上 下
45 / 693

宜しくないトラブル

しおりを挟む
(相変わらず遅い……いや、今回は別にそういう訳では無いか。元々、俺が入る隙間なんて無かったわけだ)

気になった女の子と年頃の男の子が想像するような展開は起こらない。
そんな現実を突きつけられた。

「……あれか、もしかして結構ガチで惚れてたのか?」

「いや、別にそういう感じじゃ無いですよ。この前会ったばかりですし」

「でも一目惚れってことかもしれないだろ。事実、そういった衝動的な恋をしてしまう奴はいるからな」

ゾルは冒険者時代も含めて多くの人と関わって来たが、やはり一目惚れという理由で人を好きになった者は何人かいた。
それが成功するかどうかは置いといて。

「どう、でしょうね? 確かに気にはなっていたと思います。ただ……恋人になりたいかと言えば、そうでも無い様な気もします」

「そうでも無いってことは……男の性的な感覚で気になってるのか」

オブラートに考えを包んだ言葉だが、ティールはゾルが何を言いたいのか良く解った。

「あぁ……まぁ、そういう感覚が多少はあります」

「そうかそうか。そんなに恥ずかしがることは無いぞ。寧ろ男としてそういう感覚があるのは当たり前だ」

ティールがリーシアにそういう意味での感情を抱いている事にゾルは肯定的であり、否定しない。
寧ろそういう感覚を持ってしまうのが当然だと心の底から思っている。

(男なんて基本的にそんなもんだ。リーシアに気がある男の冒険者なんて口ではなんとでも言えるが、そういう感情を持っている奴が大半だ。というか、男なら反応してしまうのが当然だろうな)

もうそろそろおっさんと呼ばれても仕方ない年齢に突入するゾル。
リーシアとは親子ほど離れた年齢なのでなんとも思わないが、ある程度性欲が残っている男ならば反応してしまうのは仕方がない。

「その気持ちは解らんでも無いが……とりあえずリーシアとやるってのは無理だと思うぞ」

「それは分かってますよ。別に俺はあの二人と仲良くしたいなとは思ってるんで」

「そうかそうか。それは安心だ」

冒険者が同業者を性的な意味で襲ってしまう。
それは決して無い話ではない。

確かに冒険者という過酷な職業で生活している女性達は男勝りな部分がある。
前衛ならば華奢という言葉は全く似合わず、寧ろ剛力という言葉が似合う者までいる。
なので男の冒険者達は恋人や妻という存在を同業者以外の存在に求めることが多い。

ただ、そんな冒険者の中でも美女、美少女という言葉が似合う者はいるのも事実。
圧倒的強者ならば接するのが恐れ多く感じてしまうが、そこまで強さが無ければ可愛く思えるもの。
特に後衛職の女性冒険者達には外見的なか弱さが少々残っている。

なので偶々一緒に冒険する機会があり、そこで性欲が抑えきれなくなった男の冒険者が女性冒険者に性的な意味で襲い掛かってしまう事件は少々ある。

その一件が明るみになれば男性側の冒険者が色々な意味で人生終了するのだが、残念ながらそうでない場合もある。

(俺の勝手な予想だが、ティールはCランク冒険者をタイマンで倒せる実力がある筈だ。既に知り合ってるみたいだから一緒に依頼を受けることもあるだろう。そんな時にティールが耐え切れなくなったら……うん、アウト過ぎるな)

元冒険者のゾルから視て、ティールには何かある。
鑑定系のスキルやギフトは持っていないので、何がそう思わせるのかは解らない。
でも、とりあえず並ではないという事だけは感じる。

(何て言うか……モロ強者の雰囲気が出てるって訳じゃ無いんだよな。でも、何か底知れない実力がある、もしくは眠っているって感じがする。俺の勘がボケていなかったら正しいだろう)

その勘はボケても錆びてもおらず、見事に的中していた。
奪取≪スナッチ≫、このギフトがティールの戦術の幅を広げ、一気に実力を上げる。

戦う者達からすれば異質な存在であることには間違いない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...