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番外編
番外編 アリアの結婚生活(アリア視点)
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「……マルク様。こっち見過ぎです……」
夕食時、マルク様はいつも幸せそうな笑みを浮かべ、わたしの顔ばかりを見てくる。
「あぁ、ごめん」
わたしの指摘にマルク様はハッとしたようにナイフとフォークを手に取り食事に戻る。でも、またしばらくすると――
「……マルク様? だから、こっち見過ぎです……」
「あぁ、ごめん。つい……」
この一連のやり取りを見ていたお義父様が笑い声を上げる。
「あっはっはっは!! 麗しい貴族令嬢を目の前にしても全く興味関心を持たなかったマルクがこんな事になるなんて誰が予想出来たか、なぁ、ザルバ?」
「全くでございますな。あのマルクおぼっちゃまが知らず食事の手を休め、無意識のままにアリアお嬢様の美貌に見惚れるなどという光景はさすがに夢にも思いませんでした。いや、それ程にアリアお嬢様はお美しいという事でしょう」
執事のザルバの言葉にマルク様が噛み付くように横やりを入れる。
「確かにアリアのその美貌に惚れたのは確かだが、僕がアリアをここまで愛する理由は見た目だけじゃない!慣れない貴族社会に馴染もうと努力する姿や、まだ貴族となって日が浅いというのに、もう社交の場でも物怖じする事なく僕の妻として毅然とした振る舞いができている。アリアは見た目だけではない。努力家で、いつも強気で、負けず嫌いで、それでいて優しく暖かな心も持っている。アリアのその全てが僕は好きなんだ。アリアが僕の妻になってくれた事は僕にとって人生最高の幸せだと思っているよ」
「……そんなに褒められると照れてしまいます。でも、わたしもマルク様にそう言って貰えてすごく嬉しいです。わたしも幸せです。……その……わたしもマルク様の事を愛してます……」
頬に熱を感じ見つめ合うわたしとマルク様。そこへ、お義父様が割って入った。
「そんなに私の前でいちゃつくな! しかし、その様子だと孫の顔も存外早く見られるかもしれないな。なぁ、ザルバ」
「左様でごさいますね。旦那様」
正直、この結婚はわたしにとって本望ではなかった。
わたしが貴族との結婚を望んだ理由は、貧しい生活から抜け出したい。何より、働き詰めだったお母さんを助けたかったから。
平民として生まれ、その世界しか知らなかったわたしにとって、貴族社会は未知。
知らない世界へ飛び込むにはそれなりに勇気が要ったし、何よりもお母さんと離れる事が嫌だった。
それに、お母さんを残して、わたしだけ華やかな世界へ行く事に申し訳無さというか、お母さんの事を裏切ったみたいな感覚に陥って、すごく苦しかった。
身分格差によるお母さんのわたしに対する敬称、敬語……寂しかった。悲しかった。
でも、そんなわたしの悲観もマルク様から愛を受け取る事で次第に和らいでいった。
わたしは胸を張って『幸せだよ』って言える程になれた。
――わたしは幸せだ。
可愛い可愛い2人の子供と、わたしの事だけを一途に、鬱陶しいくらいに愛してくれる旦那様に囲まれ、わたしのこの結婚は大正解だったと今は言える。
夕食時、マルク様はいつも幸せそうな笑みを浮かべ、わたしの顔ばかりを見てくる。
「あぁ、ごめん」
わたしの指摘にマルク様はハッとしたようにナイフとフォークを手に取り食事に戻る。でも、またしばらくすると――
「……マルク様? だから、こっち見過ぎです……」
「あぁ、ごめん。つい……」
この一連のやり取りを見ていたお義父様が笑い声を上げる。
「あっはっはっは!! 麗しい貴族令嬢を目の前にしても全く興味関心を持たなかったマルクがこんな事になるなんて誰が予想出来たか、なぁ、ザルバ?」
「全くでございますな。あのマルクおぼっちゃまが知らず食事の手を休め、無意識のままにアリアお嬢様の美貌に見惚れるなどという光景はさすがに夢にも思いませんでした。いや、それ程にアリアお嬢様はお美しいという事でしょう」
執事のザルバの言葉にマルク様が噛み付くように横やりを入れる。
「確かにアリアのその美貌に惚れたのは確かだが、僕がアリアをここまで愛する理由は見た目だけじゃない!慣れない貴族社会に馴染もうと努力する姿や、まだ貴族となって日が浅いというのに、もう社交の場でも物怖じする事なく僕の妻として毅然とした振る舞いができている。アリアは見た目だけではない。努力家で、いつも強気で、負けず嫌いで、それでいて優しく暖かな心も持っている。アリアのその全てが僕は好きなんだ。アリアが僕の妻になってくれた事は僕にとって人生最高の幸せだと思っているよ」
「……そんなに褒められると照れてしまいます。でも、わたしもマルク様にそう言って貰えてすごく嬉しいです。わたしも幸せです。……その……わたしもマルク様の事を愛してます……」
頬に熱を感じ見つめ合うわたしとマルク様。そこへ、お義父様が割って入った。
「そんなに私の前でいちゃつくな! しかし、その様子だと孫の顔も存外早く見られるかもしれないな。なぁ、ザルバ」
「左様でごさいますね。旦那様」
正直、この結婚はわたしにとって本望ではなかった。
わたしが貴族との結婚を望んだ理由は、貧しい生活から抜け出したい。何より、働き詰めだったお母さんを助けたかったから。
平民として生まれ、その世界しか知らなかったわたしにとって、貴族社会は未知。
知らない世界へ飛び込むにはそれなりに勇気が要ったし、何よりもお母さんと離れる事が嫌だった。
それに、お母さんを残して、わたしだけ華やかな世界へ行く事に申し訳無さというか、お母さんの事を裏切ったみたいな感覚に陥って、すごく苦しかった。
身分格差によるお母さんのわたしに対する敬称、敬語……寂しかった。悲しかった。
でも、そんなわたしの悲観もマルク様から愛を受け取る事で次第に和らいでいった。
わたしは胸を張って『幸せだよ』って言える程になれた。
――わたしは幸せだ。
可愛い可愛い2人の子供と、わたしの事だけを一途に、鬱陶しいくらいに愛してくれる旦那様に囲まれ、わたしのこの結婚は大正解だったと今は言える。
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