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咲良の想い⑩
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蒼一さんがくれた。小さな石が光っている。シンプルででも綺麗だ。パーティーのためだとはいえ、私のために買ってくれた。
これを外したくないと思った。私はもう子供じゃない、蒼一さんと結婚した大人の女だ。本当は彼に、一人の女性として意識してもらいたい。
私の願いを聞いてもらえるとすればただ一つ。
例えお姉ちゃんの代わりでもいいから、同居人からどうにかして脱出したいの
「……そうです。私、もう子供じゃないんです」
「そうだね。もう二十二だもんね」
「子供っぽく見られるけど違います。私は」
隣に座る蒼一さんをみる。瞬間、茶色の瞳と目が合った。たったそれだけで、私の全身は縛られたように動けなくなってしまう。魔法だろうか、と思った。
あなたの妻として隣に立つことがこれほど嬉しかったなんて。できれば本当に妻となれたらどれくらい幸せなんだろう。私は求めすぎなんだろうか。
出したい言葉が出てこない。でも言いたい。言ったら彼が困ることなんてわかってる、けど伝えたい。
私、は。
「あ」
言葉を探している時、目の前の蒼一さんが声を上げた。首を傾げると、彼は笑って言った。
「そうだ。今日、来たよ」
「え?」
「咲良ちゃんのベッド」
それを言われた途端、言おうとしていた言葉は脆くも崩れ去った。サラサラと砂のように、言いたかった気持ちも無くなっていく。
嬉しそうに、ほっとしたように言った蒼一さんの顔が印象的だった。
「パーティーの間、山下さんに立ち会いお願いしておいた。あっちの部屋に設置したから、咲良ちゃんはそっちで寝てね」
「…………」
「これでゆっくり寝れるね。よかった」
これまで毎晩隣で寝ていた私たち。それでもただ睡眠をするだけで、本当に彼は何もしてこなかった。
彼の提案で購入した私用のベッド。私用の部屋。ここに完全に別室が確立された。
それは『本当に手なんか出さないよ』という彼の強い意志だった。
「……はい、ありがとうございます」
「疲れたでしょう、先お風呂入っておいで」
「お言葉に甘えて。ありがとうございます」
「お礼の件は考えておいてね」
私はニコリと笑って見せると、そのまま蒼一さんに背を向けた。ふらふらと部屋に入ってみると、新品のベッドが確かにそこには存在していた。
苦笑する。褒められて調子に乗ってしまった。これほど対象外だと彼から突きつけられて、何を夢見ていたんだろう。
普通、はさ。気持ちはなくても、男の人って女を抱けるんじゃないの?
私はそんな気も起きないほど女として見られてないんだろうか。隣に寝て、それでも何もないんじゃもう救いようがない。きっと一生、私は彼と繋がることはない。
左手にしていた指輪をそっと外し、近くの引き出しにしまいこんだ。綺麗な輝きを見せる石が、今はあまりに辛かった。
これを外したくないと思った。私はもう子供じゃない、蒼一さんと結婚した大人の女だ。本当は彼に、一人の女性として意識してもらいたい。
私の願いを聞いてもらえるとすればただ一つ。
例えお姉ちゃんの代わりでもいいから、同居人からどうにかして脱出したいの
「……そうです。私、もう子供じゃないんです」
「そうだね。もう二十二だもんね」
「子供っぽく見られるけど違います。私は」
隣に座る蒼一さんをみる。瞬間、茶色の瞳と目が合った。たったそれだけで、私の全身は縛られたように動けなくなってしまう。魔法だろうか、と思った。
あなたの妻として隣に立つことがこれほど嬉しかったなんて。できれば本当に妻となれたらどれくらい幸せなんだろう。私は求めすぎなんだろうか。
出したい言葉が出てこない。でも言いたい。言ったら彼が困ることなんてわかってる、けど伝えたい。
私、は。
「あ」
言葉を探している時、目の前の蒼一さんが声を上げた。首を傾げると、彼は笑って言った。
「そうだ。今日、来たよ」
「え?」
「咲良ちゃんのベッド」
それを言われた途端、言おうとしていた言葉は脆くも崩れ去った。サラサラと砂のように、言いたかった気持ちも無くなっていく。
嬉しそうに、ほっとしたように言った蒼一さんの顔が印象的だった。
「パーティーの間、山下さんに立ち会いお願いしておいた。あっちの部屋に設置したから、咲良ちゃんはそっちで寝てね」
「…………」
「これでゆっくり寝れるね。よかった」
これまで毎晩隣で寝ていた私たち。それでもただ睡眠をするだけで、本当に彼は何もしてこなかった。
彼の提案で購入した私用のベッド。私用の部屋。ここに完全に別室が確立された。
それは『本当に手なんか出さないよ』という彼の強い意志だった。
「……はい、ありがとうございます」
「疲れたでしょう、先お風呂入っておいで」
「お言葉に甘えて。ありがとうございます」
「お礼の件は考えておいてね」
私はニコリと笑って見せると、そのまま蒼一さんに背を向けた。ふらふらと部屋に入ってみると、新品のベッドが確かにそこには存在していた。
苦笑する。褒められて調子に乗ってしまった。これほど対象外だと彼から突きつけられて、何を夢見ていたんだろう。
普通、はさ。気持ちはなくても、男の人って女を抱けるんじゃないの?
私はそんな気も起きないほど女として見られてないんだろうか。隣に寝て、それでも何もないんじゃもう救いようがない。きっと一生、私は彼と繋がることはない。
左手にしていた指輪をそっと外し、近くの引き出しにしまいこんだ。綺麗な輝きを見せる石が、今はあまりに辛かった。
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