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咲良の答え④
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結局蒼一さんには受け入れてもらえなかった自分が、誰かに好きだと言ってもらえるのは嬉しいことだった。自分はこのままでも価値があるんだ、って。そう思えるだけで少しだけ心が救われた。
蓮也も言って恥ずかしくなったのか顔を背ける。
「いや、ごめん。別にあの告白についてなんか言ってほしいわけじゃないから」
「うん……」
「でも覚えててほしい。俺は正直咲良が離婚できたって聞いて喜んでるよ」
しっかりした口調でそう断言され、びくっと自分の体が反応した。忘れていたわけじゃないけど、蓮也が私を好きと言ってくれているのはなんだか信じられないと思う。
彼は仲のいい友達だ。居心地が良くて、一緒にいるとつい気が緩む。だからこそ、いっぱいいっぱいの私にそんな優しい言葉は反則だ。
全部吐き出したくなる。蓮也に言ってもどうしようもないのに、聞いてほしいと思ってしまう。
蓮也が持っていたグラスを置く。私は少しも動かないまま自分の膝を見つめていた。
「咲良?」
蓮也がこちらを覗き込んでくる。とうとう止まらなくなりポロポロ溢れでた涙が自分の拳を濡らしていく。涙ってこんなに出るんだ、なんて感心するほどだった。
「私、蒼一さんと結婚したかったんだ」
ほとんど無意識に言葉をこぼしてしまい、慌てて口を閉じたが遅かった。蓮也は聞いて驚きで固まっている。気まずくなって視線を泳がせた。
言うつもりなかったのに。つい言ってしまった。最後まで私一人の心に秘めておきたかったのに。
「……え、それ、どういう」
「…………」
「咲良が元々、あの人を好きだったってこと?」
信じられない、とばかりに小さく首を振った。その反応に少し笑ってしまう。そうだよね、驚くよね。
頬に流れた涙を乱暴に拭き、半ばやけくそ気味に言った。
「馬鹿だよね、お姉ちゃんの婚約者だって知ってたのに初恋だったんだよ。七歳も年上だし、相手にされないことなんて考えなくてもわかるのに」
「……そ、んな」
「それでも子供の頃からずっと好きだったから……」
私は両手で顔を覆って泣いた。
そう、ずっと彼が好きだった。叶わないと思っていた片想いが叶ったんだと結婚式の日は喜んだ。
でも違うんだね。形だけの結婚じゃどうにもならない。心と心が通じ合えるわけじゃないんだ。私は甘すぎた。
自分の嗚咽の音が部屋に響く。蓮也にこんなことを言うなんてダメだとわかってるのに、もう止まれなかった。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
泣き続ける私に、蓮也は黙っていた。ただ涙をこぼす私をみている。隣に蓮也が座ってる空間が心地良かった。
蓮也を好きだったらよかったのにな、と思った。
一緒にいて楽で、私を好きでいてくれて、いいやつだし気も合う。きっと付き合ったら上手くやっていけるだろうなと想像もつく。
それでも———私が選んだのは、あの人だった。
昨晩ほとんど眠れていなかった私は、ソファの上でいつのまにか眠ってしまっていた。
目が覚めた時はもう外は暗くなっていて、慌てて謝る私に蓮也は笑ってくれた。
ここ最近、ぐっすり眠れていなかった気がする。体の疲労感が取れてスッキリした気がした。頭も冴えてきた気がする。
お姉さんのバイトはもう少しで終わるので、帰ったらみんなでピザでも取って食べようと提案してくれた。私は喜んで頷き、とりあえず二人で並びお姉さんの帰りを待った。
蓮也も言って恥ずかしくなったのか顔を背ける。
「いや、ごめん。別にあの告白についてなんか言ってほしいわけじゃないから」
「うん……」
「でも覚えててほしい。俺は正直咲良が離婚できたって聞いて喜んでるよ」
しっかりした口調でそう断言され、びくっと自分の体が反応した。忘れていたわけじゃないけど、蓮也が私を好きと言ってくれているのはなんだか信じられないと思う。
彼は仲のいい友達だ。居心地が良くて、一緒にいるとつい気が緩む。だからこそ、いっぱいいっぱいの私にそんな優しい言葉は反則だ。
全部吐き出したくなる。蓮也に言ってもどうしようもないのに、聞いてほしいと思ってしまう。
蓮也が持っていたグラスを置く。私は少しも動かないまま自分の膝を見つめていた。
「咲良?」
蓮也がこちらを覗き込んでくる。とうとう止まらなくなりポロポロ溢れでた涙が自分の拳を濡らしていく。涙ってこんなに出るんだ、なんて感心するほどだった。
「私、蒼一さんと結婚したかったんだ」
ほとんど無意識に言葉をこぼしてしまい、慌てて口を閉じたが遅かった。蓮也は聞いて驚きで固まっている。気まずくなって視線を泳がせた。
言うつもりなかったのに。つい言ってしまった。最後まで私一人の心に秘めておきたかったのに。
「……え、それ、どういう」
「…………」
「咲良が元々、あの人を好きだったってこと?」
信じられない、とばかりに小さく首を振った。その反応に少し笑ってしまう。そうだよね、驚くよね。
頬に流れた涙を乱暴に拭き、半ばやけくそ気味に言った。
「馬鹿だよね、お姉ちゃんの婚約者だって知ってたのに初恋だったんだよ。七歳も年上だし、相手にされないことなんて考えなくてもわかるのに」
「……そ、んな」
「それでも子供の頃からずっと好きだったから……」
私は両手で顔を覆って泣いた。
そう、ずっと彼が好きだった。叶わないと思っていた片想いが叶ったんだと結婚式の日は喜んだ。
でも違うんだね。形だけの結婚じゃどうにもならない。心と心が通じ合えるわけじゃないんだ。私は甘すぎた。
自分の嗚咽の音が部屋に響く。蓮也にこんなことを言うなんてダメだとわかってるのに、もう止まれなかった。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
泣き続ける私に、蓮也は黙っていた。ただ涙をこぼす私をみている。隣に蓮也が座ってる空間が心地良かった。
蓮也を好きだったらよかったのにな、と思った。
一緒にいて楽で、私を好きでいてくれて、いいやつだし気も合う。きっと付き合ったら上手くやっていけるだろうなと想像もつく。
それでも———私が選んだのは、あの人だった。
昨晩ほとんど眠れていなかった私は、ソファの上でいつのまにか眠ってしまっていた。
目が覚めた時はもう外は暗くなっていて、慌てて謝る私に蓮也は笑ってくれた。
ここ最近、ぐっすり眠れていなかった気がする。体の疲労感が取れてスッキリした気がした。頭も冴えてきた気がする。
お姉さんのバイトはもう少しで終わるので、帰ったらみんなでピザでも取って食べようと提案してくれた。私は喜んで頷き、とりあえず二人で並びお姉さんの帰りを待った。
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