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蒼一の戸惑い⑦
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「白昼堂々と、こんなものが撮れましたよ。天海さんん、よろしいんですか」
こちらの様子を伺うように彼女は言う。その声で我に返る。私は持っている写真を適当にテーブルに置いた。
「彼のことは知ってる、咲良の幼馴染みたいなものだから」
「でも男性ですよ、抱きしめるなんてあります?」
「仲いいんだよ」
「そもそも既婚者が異性と二人きりで会うなんてどうなんですか?」
「僕が行っていいって言ったんだよ」
強い語尾で言った。そう、恐らくこれは咲良が相談してきたあの日のことだろう。自分の頭はめちゃくちゃに混乱しているが、一つ冷静にいられる点があった。強く抱きしめているのは蓮也の方で、咲良は驚いたようにその腕を下ろしていた。その景色がかろうじて自分を保てる真実だった。
これで咲良の両腕が蓮也の背中に回っていた日には、恐らく私は狂っていた。
蓮也の気持ちは知っている。多分だが、彼は咲良に想いを告げたんだ。その時のシーン、というところか。
「それより感心しないな、なぜ咲良をこんなふうに調べ回ったの? こんなの、狙わなきゃ撮れない写真だよね」
私はじっと新田さんをみた。彼女は唇を固くとじ、私を見上げている。
そう、こんな写真、偶然で撮れるわけがない。咲良の周辺を調べなければ無理なのだ。
彼女は私の袖を再び強く掴んだ。そしてどこか涙を溜めた目で言う。
「分かりませんか……? 本当は知ってるでしょう、私の気持ちなんて。私はずっとずっと天海さんが好きだったんですよ」
やや掠れた声でそう告げられた。私はわずかに息を吸ったまま返事に戸惑う。
新田さんはそのまますがるように続けた。
「それでも、あなたには昔から婚約者がいたことは有名な話でした。相手は藤田グループの藤田綾乃、女の私からみても見惚れるほどの完璧な女性でした。片想いは秘めておこうと思ったんです。
でも、少しでも天海さんによく思って貰える女になれるよう藤田綾乃を手本に頑張りました。仕事もあなたのサポートができるよう、外見にも気遣って、私は必死にやってきたんです。
それがなんですか? いざ式になって出てきたのは妹の方。藤田綾乃とはまるで似てないどこにでもいるような子。そんなの、引き下がれると思います?」
震える声で私に言う。情けなくも、自分は言葉をなくして何も返せなかった。
彼女の好意はまるで気がつかなかったといえば嘘になる。確信はしてないが、もしかしたら、と思うことはあった。それでも気づかないふりが一番かと思っていた。仕事上よきパートナーとして過ごすのがいいんだと。
そうやって誤魔化してきた自分の対応が悪いのか。
「お願いします天海さん、こんな結婚終わりにしてくれませんか? いえ、立場上それができないなら、そのままでもいいから私を見てくれませんか?」
「に、新田さん」
「どう考えても藤田咲良はあなたには不釣り合いです。パーティーの時は上手く誤魔化してたけど、腕のいいメイクでもつけばあれぐらい女は化けれます。普段の彼女は地味で子供らしくて、あなたの隣には相応しくないです」
彼女はついに頬に涙をこぼした。私の袖をしっかり握りしめ、離さない。小さなその手で必死に握るその様子に胸を痛める。
それでも私はそっと袖から彼女の手を離させた。ここで情を見せるわけにはいかない、と思った。
こちらの様子を伺うように彼女は言う。その声で我に返る。私は持っている写真を適当にテーブルに置いた。
「彼のことは知ってる、咲良の幼馴染みたいなものだから」
「でも男性ですよ、抱きしめるなんてあります?」
「仲いいんだよ」
「そもそも既婚者が異性と二人きりで会うなんてどうなんですか?」
「僕が行っていいって言ったんだよ」
強い語尾で言った。そう、恐らくこれは咲良が相談してきたあの日のことだろう。自分の頭はめちゃくちゃに混乱しているが、一つ冷静にいられる点があった。強く抱きしめているのは蓮也の方で、咲良は驚いたようにその腕を下ろしていた。その景色がかろうじて自分を保てる真実だった。
これで咲良の両腕が蓮也の背中に回っていた日には、恐らく私は狂っていた。
蓮也の気持ちは知っている。多分だが、彼は咲良に想いを告げたんだ。その時のシーン、というところか。
「それより感心しないな、なぜ咲良をこんなふうに調べ回ったの? こんなの、狙わなきゃ撮れない写真だよね」
私はじっと新田さんをみた。彼女は唇を固くとじ、私を見上げている。
そう、こんな写真、偶然で撮れるわけがない。咲良の周辺を調べなければ無理なのだ。
彼女は私の袖を再び強く掴んだ。そしてどこか涙を溜めた目で言う。
「分かりませんか……? 本当は知ってるでしょう、私の気持ちなんて。私はずっとずっと天海さんが好きだったんですよ」
やや掠れた声でそう告げられた。私はわずかに息を吸ったまま返事に戸惑う。
新田さんはそのまますがるように続けた。
「それでも、あなたには昔から婚約者がいたことは有名な話でした。相手は藤田グループの藤田綾乃、女の私からみても見惚れるほどの完璧な女性でした。片想いは秘めておこうと思ったんです。
でも、少しでも天海さんによく思って貰える女になれるよう藤田綾乃を手本に頑張りました。仕事もあなたのサポートができるよう、外見にも気遣って、私は必死にやってきたんです。
それがなんですか? いざ式になって出てきたのは妹の方。藤田綾乃とはまるで似てないどこにでもいるような子。そんなの、引き下がれると思います?」
震える声で私に言う。情けなくも、自分は言葉をなくして何も返せなかった。
彼女の好意はまるで気がつかなかったといえば嘘になる。確信はしてないが、もしかしたら、と思うことはあった。それでも気づかないふりが一番かと思っていた。仕事上よきパートナーとして過ごすのがいいんだと。
そうやって誤魔化してきた自分の対応が悪いのか。
「お願いします天海さん、こんな結婚終わりにしてくれませんか? いえ、立場上それができないなら、そのままでもいいから私を見てくれませんか?」
「に、新田さん」
「どう考えても藤田咲良はあなたには不釣り合いです。パーティーの時は上手く誤魔化してたけど、腕のいいメイクでもつけばあれぐらい女は化けれます。普段の彼女は地味で子供らしくて、あなたの隣には相応しくないです」
彼女はついに頬に涙をこぼした。私の袖をしっかり握りしめ、離さない。小さなその手で必死に握るその様子に胸を痛める。
それでも私はそっと袖から彼女の手を離させた。ここで情を見せるわけにはいかない、と思った。
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