王都ギルドを追放された『罠師』、田舎ギルドで成り上がる

こうじ

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罠師、田舎に帰る

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 翌日、俺は乗合馬車に乗り込み田舎へと出発した。
「やっぱり、誰も見送りには来ないか……。」
 俺はポツリとつぶやいた。
 王都に来て5年ぐらいか、18だった俺はもう23歳だ。
 20代になって辞めていく同業者を見ていたが、俺もその仲間入りするとは思っていなかった。
「まぁ、見送られてもどうせ喧嘩になるだろうしな……。」
 何にも反論できずにその場を飛び出してしまったからな。
 仲間だと思っていた幼馴染達からの罵詈雑言に耐えきれる心を俺は持っていなかった。
 いい歳した俺が泣きじゃくる姿なんて誰も見たくないだろうしな。
 一人物思いに深けながら馬車はどんどん進んでいく。
 見慣れた王都の風景をぼんやりと見ているとレクサスの建物が見えた。
 一瞬、俺は身を隠した。
 俺の姿を誰にも見られたくなかった。
 『負け犬』の姿を見られたくなかった。
「そんな簡単に忘れられるわけないよな……。」
 結局、俺は王都を出るまでずっと下を向いていた。
 何も悪い事なんてしていないのに、どうしてこんな隠さなきゃいけないんだろうか……。
 まぁ、これに関しては俺自身の問題だから仕方が無い。
 治すには時間がかかるだろう……。

 王都を出て1か月が経過、馬車を乗り継ぎながら漸く俺は自分の故郷へと戻って来た。
『レノン村』、これが俺の育った村だ。
 自然豊かで人も優しい、俺の傷ついた心を癒されてくれるだろう、そう思っていた。
「なんだ、これ……。」
 えぇ、見事に寂れていましたよ。
 土地は荒れ放題、家は崩壊寸前、人もまばらで明らかに衰退していた。
「何が起こったんだ……。」
 とりあえず、帰って来た事を報告する為に村長の家へと向かった。
「確か、この辺りだったはずだったんだけど……、あれ?」
 目的である村長の家に着いたら、凄くぼろくなっていた。
 その玄関には『レノンギルド』と書かれていた。
 ギルドなんてこの村にあったか?
 そんな事を思いながら俺は建物へと入って行った。
「すいません、誰かいませんか?」
 一階には誰もいない、開店休業状態だ。
 と、2階からバタバタと誰かが下りてきた。
「すいませんっ!ちょっと寝ていまして……、てディオンドさんっ!?」
「あぁっ!! 『マイリス』じゃないかっ!?」
 降りてきたのは村長の娘である『マイリス・レノン』、確か俺と同い年の筈だ。
 しかし、その見た目はかなり変わっていた。
 村にいた頃は長い金の髪の毛に可愛らしい笑顔を振りまいて村の人気者だった。
 だが、今現れたマイリスは髪の毛はボロボロ、着ている服もお嬢様らしい恰好では無かった。
 なんていうか、明らかに苦労してきた感じがわかった。
「ディオンドさんっ!! お久しぶりですっ!!」
「あぁ、久しぶり、ていうかこの惨状は一体何があったんだ? て言うかなんでギルドがあるんだ?」
「えぇ、実は色々あってこの村は崩壊寸前なんです……。」
 とりあえず、事情を聞く事にしよう。
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