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俺が貰っても良いのか?

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ティールの出発日とレント達の出発日当日、村にはドウンとヘレナが馬車で訪れ、レント達五人を馬車に乗せて学園がある都市へと向かう。

五人はこれから長い間離れ離れになる家族や友達と別れを済ませ、馬車に乗って村から離れていく。

「まぁ……基本的に涙は出るものだよな」

「あら、別れの挨拶はしなかったの?」

離れた場所からレント達が馬車に乗って村から離れる様子を見ていたティールにリースが声を掛ける。

「別にそこまで親しい友達って訳じゃ無いんで。それに会えばマックス辺りが面倒な感じで絡んできそうだったんで」

「そうねぇ……今のところ、ティールに友達と呼べるほど親しい人はいないものね」

「ほっといてください。冒険者をやってれば直ぐに出来ますよ……多分」

「ふふふ、それはどうかしらね。あなたは本当に新人離れした実力を持っているわ。同じ新人はあなたのその実力を羨ましく思い、妬むでしょう。何度も言ってるけど、あまり人前で実力を出し過ぎない様に」

「解ってますよ。さて、俺も挨拶する人に声を掛けないとな」

生まれ育った村の中にもティールに関わりがある者は多少なりともおり、その者達に出発の挨拶をして回る。
ティールの弟子達と呼べる子供達は元からその話を聞いていたので驚きはしなかったが、それでも寂しいという思いはあるので涙を流す子供も中にはいた。

「そうか、ティールも今日出発するのか」

「はい、丁度良いタイミングだと思うので」

「ん~~~~……まぁ、確かにお前はその歳では考えられない程に強いからな。大概の事は何とかなると思う。思うんだが……俺としてはちょっとだけ心配だな」

「そうですか? 割と大抵の問題は解決出来ると思ってるんですけど」

「戦闘面ならな。リースさんからも言われてると思うが、お前のその実力は嫉妬の対象ものだ」

ティールは既にジンには自分のギフトの内容を話している。
なのでジンはティールがこれからどれだけ強くなるのか……全く底が見えなかった。

(俺と戦ってる時には基本的に自分で身に着けたスキルしか使用せず戦ってたし……戦い方のパターンは冒険者一、多くなるだろうな)

一人の冒険者が持つ戦力では無い。そう思える程にティールは強く、これからも強くなれる。
だが、それでも今のティールにはジン的に足りないものがあった。

「ただ、お前はまだ十二歳で当たり前だが、顔が幼いんだよ。強面じゃ無いしな」

「それはまぁ……そうですね。でもそこまで嘗められるような顔でも無いと思うんですけど」

確かにティールの顔は強面では無い。だが、初対面で嘗められるようななよなよとした面でも無い。
だが……決してイケメンという訳でも無く、寧ろ地味だ。

「……それもそうだな。まっ、お前なら二十歳前にはAランクにはなってるだろ。面白い冒険を体験したらその時は村に帰ってきて話してくれよ」

「分かりました。とは言っても、近況は全て親に手紙を書いて話そうと思ってるんで、偶に気になったら自分の両親に訊いてください」

「おう、分かった。んじゃ……こいつをやるよ」

ジンは腰に携帯しているアイテムバッグの中から一つの剣を取り出し、ティールに渡した。
それを受け取ったティールは一目でそれが普通の剣では無い事が解かった。

「ジンさん、この剣はもしかして……」

「おっ、解るのか? そうだ、こいつは魔剣だ。名前は疾風瞬閃、ランクは五と中々良い武器だぜ」

「いや、それはなんとなく分かるんですけど……なんでこれを俺に?」

確かにティールは偶にジンと模擬戦を行ったりしていた。
だが、師匠と弟子という関係なのかと訊かれると、そうでは無いと答える様な関係。

なので旅立ちの日に何かを貰えると微塵もティールは思っていなかった。

(……えっ、マジで有能な剣じゃん。こういうのって普通はレントに渡す物じゃないのか? ……まぁでも、くれるなら有難く貰っておこう)

鑑定で視た結果、身体能力の強化や風魔法補助等が付与されており、今のティールにとって十分に切り札と呼べる魔剣だった。

「ありがとうございます。有難く使わせて貰います」

「おう、あんまり使わずに空間収納に仕舞っておくのはやめてくれよ」

「はい。是非使わせて貰います」

ティールは既に兄のセントの師匠であるダークスという鍛冶師から長剣を貰っており、通常の戦闘であればそれで事が足りる。

しかしその長剣にティールの魔力を纏わせて切れ味を上げても斬れない敵は存在する。
そんな存在と遭遇した時、疾風瞬閃はティールの勝率をグンッと上げる。

(さて、最後は父さんと母さんに挨拶をして終わりだな)
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