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番外編

番外編 溺愛スタート

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 ――互いの相思相愛を認識し合った次の日。

「失礼致します。紅茶をお待ち致しました」

「……あ、あぁ……」

 もはやお馴染みのやり取りではあるものの、昨日の出来事のせいなのか、旦那様はこれまでみたいな無愛想な反応ではなく、顔を上げて私を見ようとするが、その顔はどこか辿々しく視線を揺らし、ぎこちない表情を浮かべていた。

 かくいう私もまた昨晩は寝ようにも眠れず、脳裏に焼き付いた旦那様とのキスシーンにドキドキしっぱなしの一夜を過ごしていた。
 そして今、ベッドの中で散々回想した銀髪の美貌を目の前にして、

「……なんだか、気恥ずかしいですね……」

 またしても旦那様との甘いやり取りを思い出し、頬に熱を感じる。

「……そうだな」

 私は赤くなった顔を隠すように旦那様から視線を外し、紅茶を注ぐ動作へと移る。

 因みに、この時点で私達の関係を他に知る者はいない。

 気まずい空気を挟み、切り出したのは旦那様だった。
 
「……本当に……俺で、いいんだな?」

 旦那様は私へ、ゆっくり、ハッキリとした口調で確認を取った。

 顔の熱が一層高まったのを感じつつ、

「……はい」

 と、照れながらも視線はティーカップへ注がれる紅茶へ向けたまま、私はコクリと頷き、返事をした。

「分かった。昨日も言ったが、リデイン卿には俺から話をする。それから、いくら身分格差の結婚が認められているとはいえ、各方面へ理解も得なければならない。領民、屋敷内の者達、王家……諸々、特にクラインは、貴族の体裁云々うるさいからな。何、全ては俺の方で動くさ。故に、君は何も心配しなくて良い。そういえば、クラインの奴は君をメイド長にしたかったらしいが、それも諦めてもらう……」

 最初に見せたぎこちない表情はどこへやら、旦那様は「ふっ」と得意気に笑みを浮かべると、

「クラインには悪いが、エミリアは俺が貰う」

 彼はそう言葉を継ぎ、ちょうど紅茶を注ぎ終え、顔を上げた私の顔を見つめたのだった。

 こうして、彼からの溺愛が始まったのだった――
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