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面と向かっての会話
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「貴族、かぁ……思ったより面倒な存在なんだな」
まだまだ外の世界を知らないティールは大人が……貴族や商人の世界がどれだけ黒いのかを知らなかった。
知識としてはリースから学んでいるが、それでも実際にそう感じるのとは重みが全く違う。
同年代のマックスはただただめんどくさい相手としか思っていないので、そこまで邪険に思わない。
(面倒な事に変わりは無いけど)
あの一件以来、面と向かって喋る事は無くなった。
しかし大して広く無い村ですれ違う事はあり、その時に馬鹿にするような顔を向けられる事はある。
だが、そんなことに構っているほどティールは暇では無いのでいつも無視している。
リットに関しては完全に無関係な存在となっている。
相変わらず上からも下からもモテモテなリット。
ティールが偶にリットを見かけると野郎に絡まれている事もあるが、女子に囲まれている時もある。
(やっぱり男は顔か……いや、中身や実力を見る人も絶対にいる筈だ)
冒険者になり、多くの街を訪れれば良い出会いが絶対にある。
そう信じていると……顔見知りの一団がティールに近づいてきた。
(今から逸れても……無駄か)
ティールがこの状況をどうしようかと考えている間に一団の一人がティールの存在に気付き、ニヤニヤしながら寄ってくる。
「よぉ、ティールじゃねぇか。相変わらず一人で投擲の練習か?」
「……まぁ、そんなところだ。それで、何か用かマックス?」
やっぱり邪険どころか鬱陶し過ぎる存在かと思い始めるティール。
その一団にはマックスの腰巾着や意外にもリットやその友人達もいた。
(一緒に訓練をしてるとすれば……仲良くなっていても不思議では無いか)
意外な組み合わせに少々驚くティール。そしてよくよくマックスを視ると、相変わらず自信満々な表情をしているのも納得出来た。
「前より強くなったみたいだな」
「当たり前だろ。俺達は毎日厳しい訓練を積んでるんだからな。お前は相変わらずしょぼい見た目だな!!」
「ほっとけ迷惑馬鹿。勝手に村の外に出て大人達に大迷惑を掛けた奴が威張るなよ」
「うッ、うっせぇ!!!! そんな昔のことをいちいち持ち出すんじゃねぇよ!!!」
昔、逃げるティールを追いかけて村の中にいないと判断したマックスをその腰巾着たちは勝手に村の外に出て、帰り道が解らなくなってしまって自警団の大半の者達が捜索に出る事件となった。
その一件があり、マックス達は多少大人しくなった。
しかし斧術のギフトを得た事に変わりは無いので、普段の調子に戻るのもそう遠くは無かった。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよマックス。ティールも、あんまり昔の恥を持ち出すのは良くないと思うよ。それにしても……こうやって面と向かって話すのはかなり久しぶりだね」
「……そうだな、リット。七年ぶりぐらいじゃないか?」
ティールの目の前に立つのは金髪でザ・優男なイケメンフェイスを持つリット。
初恋に敗れた原因とも言える相手。
それを知った日からティールはなるべくリットと関わらない様にしていた。
ただ、リットからティールに話しかけようと思った機会は何度かあったが、リットの周囲にはいつも誰かがいる。
なのでリットがティールに話しかける機会はことごとく潰されていた。
「投擲の訓練は順調かい?」
「あぁ、順調だな。リットは……剣術の訓練の方はどうだ?」
「ジンさんが時々教えてくれるんだけど、やっぱり自分はまだまだって感じさせられるよ」
特に自慢する事は無い謙虚さ。やはり人が出来ているなと思うティールだが、リットの言葉に対してそれはそうだろうとツッコみたかった。
(リットがどれだけの身体強化系のスキルを持っているのかは知らないが、数の多さなら断然俺が上だろう。そんな俺でも到底敵わないレベルに達しているのだから、リットが良い一撃を入れるのすら難しいだろう)
才能が周りと比べて頭一つ抜けているリットであっても、才能もあり経験もあるジンに勝つのはどう考えても無理な結果だ。
「そうか。ジンさんは元冒険者なんだろう。あんまり無茶をして怪我をしないようにな」
「お前は怪我をする心配が全く無いし、気楽でいいよな!!」
「……はぁーーーーー、本当にお前はいつも俺に対して喧嘩腰だな」
リットが間に入ってもマックスの態度は全く軟化しない。
殺したり怪我を負わせたくなる程にマックスの事が憎い訳では無いティールだが、それでも鬱陶しいと感たので少し昔を思い出させてやろうと考える。
「ほら、ちょっとは成長したんだから……今度は俺を捕まえられるんじゃないか?」
そう言いながら手を動かして挑発するティール。
どう見ても分かりやす過ぎる挑発に対し、リットやその友人達はそんなものに引っ掛からないだろうと思っていたが、マックスの腰巾着だけはあわあわと慌てだす。
「上等だぁ……ただ捕まるだけで終わると思うなよ」
「そういうのは俺を捕まえてから言え」
その言葉が合図となり、二人共同時に身体強化のスキルを発動する。
まだまだ外の世界を知らないティールは大人が……貴族や商人の世界がどれだけ黒いのかを知らなかった。
知識としてはリースから学んでいるが、それでも実際にそう感じるのとは重みが全く違う。
同年代のマックスはただただめんどくさい相手としか思っていないので、そこまで邪険に思わない。
(面倒な事に変わりは無いけど)
あの一件以来、面と向かって喋る事は無くなった。
しかし大して広く無い村ですれ違う事はあり、その時に馬鹿にするような顔を向けられる事はある。
だが、そんなことに構っているほどティールは暇では無いのでいつも無視している。
リットに関しては完全に無関係な存在となっている。
相変わらず上からも下からもモテモテなリット。
ティールが偶にリットを見かけると野郎に絡まれている事もあるが、女子に囲まれている時もある。
(やっぱり男は顔か……いや、中身や実力を見る人も絶対にいる筈だ)
冒険者になり、多くの街を訪れれば良い出会いが絶対にある。
そう信じていると……顔見知りの一団がティールに近づいてきた。
(今から逸れても……無駄か)
ティールがこの状況をどうしようかと考えている間に一団の一人がティールの存在に気付き、ニヤニヤしながら寄ってくる。
「よぉ、ティールじゃねぇか。相変わらず一人で投擲の練習か?」
「……まぁ、そんなところだ。それで、何か用かマックス?」
やっぱり邪険どころか鬱陶し過ぎる存在かと思い始めるティール。
その一団にはマックスの腰巾着や意外にもリットやその友人達もいた。
(一緒に訓練をしてるとすれば……仲良くなっていても不思議では無いか)
意外な組み合わせに少々驚くティール。そしてよくよくマックスを視ると、相変わらず自信満々な表情をしているのも納得出来た。
「前より強くなったみたいだな」
「当たり前だろ。俺達は毎日厳しい訓練を積んでるんだからな。お前は相変わらずしょぼい見た目だな!!」
「ほっとけ迷惑馬鹿。勝手に村の外に出て大人達に大迷惑を掛けた奴が威張るなよ」
「うッ、うっせぇ!!!! そんな昔のことをいちいち持ち出すんじゃねぇよ!!!」
昔、逃げるティールを追いかけて村の中にいないと判断したマックスをその腰巾着たちは勝手に村の外に出て、帰り道が解らなくなってしまって自警団の大半の者達が捜索に出る事件となった。
その一件があり、マックス達は多少大人しくなった。
しかし斧術のギフトを得た事に変わりは無いので、普段の調子に戻るのもそう遠くは無かった。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよマックス。ティールも、あんまり昔の恥を持ち出すのは良くないと思うよ。それにしても……こうやって面と向かって話すのはかなり久しぶりだね」
「……そうだな、リット。七年ぶりぐらいじゃないか?」
ティールの目の前に立つのは金髪でザ・優男なイケメンフェイスを持つリット。
初恋に敗れた原因とも言える相手。
それを知った日からティールはなるべくリットと関わらない様にしていた。
ただ、リットからティールに話しかけようと思った機会は何度かあったが、リットの周囲にはいつも誰かがいる。
なのでリットがティールに話しかける機会はことごとく潰されていた。
「投擲の訓練は順調かい?」
「あぁ、順調だな。リットは……剣術の訓練の方はどうだ?」
「ジンさんが時々教えてくれるんだけど、やっぱり自分はまだまだって感じさせられるよ」
特に自慢する事は無い謙虚さ。やはり人が出来ているなと思うティールだが、リットの言葉に対してそれはそうだろうとツッコみたかった。
(リットがどれだけの身体強化系のスキルを持っているのかは知らないが、数の多さなら断然俺が上だろう。そんな俺でも到底敵わないレベルに達しているのだから、リットが良い一撃を入れるのすら難しいだろう)
才能が周りと比べて頭一つ抜けているリットであっても、才能もあり経験もあるジンに勝つのはどう考えても無理な結果だ。
「そうか。ジンさんは元冒険者なんだろう。あんまり無茶をして怪我をしないようにな」
「お前は怪我をする心配が全く無いし、気楽でいいよな!!」
「……はぁーーーーー、本当にお前はいつも俺に対して喧嘩腰だな」
リットが間に入ってもマックスの態度は全く軟化しない。
殺したり怪我を負わせたくなる程にマックスの事が憎い訳では無いティールだが、それでも鬱陶しいと感たので少し昔を思い出させてやろうと考える。
「ほら、ちょっとは成長したんだから……今度は俺を捕まえられるんじゃないか?」
そう言いながら手を動かして挑発するティール。
どう見ても分かりやす過ぎる挑発に対し、リットやその友人達はそんなものに引っ掛からないだろうと思っていたが、マックスの腰巾着だけはあわあわと慌てだす。
「上等だぁ……ただ捕まるだけで終わると思うなよ」
「そういうのは俺を捕まえてから言え」
その言葉が合図となり、二人共同時に身体強化のスキルを発動する。
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