とある元令嬢の選択

アメリア公爵令嬢

　アメリアはトロイヤ王国にあるイッシュロイヤー公爵家の長女としてこの世に生を受けた。

　父ロナウド、母マリアの元ですくすくと成長し物心ついた頃にはトロイヤ王国の王太子との婚約が決まった。

　王太子との仲は良好で誰もが順調だと思っていた。

　しかし、それはアメリア以外の意見でアメリア本人は不満を抱えていた。


「私、生まれた家を間違えた、と思うのよ」

「どうされたんですか、アメリア様」

　ため息を吐きながら言うアメリアにメイドが聞いた。

「だって、自由がないのよ。気がついたら王太子様との婚約が決まっているし自分で決断した事なんて一度もないのよ」

　アメリアの不満、それは用意された道を歩く自分の人生に対してだった。

「でも王太子様との仲は良好ですし旦那様や奥方様との仲も悪くはないじゃないですか、来年には妹か弟が出来る訳ですし」

　この時アメリアは５歳、マリアは第二子を妊娠していた。

　５歳にしては大人びた考え方をしているが幼い頃から家庭教師がつけられ更に王太子の婚約者となり王妃教育を受けていた。

「確かに『今は』仲が良いわよ。　でもいつ何が起こるかわからないし……、もしかしたら王太子様に他に好きな方が出来るかもしれないし」

「考えすぎだと思いますよ。　まだまだ時はありますから関係を深くしていけばいいじゃないですか」

　そう言ってメイドはアメリアの不満を受け流していた。

　後々メイドは『アメリア様はもしかしたら自分の運命を悟っていたかもしれない……』と語っていた。

　そして１年後に妹であるミラーユが産まれた。

　ここからアメリアの人生はちょっと変わっていく事になる。

　今までアメリア中心だったのがミラーユ中心になりつつあった。

　１番大きかったのはマリアがミラーユに構いっぱなしになった事だろう。

　そうなるとアメリアはロナウドの元に行くのは必然になるだろう。

　勿論、仲が悪くなった訳では無いが公爵家にちょっとした壁が出来つつあった。

　そして、この時がアメリアのその後に大きく影響を及ぼす事になる。