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プロローグ
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───ピンポーン、ピンポーン。
玄関のチャイムの甲高い音が家中に響き渡る。
こんな朝早くから誰だろうか。
「お届け物でーす。こちらにサインお願いします」
「はい」
届いたのは様々な重量の段ボールだった。
一体なにが届いたのだろうか。
とりあえず一つ開けて中身を取り出してみる。
中から出てきたのは一枚の小さな布──もとい女性用の下着だった。
「な…!?」
なんで女性のパンツが!?
とりあえず閉まっておこう。今なら目撃者もいない──。
「ごめんくださーい」
───目撃者は存在した。
もしこの人が同じ男ならすぐに言い訳に転じることができただろう。
だが相手は長い艶やかな黒髪、潤んだ綺麗な瞳、整った顔立ち、華奢なスタイルを持った容姿端麗の美少女だった。
そんな美少女を前にした俺は思わず目を奪われ、相手が硬直している間、俺も硬直してしまった。
初手の行動をミスをした時点で、今から言い訳などもはや無意味に等しいだろう。
もう悲鳴を上げられる覚悟はできている。
さあ、来いっ!
「やっと会えた…っ!!」
俺の予想は大きく外れ、耳に悲鳴が飛び込んでくるはずが、俺の胸に女の子が飛び込んできた。
どうしてこうなった。
女性の下着を持った男子を見た女子が、悲鳴を上げ軽蔑するどころか、その男子(変態)に対して抱きついている。
…もしかして今のうちに段ボールにこれを戻せば万事解決なのでは?
俺は彼女に気づかれないよう、そっと段ボールに下着を握ったままの左手を伸ばす。
もう少し…届いてくれ…!
だが、そんな希望を打ち砕くかのように俺の左手首を彼女の手が掴んだ
「…今は数年ぶりの再開を喜ぼう?この件に関しては後でちゃんとお話するからね、かずくん?」
「その声にその呼び方…まさか風花!?」
「むぅ、気づくのが遅いよ~!」
────
「久しぶりだね、かずくん」
「ああ、本当に久しぶり、風花」
俺と風花は小学生の頃、家が近くよく遊んでいた。中学に上がると同時に俺は引っ越したから、あれから全く連絡を取れずにいた。
あの地味で目立たなかった風花が、こんなに垢抜けて可愛くなっているとは。
眼鏡からコンタクトに変えていたのもあって見ただけでは全然分からなかった。
「でも、いきなりどうしたんだ?」
「あれ、おじさまおばさまから聞いてない?」
あの人たちから何か聞いていただろうか。
思い当たる節なんて…なんて…一つあった。
「まさか許嫁の話のこと?」
「そう、その話」
「あの話ってマジな話だったの?俺、あれ冗談だと思ってたんだけど」
「おじさまおばさま一体どんな話し方したの…」
あんな酒の席で適当に言われても、そんな現実味のないことを誰が信じられるというのだろうか。
「じゃああの大量の段ボールって風花の荷物だったのか?」
「そ~ゆこと。だからね?かずくんが握っていたのは私のなんだよね」
まずい。話があらぬ方向に進んでしまった。
「さ、さっきの件についてお話しよっか♪」
「ちょ、ちょっと待って、あれは不可抗力──」
この日、俺は人生で初めて土下座した。
玄関のチャイムの甲高い音が家中に響き渡る。
こんな朝早くから誰だろうか。
「お届け物でーす。こちらにサインお願いします」
「はい」
届いたのは様々な重量の段ボールだった。
一体なにが届いたのだろうか。
とりあえず一つ開けて中身を取り出してみる。
中から出てきたのは一枚の小さな布──もとい女性用の下着だった。
「な…!?」
なんで女性のパンツが!?
とりあえず閉まっておこう。今なら目撃者もいない──。
「ごめんくださーい」
───目撃者は存在した。
もしこの人が同じ男ならすぐに言い訳に転じることができただろう。
だが相手は長い艶やかな黒髪、潤んだ綺麗な瞳、整った顔立ち、華奢なスタイルを持った容姿端麗の美少女だった。
そんな美少女を前にした俺は思わず目を奪われ、相手が硬直している間、俺も硬直してしまった。
初手の行動をミスをした時点で、今から言い訳などもはや無意味に等しいだろう。
もう悲鳴を上げられる覚悟はできている。
さあ、来いっ!
「やっと会えた…っ!!」
俺の予想は大きく外れ、耳に悲鳴が飛び込んでくるはずが、俺の胸に女の子が飛び込んできた。
どうしてこうなった。
女性の下着を持った男子を見た女子が、悲鳴を上げ軽蔑するどころか、その男子(変態)に対して抱きついている。
…もしかして今のうちに段ボールにこれを戻せば万事解決なのでは?
俺は彼女に気づかれないよう、そっと段ボールに下着を握ったままの左手を伸ばす。
もう少し…届いてくれ…!
だが、そんな希望を打ち砕くかのように俺の左手首を彼女の手が掴んだ
「…今は数年ぶりの再開を喜ぼう?この件に関しては後でちゃんとお話するからね、かずくん?」
「その声にその呼び方…まさか風花!?」
「むぅ、気づくのが遅いよ~!」
────
「久しぶりだね、かずくん」
「ああ、本当に久しぶり、風花」
俺と風花は小学生の頃、家が近くよく遊んでいた。中学に上がると同時に俺は引っ越したから、あれから全く連絡を取れずにいた。
あの地味で目立たなかった風花が、こんなに垢抜けて可愛くなっているとは。
眼鏡からコンタクトに変えていたのもあって見ただけでは全然分からなかった。
「でも、いきなりどうしたんだ?」
「あれ、おじさまおばさまから聞いてない?」
あの人たちから何か聞いていただろうか。
思い当たる節なんて…なんて…一つあった。
「まさか許嫁の話のこと?」
「そう、その話」
「あの話ってマジな話だったの?俺、あれ冗談だと思ってたんだけど」
「おじさまおばさま一体どんな話し方したの…」
あんな酒の席で適当に言われても、そんな現実味のないことを誰が信じられるというのだろうか。
「じゃああの大量の段ボールって風花の荷物だったのか?」
「そ~ゆこと。だからね?かずくんが握っていたのは私のなんだよね」
まずい。話があらぬ方向に進んでしまった。
「さ、さっきの件についてお話しよっか♪」
「ちょ、ちょっと待って、あれは不可抗力──」
この日、俺は人生で初めて土下座した。
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