あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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時間は短かったが

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「……ちょっと、運が悪かったな」

いつもの様に森の中へと入り、モンスターを狩っていたティールだったが、この日は自分の不注意を呪った。

「グルルルゥゥ……」

「確か、グレーグリズリーだったか?」

ランクDのモンスター、グレーグリズリー。
熊系のモンスターであり、その剛腕は鉄をも容易に斬り裂く。すなわちティールがその一撃を喰らえば一瞬であの世行となる。

「もう少し木の傷を見ておけば良かったな」

熊系のモンスターは自分のテリトリーに存在する木に傷を付ける。
ティールが今日歩いてきた道の木には傷があった。

「あぁ……完全に俺を餌として認識したみたいだな」

「……ガアアアアァァアアアアアッ!!!!!!!!」

「声デカすぎるっての」

Dランクのモンスターと戦うにはまだまだティールには早い。
しかし、それは単純な身体能力だけを考えればの話だ。

ティールは身体強化と脚力強化を同時に使い、全力で後方へ下がる。
そしてリースからもしもの時にと教わった方法を試す。

「ウッドバインド、拘束」

木魔法の拘束系魔法であるウッドバインドと拘束という言葉通りのスキルを使い、グレーグリズリーの足を木と土の鎖で縛り付ける。

「グラッ!!!???」

「やっぱり襲う瞬間って視野が狭くなるんだな」

脚の動きを止められたグレーグリズリーは勢い良く地面に倒れ込んだ。
だがこれで安心してはならない。

二重に拘束したとしても、グレーグリズリーの力を考えればティールの鎖を引き千切る事は難しく無い。

ただ……それでも少しの間動きが止まってしまう。

「ウィンドランス」

グレーグリズリーが前のめりに倒れ、動けないのを確認したティールは即座に風の槍、ウィンドランスを詠唱破棄で放つ。

自身の動きを止めたのは何なのか、それをどうにかしようと足元に意識が行っていたグレーグリズリーはティールのウィンドランスに反応が送れ、モロに喰らってしまった。

ティールが狙った場所は当然顔面。

この一撃が最大の好機だと解っている。
次からは拘束系を警戒されると解っていたので全力で殺しに掛かった。

幸いにもグレーグリズリーはティールが自分より小さく、弱いと認識しており身体強化系のスキルを使用していなかった。

それ故に、グレーグリズリーがウィンドランスに耐えられることは無く、その顔は半分ほど抉れていた。

「……勝った、んだよな」

あまりにも短い戦闘時間。
しかし今まで戦ってきたモンスターの中で一番の恐怖を与えて来た。
なのであまりにもあっさりと戦いが終わったことに実感が無い。

「あぁーーーーーーーッ・・・・・・本気で焦った。まぁ、俺が不注意だったってのもあるんだけど、それでも本当に死ぬかもしれないって思ったな。それでも……俺が倒したんだよな」

改めてティールは自身が倒したグレーグリズリーの死体を見る。
足を止める為に使っていた拘束は既に消えており、頭部だけが半分ほど無くなっていた。

「どうしようか、流石にこいつを魔石だけ持って帰るのは超勿体無い。でも、流石にこの巨体を一人で解体していたら夕方になりそうだし……とりあえず血抜きだけ終わらせよう」

リースからモンスターの解体方法も学んでおり、解体のスキルも習得した。
なのである程度モンスターの解体は行えるが、それでもグレーグリズリーを全て解体すると考えればかなりの時間が掛かってしまう。

それに森の中にはまだまだモンスターがおり、血の匂いに惹かれて他のモンスターがやってくるかもしれない。
それを考えるとなるべく早くこの場から逃げ出したかった。

「おっと、まずは血抜きの前に奪っとかないとな」

奪取≪スナッチ≫を使い、グレーグリズリーが持っていた魔力とスキルを奪う。

「身体強化と腕力強化、突進に爪撃と加重、そして嗅覚上昇か。加重どういう感じのスキルだ?」

奪ったスキルの中にあった加重という初めて聞いたスキルが気になったティールは即座に調べた。
内容としては対象の者や人に重さを加えるという内容だった。

ただし、今のところ触れた物や部分にしか重さを重ねることが出来ない。

「面白そうなスキルだな。相手に触れずとは重さを加えられるようになったら……初対面の相手には絶対に有効なスキルだ」

有能なスキルを手に入れたティールは上機嫌のまま血抜きを行う。
その間に三体ほどモンスターが襲ってきたが、容易に倒せる相手だったので特に問題は起こらずに終わる。

そして血抜きが終わったグレーグリズリーの死体をリースから預かっている空間バッグという中の広さが見た目では考えられない程広いバックの中に入れて、ついでに襲ってきたモンスターの魔石だけを回収してリースの元へと向かった。
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