自分に話しかけてきたのか解った。
木剣を持ったリーシアが後ろに立っていた。
(……いや、訓練をしに来たのは分る。でも、なんで木剣?)
遠距離攻撃が専門の人でも、多少の接近戦が出来た方が良い。
それはティールの中で常識だ。
でも、わざわざ長剣を使う必要は無い。
「最近討伐依頼を受けてばかりって聞くけど、ちゃんと休んでるの?」
「昨日はちゃんと休んでた。というか、村にいたときは連日森の中でモンスターを狩ってたからなぁ……別にそこまで大して疲れてない」
村から都会にやって来て周囲の環境は変わった。
だが、生活サイクルは大して変わっていない。
なので特別疲れたという感覚も無い。
「……それって普通におかしいと思うのだけどね」
「そうか? 自分から望んで狩ってたからあんまり分らん」
ティールとしてはそれが当たり前だった。
他の子供達でもギフトを得た者達は訓練を積み重ねている時間が多かったと、うっすら覚えている。
「やっぱりサクッとグレーグリズリーを倒すだけはあるわね」
「あれはリーシアとエリックが先にボコボコにしてたからだろ。俺はたまたま止めを刺しただけだ」
「あの時はそういう状況だったかもしれないけど、本当は一人でも倒せるんじゃないの?」
ティールが本気で戦っているところは、まだ見たことが無い。
でも、絶対に自分より強いと直感で解った。
(エリックより強いかは二人共接近戦タイプだから分からないけど……でも、耐格差で言えばエリックの方が有利よね)
確かに二人の間には三年という差がある。
十二歳と十五歳の三歳差というのは非常に大きい。
ティールはまだまだ成長期であり、まだまだこれから背が伸びて肉も付く。
ただ、現時点ではエリックには及ばない。
「さぁ、どうだろうな」
リーシアの問いにすっとぼけた表情で答えるが、慌てながらとはいえ今よりも幼い頃に一撃で仕留めている。
完全に実力で倒したという訳では無く、運も重なっての結果。
それでもティールが十歳以下の年齢でグレーグリズリーというDランクのモンスターを倒したという結果は変わらない。
「謙虚ね。冒険者なんだからもう少し自信を持っても良いんじゃない? 別に威張り散らせって言ってる訳じゃ無いのよ」
「でも、その自信が自分の成長の枷になる場合もある」
「それは……そうなる場合もあるかもね。けれど、何かに挑むときに……その自信が背中を押してくれることもある筈よ」
リーシアの考えは間違っていない。
確かなバックボーンは挑戦する者の背を押してくれる。
だが、ティールの考えは違った。
「……その考えは間違っていないと思う。けど……俺は、その自信が自分を殺す可能性があるとも思っている」
「ん~~~~……それは否定出来ないけど、ちょっとネガティブ過ぎない」
「かもな。でも、勝負には自分の手札を正確に理解した状態で挑むべきだ」
死んだら元も子もない。
死んだら……何も感じることが出来ない、そこで全てが終わってしまう。
ただ……ティールにも自分の命をベットする場面はあると思っている。
「けど、自分の命を賭けてでも助けたい存在が後ろにいる……そんな時は、そういう考えを捨てで勝負に挑むべきなのかも、な」
「おぉ~~~~、随分熱いところもあるじゃない」
「冒険者は冒険をするな。それは冒険者にとって生き延びるには従わなければならない鉄則だけど、どこかで冒険しなければならない場面に直面する……そしてそれを乗り越える。だから俺達は冒険する者なんだろ」
「……ティールって実は三十歳ぐらいだったりする?」
「おい、なんでそうなるんだよ」
「だって……そんな感想、ベテランの冒険者でなければ出ないわよ」
たまたま訓練場にいたベテランの冒険者達はティールの言葉にうんうんと頷いている。
(そんな加齢臭することを言ってたか?)
まったくそんな事は無い。
いつも通りルーキーらしからぬだけ。ある意味、通常運転だ。
「まぁそんな事より、ちょっとは休めた?」
「あぁ、問題無いな」
極限まで体をイジメていた訳では無いので、リーシアと話している間に殆ど回復した。
「それじゃ、ちょっと私と模擬戦してよ」
74
お気に入りに追加
1,803
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。
うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。
まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。
真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる!
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ
最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
羽海汐遠
ファンタジー
最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。
彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。
残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。
最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。
そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。
彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。
人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。
彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。
『カクヨム』
2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。
2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。
『小説家になろう』
2024.9『累計PV1800万回』達成作品。
※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。
小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/
カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796
ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709
ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる