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一人で森の中へ
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「……ドキドキするな」
村の外に出て森の中に入ったことは初めてではない。
ただ、その時は大人と同伴で行動しており、一人で森の中に入ったことは無い。
そして過去に大人同伴で入った時も運良く……いや、運悪くモンスターと遭遇しなかった。
「帰る時に迷わないように、木に傷でも付けておこう」
現在ティールの武器である石ころで木に傷を付けながら散策を勧める。
そして歩き回ること約十分、最初のモンスターと遭遇した。
「あれは……スライム、で良いのか?」
ゼリー状の体を持つモンスター、スライム。
動きは遅く、戦闘に慣れていない者でも倒しやすいモンスター。
しかし体の一部から酸を吐き出す。
その酸の威力は洒落にならなく、地面を溶かして人の体も容易に溶かす。
そんな油断してれば大ダメージを喰らってしまうモンスターがティールの目先に二体。
「まだ……気付かれていない、よな?」
スライム達がその場から動かない事を確認したティールは持っていた石を右手で握り、力強く投げた。
投擲にスキルレベルが三になっており、腕力の強化とコントロールの補正が加えられている。
なので五歳児の投擲で容易にスライムまで石は届き、モンスターの第二の心臓とも言える魔石まで届いた。
そして魔石にぶつかった石はそのまま体から魔石を押し出した。
魔石が体内から無くなったことで生命活動が停止したスライムはそのまま動かなくなる。
そして仲間がいきなり動かなくなったことで慌てるもう一体のスライム。
まだ仲間がどのようにして殺されたのか気付いていないスライムに向かってティールはもう一投、石を投げた。
慌てているスライムは多少動いているが、コントロール補正が加えられた投擲はその的に向かって逸れて見事魔石を押し出した。
一体目と同じく動きが止まったスライム。完全に動かなくなったことを確認したティールはスライムの死体に近づく。
「……本当に、俺が倒したんだな」
未だにモンスターを倒した実感が薄いティールだが、初戦闘にして投擲でスライムを倒したという事実は変わらない。
「……奪取≪スナッチ≫」
神から授かったギフト、奪取≪スナッチ≫を使ってティールはスライムからスキルを奪う。
「得られたスキルは……酸、か」
一般的なスライムの唯一の攻撃方法と言える酸。
奪取≪スナッチ≫を使った事で体から魔力が無くなったのを体感するティールだが、それでもまだまだ余裕があった。
そしてもう一体のスライムからも同じく酸のスキルを奪う。それによりスキルレベルこそ一から上がっていないものの、スキルが成長したような感覚を覚えたティール。
「さて、さっそく使ってみよう」
初めて奪ったスキル、酸を使用すると掌から少し離れた場所から酸が現れ、空中に酸の塊が浮かぶ。
「……お、落ちないんだ。いや、俺がそう願っているからか?」
掌から落ちるように願うと、酸の塊は地面に落下して土を溶かしていく。
「酸って結構強力なんだな。よし、今度は投げてみよう」
自身の得意な投擲と同じように酸を投げつけると、勢いよく酸の塊は地面に飛んでいき、木に激突した。
すると激突した酸は木をどんどん溶かしていく。
流石に木を両断するほどまで溶かすことは出来なかったが、それでも三分の一ほどは溶かすことに成功。
「……凄いな。これはかなり有能なスキルだな。ただ、これでは倒したモンスターを消してしまう可能性が高い」
ティールが目指すべき道は冒険者。なのでなるべく倒す対象の素材を残したいというのが希望だ。
(しかしそれは基本的に難しいというものか。戦っていれば相手を殺す為に怪我を負わせるのは当たり前だ。なるべく最初に頭部を潰せれば問題無い)
投擲が得意なティールとしては一点を狙う攻撃は得意分野なので、これからはそこも少しづつ強化しようと決める。
「さて、この魔石が何に役立つか……普通に考えれば、五歳児がスライムを倒すのはおかしい……筈だよな?」
それはそれでおかしいのだが、そもそもな話五歳児が街から一人で出て行動するのがおかしい。
知性のギフトを得たティールはそれが分かっているので、手に持つ二つの魔石を売ってお金に変えようなどと後々面倒になるような事は考えなかった。
「……今回はしょうがない。ただ、知らない誰かに取られるのも癪だ。地面に埋めてしまう」
そこら辺の落ちていた木の枝を使って穴を掘り、そこにスライムの魔石を二つとも埋める。
「これで良し! さて……そうだ。ついでに試してみよう。というか、これが失敗すれば今日の冒険者終わりだな」
ティールはただのゼリーとなったスライムの死体に手を向け、奪取≪スナッチ≫を発動する。
するとスライムの死体からティールに向かって魔力が流れ込む。
「おぉうっ!? もしかしたらと予想していたが、成功したみたいだな。それにスライムが持つ魔力量が奪取≪スナッチ≫一回の消費量よりも多いというのは良い事を知った。ころで今日はもう少し冒険出来る」
残りの死体からも魔力を吸収し、魔力を全回復したティールは再びモンスターを探し出す。
村の外に出て森の中に入ったことは初めてではない。
ただ、その時は大人と同伴で行動しており、一人で森の中に入ったことは無い。
そして過去に大人同伴で入った時も運良く……いや、運悪くモンスターと遭遇しなかった。
「帰る時に迷わないように、木に傷でも付けておこう」
現在ティールの武器である石ころで木に傷を付けながら散策を勧める。
そして歩き回ること約十分、最初のモンスターと遭遇した。
「あれは……スライム、で良いのか?」
ゼリー状の体を持つモンスター、スライム。
動きは遅く、戦闘に慣れていない者でも倒しやすいモンスター。
しかし体の一部から酸を吐き出す。
その酸の威力は洒落にならなく、地面を溶かして人の体も容易に溶かす。
そんな油断してれば大ダメージを喰らってしまうモンスターがティールの目先に二体。
「まだ……気付かれていない、よな?」
スライム達がその場から動かない事を確認したティールは持っていた石を右手で握り、力強く投げた。
投擲にスキルレベルが三になっており、腕力の強化とコントロールの補正が加えられている。
なので五歳児の投擲で容易にスライムまで石は届き、モンスターの第二の心臓とも言える魔石まで届いた。
そして魔石にぶつかった石はそのまま体から魔石を押し出した。
魔石が体内から無くなったことで生命活動が停止したスライムはそのまま動かなくなる。
そして仲間がいきなり動かなくなったことで慌てるもう一体のスライム。
まだ仲間がどのようにして殺されたのか気付いていないスライムに向かってティールはもう一投、石を投げた。
慌てているスライムは多少動いているが、コントロール補正が加えられた投擲はその的に向かって逸れて見事魔石を押し出した。
一体目と同じく動きが止まったスライム。完全に動かなくなったことを確認したティールはスライムの死体に近づく。
「……本当に、俺が倒したんだな」
未だにモンスターを倒した実感が薄いティールだが、初戦闘にして投擲でスライムを倒したという事実は変わらない。
「……奪取≪スナッチ≫」
神から授かったギフト、奪取≪スナッチ≫を使ってティールはスライムからスキルを奪う。
「得られたスキルは……酸、か」
一般的なスライムの唯一の攻撃方法と言える酸。
奪取≪スナッチ≫を使った事で体から魔力が無くなったのを体感するティールだが、それでもまだまだ余裕があった。
そしてもう一体のスライムからも同じく酸のスキルを奪う。それによりスキルレベルこそ一から上がっていないものの、スキルが成長したような感覚を覚えたティール。
「さて、さっそく使ってみよう」
初めて奪ったスキル、酸を使用すると掌から少し離れた場所から酸が現れ、空中に酸の塊が浮かぶ。
「……お、落ちないんだ。いや、俺がそう願っているからか?」
掌から落ちるように願うと、酸の塊は地面に落下して土を溶かしていく。
「酸って結構強力なんだな。よし、今度は投げてみよう」
自身の得意な投擲と同じように酸を投げつけると、勢いよく酸の塊は地面に飛んでいき、木に激突した。
すると激突した酸は木をどんどん溶かしていく。
流石に木を両断するほどまで溶かすことは出来なかったが、それでも三分の一ほどは溶かすことに成功。
「……凄いな。これはかなり有能なスキルだな。ただ、これでは倒したモンスターを消してしまう可能性が高い」
ティールが目指すべき道は冒険者。なのでなるべく倒す対象の素材を残したいというのが希望だ。
(しかしそれは基本的に難しいというものか。戦っていれば相手を殺す為に怪我を負わせるのは当たり前だ。なるべく最初に頭部を潰せれば問題無い)
投擲が得意なティールとしては一点を狙う攻撃は得意分野なので、これからはそこも少しづつ強化しようと決める。
「さて、この魔石が何に役立つか……普通に考えれば、五歳児がスライムを倒すのはおかしい……筈だよな?」
それはそれでおかしいのだが、そもそもな話五歳児が街から一人で出て行動するのがおかしい。
知性のギフトを得たティールはそれが分かっているので、手に持つ二つの魔石を売ってお金に変えようなどと後々面倒になるような事は考えなかった。
「……今回はしょうがない。ただ、知らない誰かに取られるのも癪だ。地面に埋めてしまう」
そこら辺の落ちていた木の枝を使って穴を掘り、そこにスライムの魔石を二つとも埋める。
「これで良し! さて……そうだ。ついでに試してみよう。というか、これが失敗すれば今日の冒険者終わりだな」
ティールはただのゼリーとなったスライムの死体に手を向け、奪取≪スナッチ≫を発動する。
するとスライムの死体からティールに向かって魔力が流れ込む。
「おぉうっ!? もしかしたらと予想していたが、成功したみたいだな。それにスライムが持つ魔力量が奪取≪スナッチ≫一回の消費量よりも多いというのは良い事を知った。ころで今日はもう少し冒険出来る」
残りの死体からも魔力を吸収し、魔力を全回復したティールは再びモンスターを探し出す。
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