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【ノーチェ視点】⑤
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「つーかそれよかテメェだ」
彼があまりにも照れるので、なんとなく俺まで恥ずかしくなってきた。
それを隠すように話題を変える。
「なんでここに...それも宰相補佐なんてやってやがる」
「ああ、それは」
そう言って語られた内容は、俺の怒りに火をつけるには十分なものだった。
「兄は最初っからいつきを殺すつもりで?あんたが異世界人じゃなけりゃあ今頃崖の下で死んでるって?」
「えっと、ノーチェ?」
「ふっざけんなクソやろう!ぶっ殺してやる!今すぐこっから出しやがれっ!」
「待てまてっ落ち着けって」
制止の声も聞かず、暴れ回って手足の鎖を外そうとする。
今まで鎖が取れる気はしなかったはずなのに、今は力尽くでとることしか考えられなくなっていた。
「落ち着けノーチェ!それ以上やると血が出るぞ!それに兄のことは憎んでないんじゃないのか!?」
「俺を裏切ったことは恨んでねぇ!けどあんたが殺されたってのは話が別だ!俺のものに手ェ出しやがってゆるさねぇ!」
「ちょ、ノーチェはさっきからこっぱずかしいこと言い過ぎなんだが」
自分の中の激情が抑えきれなくて、とにかくとにかく暴れ回った。
ゆるさない、コロス、そればかりが頭をしめて、目の前がチカチカし始める。
そんなとき何故か冷気を感じた。
そちらに目線を向けた途端、スッと俺の中の激情は何り潜めた。
「へぇつまり私が神様から授かった大切ないつきを殺したのは、アルム・フェアラートというわけですか」
「ひっ」
冷気の正体は宰相(仮)だった。
なんの感情もないように見えて、実は瞳の奥に悪魔のような冷徹な怒りをため込んでいる、、、つまり彼は信じられないほど怒っていた。
「今すぐ彼をひっとらえます」
「いや待って待って。フォスター様待ってください」
「待ちません」
先ほどまで俺を宥めていたはずのいつきが、今度は宰相を宥めにかかる。
宰相は地上に繋がる階段に足をかけていた。
「ほーい落ち着けよソフィ」
そんな彼を止めたのはいつきではなく、牢の管理人だという男だった。
「ソフィ」と呼ばれた宰相は、親の仇を見るような目で男を睨んだ。
「その名前で呼ぶな!」
「….余計に怒らせてどうするんですか」
いつきが呆れたように言う。
「まあ結果的に止まったからいいじゃん。ほら、今のうちに捕まえときなよ」
いつきは何も言わず、そっとソフィと呼ばれた男の腕に自らの腕を絡めた。
「ソフィ」はその腕を困ったように見つめると、ふーと長く息をはいて怒らせた肩をおさめた。
宰相と牢の管理人。
役職でいえば身分違いの二人だが、どうやら既知のようだ。
一体どう言った関係なのだろう。
俺が疑問に思ったことをいつきも感じていたのだろう。
腕を組みながら宰相に、問うような視線を向ける。
宰相は心底嫌そうな顔で
「ただの同級生だ」
と言葉少なに答えた。
対して管理人は
「ひどいなぁ、寮で同室だった上に、学園で一度もクラスが離れなかった運命共同体じゃないか!」
ニヤニヤと、人を揶揄うようなイラつく顔で大袈裟に答えた。
なるほど。
この少ないやりとりで二人の関係性が多少なりともみえた気がした。
彼があまりにも照れるので、なんとなく俺まで恥ずかしくなってきた。
それを隠すように話題を変える。
「なんでここに...それも宰相補佐なんてやってやがる」
「ああ、それは」
そう言って語られた内容は、俺の怒りに火をつけるには十分なものだった。
「兄は最初っからいつきを殺すつもりで?あんたが異世界人じゃなけりゃあ今頃崖の下で死んでるって?」
「えっと、ノーチェ?」
「ふっざけんなクソやろう!ぶっ殺してやる!今すぐこっから出しやがれっ!」
「待てまてっ落ち着けって」
制止の声も聞かず、暴れ回って手足の鎖を外そうとする。
今まで鎖が取れる気はしなかったはずなのに、今は力尽くでとることしか考えられなくなっていた。
「落ち着けノーチェ!それ以上やると血が出るぞ!それに兄のことは憎んでないんじゃないのか!?」
「俺を裏切ったことは恨んでねぇ!けどあんたが殺されたってのは話が別だ!俺のものに手ェ出しやがってゆるさねぇ!」
「ちょ、ノーチェはさっきからこっぱずかしいこと言い過ぎなんだが」
自分の中の激情が抑えきれなくて、とにかくとにかく暴れ回った。
ゆるさない、コロス、そればかりが頭をしめて、目の前がチカチカし始める。
そんなとき何故か冷気を感じた。
そちらに目線を向けた途端、スッと俺の中の激情は何り潜めた。
「へぇつまり私が神様から授かった大切ないつきを殺したのは、アルム・フェアラートというわけですか」
「ひっ」
冷気の正体は宰相(仮)だった。
なんの感情もないように見えて、実は瞳の奥に悪魔のような冷徹な怒りをため込んでいる、、、つまり彼は信じられないほど怒っていた。
「今すぐ彼をひっとらえます」
「いや待って待って。フォスター様待ってください」
「待ちません」
先ほどまで俺を宥めていたはずのいつきが、今度は宰相を宥めにかかる。
宰相は地上に繋がる階段に足をかけていた。
「ほーい落ち着けよソフィ」
そんな彼を止めたのはいつきではなく、牢の管理人だという男だった。
「ソフィ」と呼ばれた宰相は、親の仇を見るような目で男を睨んだ。
「その名前で呼ぶな!」
「….余計に怒らせてどうするんですか」
いつきが呆れたように言う。
「まあ結果的に止まったからいいじゃん。ほら、今のうちに捕まえときなよ」
いつきは何も言わず、そっとソフィと呼ばれた男の腕に自らの腕を絡めた。
「ソフィ」はその腕を困ったように見つめると、ふーと長く息をはいて怒らせた肩をおさめた。
宰相と牢の管理人。
役職でいえば身分違いの二人だが、どうやら既知のようだ。
一体どう言った関係なのだろう。
俺が疑問に思ったことをいつきも感じていたのだろう。
腕を組みながら宰相に、問うような視線を向ける。
宰相は心底嫌そうな顔で
「ただの同級生だ」
と言葉少なに答えた。
対して管理人は
「ひどいなぁ、寮で同室だった上に、学園で一度もクラスが離れなかった運命共同体じゃないか!」
ニヤニヤと、人を揶揄うようなイラつく顔で大袈裟に答えた。
なるほど。
この少ないやりとりで二人の関係性が多少なりともみえた気がした。
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