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使い勝手が良い
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「……ここら辺のモンスターだとこいつだけで十分になってきたな」
スライムを倒してから一時間後、何体かモンスターを倒したティール。
しかしそのどれもが一瞬で終わる。戦闘時間よりも解体時間の方が長い。
「魔力の刃……マジックブレード。本当に使い勝手が良いな」
体の一部から魔力を生み出し、刃として放つ。
大した耐久力を持っていないモンスターならばこの攻撃だけで体を切断出来る。
「またグレーグリズリーの様な存在に遭遇したいかと言えば微妙だけど、ここまで歯応えが無いのもなぁ……」
今日は全く戦ってる最中にドキドキすることが無い。
別に死にたがりという訳では無いが、多少は心が弾む戦いをしなければ自分が成長していると実感出来ない。
ティールはあの日以来遭遇していないグレーグリズリーを格上扱いしているが、手札の多さと技術の高さで言えば既に大きく上回っている。
「ガルルルゥゥ……」
「今度はブラウンウルフか」
ランクはEとティール基準ではそこまで強くないウルフ系のモンスター。
しかしブラウンウルフから見てティールは手頃で美味しそうな獲物にしか映っていない。
今自分は一人、それなら目の前の餌を一人で食べることが出来る。
そう思ったブラウンウルフは不用意に飛び掛かる。
「空中に跳ぶのはあんまりお勧めしないぞ」
いつも通りに魔力の刃を放つ。そのままいけば綺麗に真っ二つに出来るだろう。
だが、魔力の刃が直撃する前にブラウンウルフは体を回転させて見事に躱した。
「やるじゃん」
魔力の刃を回避するために開店したことでそのままティールに噛みつくことは出来なくなったが、それでも大ダメージを受けずに終わった事で一安心。
そんな心境のブラウンウルフだったが、ティールは既に次の攻撃に移っていた。
「よっと」
左手で持っていた石ころを使っての投擲。
ティールにとって投擲と言う武器は未だに信用出来る技だ。
第二の砲撃に対してブラウンウルフが取れる対処法は……無かった。
そもそも魔力の刃を躱すだけで精一杯であり、地面に脚が付くまで次の攻撃が来るとは思っていなかった。
「戦いの経験が少ないモンスターは相変わらずこういう展開に弱いな。まっ、俺としては無駄な労力を消費せずに済むから嬉しいんだけどさ」
放たれた石ころは的確にブラウンウルフの額を貫き、力なく地面にぶつかる。
そして死んだことを確認したティールは慣れた手付きでブラウンウルフの牙と爪、そして魔石を回収する。
少し迷った末に大丈夫だろうと思い、毛皮も剥ぎ取ってしまう。
「肉は食えないことは無いけど、そこまで美味くないからいらないか」
ウルフ系のモンスターの肉は少々固く、あまり好んで食べる者はいない。
ただ、しっかりと匂いを取れば、上位のウルフ系モンスターの肉はかなり美味と言われている。
そしてティールの場合……その臭みを取る、正確に言えば奪うことが出来る。
(そんなことが出来るなんてリースさんに言われなきゃ早い段階で気付かなかっただろうな)
奪った匂いはティールの体に染み込むわけでは無く、気体として掌に浮かぶ。
それは即座に捨てることが出来、そういった方法が戦いでも使えるのではとティールは思い浮かんだ。
(でも、匂いを閉じ込めておくことが出来る訳では無い、嗅覚が優れたモンスターを相手に有効手段手訳でも無いか)
その考えを直ぐに捨て、ティールは直ぐに他のモンスターを探しに向かう。
ただ、ティールの脚では行ける範囲に限界がある。
それに両親と約束した夕食までには帰るという条件、それを破るわけにはいかない。
身体強化と脚力強化のスキルを使えば移動速度を大幅に上げることが出来る。
しかし魔力量を考えると大胆に消費するのはあまりよろしくない。
その結果、本日は大したドキドキを感じることなくティールの狩りは終わった。
だが血抜きを済ませたホーンラビットの肉を手に入れたのでティールとしては悪くない結果と言える。
ティールがホーンラビットの肉が食卓に並んだことで夕食は少し豪華なものとなった。
「うん、ティールが狩りに行ってくれることで夕食が豊になるな」
「そうね。それは嬉しいのだけど、私としてはやっぱり心配ね」
「なぁ、ティール。どうやってモンスターを倒すんだい?」
父は夕食の品が増える事を喜び、母はやはりまだティールが一人で村の外に出る事を心配する。
兄はどうやってモンスターを倒すのかに興味津々。
ティールは母に問題無いよと伝え、兄に今日はどうやってモンスターを倒すのかを話す。
(こういう特に何事も無い日々は嫌いじゃない。でも……冒険者になったらそうで無い日々が続くのかもな)
近い未来、自分が冒険者になって退屈しない時間を送っているであろう姿をイメージする。
だが、まだ冒険者になる前に……ティールは予想していなかった場面に遭遇する事になる。
スライムを倒してから一時間後、何体かモンスターを倒したティール。
しかしそのどれもが一瞬で終わる。戦闘時間よりも解体時間の方が長い。
「魔力の刃……マジックブレード。本当に使い勝手が良いな」
体の一部から魔力を生み出し、刃として放つ。
大した耐久力を持っていないモンスターならばこの攻撃だけで体を切断出来る。
「またグレーグリズリーの様な存在に遭遇したいかと言えば微妙だけど、ここまで歯応えが無いのもなぁ……」
今日は全く戦ってる最中にドキドキすることが無い。
別に死にたがりという訳では無いが、多少は心が弾む戦いをしなければ自分が成長していると実感出来ない。
ティールはあの日以来遭遇していないグレーグリズリーを格上扱いしているが、手札の多さと技術の高さで言えば既に大きく上回っている。
「ガルルルゥゥ……」
「今度はブラウンウルフか」
ランクはEとティール基準ではそこまで強くないウルフ系のモンスター。
しかしブラウンウルフから見てティールは手頃で美味しそうな獲物にしか映っていない。
今自分は一人、それなら目の前の餌を一人で食べることが出来る。
そう思ったブラウンウルフは不用意に飛び掛かる。
「空中に跳ぶのはあんまりお勧めしないぞ」
いつも通りに魔力の刃を放つ。そのままいけば綺麗に真っ二つに出来るだろう。
だが、魔力の刃が直撃する前にブラウンウルフは体を回転させて見事に躱した。
「やるじゃん」
魔力の刃を回避するために開店したことでそのままティールに噛みつくことは出来なくなったが、それでも大ダメージを受けずに終わった事で一安心。
そんな心境のブラウンウルフだったが、ティールは既に次の攻撃に移っていた。
「よっと」
左手で持っていた石ころを使っての投擲。
ティールにとって投擲と言う武器は未だに信用出来る技だ。
第二の砲撃に対してブラウンウルフが取れる対処法は……無かった。
そもそも魔力の刃を躱すだけで精一杯であり、地面に脚が付くまで次の攻撃が来るとは思っていなかった。
「戦いの経験が少ないモンスターは相変わらずこういう展開に弱いな。まっ、俺としては無駄な労力を消費せずに済むから嬉しいんだけどさ」
放たれた石ころは的確にブラウンウルフの額を貫き、力なく地面にぶつかる。
そして死んだことを確認したティールは慣れた手付きでブラウンウルフの牙と爪、そして魔石を回収する。
少し迷った末に大丈夫だろうと思い、毛皮も剥ぎ取ってしまう。
「肉は食えないことは無いけど、そこまで美味くないからいらないか」
ウルフ系のモンスターの肉は少々固く、あまり好んで食べる者はいない。
ただ、しっかりと匂いを取れば、上位のウルフ系モンスターの肉はかなり美味と言われている。
そしてティールの場合……その臭みを取る、正確に言えば奪うことが出来る。
(そんなことが出来るなんてリースさんに言われなきゃ早い段階で気付かなかっただろうな)
奪った匂いはティールの体に染み込むわけでは無く、気体として掌に浮かぶ。
それは即座に捨てることが出来、そういった方法が戦いでも使えるのではとティールは思い浮かんだ。
(でも、匂いを閉じ込めておくことが出来る訳では無い、嗅覚が優れたモンスターを相手に有効手段手訳でも無いか)
その考えを直ぐに捨て、ティールは直ぐに他のモンスターを探しに向かう。
ただ、ティールの脚では行ける範囲に限界がある。
それに両親と約束した夕食までには帰るという条件、それを破るわけにはいかない。
身体強化と脚力強化のスキルを使えば移動速度を大幅に上げることが出来る。
しかし魔力量を考えると大胆に消費するのはあまりよろしくない。
その結果、本日は大したドキドキを感じることなくティールの狩りは終わった。
だが血抜きを済ませたホーンラビットの肉を手に入れたのでティールとしては悪くない結果と言える。
ティールがホーンラビットの肉が食卓に並んだことで夕食は少し豪華なものとなった。
「うん、ティールが狩りに行ってくれることで夕食が豊になるな」
「そうね。それは嬉しいのだけど、私としてはやっぱり心配ね」
「なぁ、ティール。どうやってモンスターを倒すんだい?」
父は夕食の品が増える事を喜び、母はやはりまだティールが一人で村の外に出る事を心配する。
兄はどうやってモンスターを倒すのかに興味津々。
ティールは母に問題無いよと伝え、兄に今日はどうやってモンスターを倒すのかを話す。
(こういう特に何事も無い日々は嫌いじゃない。でも……冒険者になったらそうで無い日々が続くのかもな)
近い未来、自分が冒険者になって退屈しない時間を送っているであろう姿をイメージする。
だが、まだ冒険者になる前に……ティールは予想していなかった場面に遭遇する事になる。
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