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憧れの人
今本当に必要なもの
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「まさか、それで導かれたというのですか?
日比谷はあえて黒島さんにヒントを与え、自分の正体に辿り着くようにしたと?」
「さすが、理解が早いですね」
だが納得できない顔をしているのは影山さんだ。小さく首を振って否定した。
「矛盾してるではないですか、今までは顔を隠していたのに、それを自分で導く? まどろっこしいです、なら初めから顔を出せばよかったのでは? なんの意味があるんですか」
「まさにその通りです。
私も不思議だと思いました。そこでまず、日比谷の生前のやり方を踏まえてこう考えたんです。
『彼は光さんに希望を与えたんじゃないか』と」
「希望?」
「考えてみてください。あの除霊の時、顔を見せたまま除霊失敗していたら。あなたはどう思いますか?」
はっと影山さんが口を開けた。数珠をさらに強く握りしめる。ごくりと唾を飲み込み呟く。
「そうか……顔も見えていたのに除霊失敗すれば、もう私ではどうにもならないということになります。でもあの時、あえて顔を隠すことにより、『顔さえ見えていればなんとかなるかも』と希望を見ることができた。
日比谷は生前、女性をすぐには殺さず、恐怖に溺れさせてから手にかけて殺している。今回も被害者たちはすぐには死んでいない。
希望を見せたことにより、より大きな絶望と恐怖が待っている」
九条さんが頷いた。影山さんは唇を震わせる。
「……だが、結果日比谷は顔を出してきた。それはつまり、顔を見せても私に除霊されないという確かな自信がある? そういうことですか?」
「そうです」
キッパリと九条さんが言い切った。影山さんは狼狽える。
「まさかそんな、ではどうすればいいんでしょうか。自分で言うのも何ですが、もっと力の強い除霊師に心あたりはありません、このままでは!」
「落ち着いてください。まだ考察は続きます」
「え?」
九条さんは淡々とした声で、さらに続ける。影山さんは唖然としているだけだ。
「ここで見逃したくない疑問が二つ。
日比谷はなぜそんな確たる自信があったのか。
そして、顔が見えなければ除霊の効果が下がるという影山さんの特徴を知っていたのか」
九条さんが長い指を二本立てた。その指をみて、影山さんはじっと考え込む。
初めから言われていたことだ。向こうは影山さんを知っているのか。
故意に顔を隠して現れていたとすれば、そう疑うのが普通だ。影山さんは困ったように視線を泳がす。
「言いましたが日比谷と面識はありません。となれば一方的に、でしょうか。確かに日比谷が逮捕される前、すでに私はこの世界で働いていました。
ですがね、いわば自分の弱点のようなものです。今までそれを自分から言ったことはありませんし、知っていてもそれこそ麗香や親しい仕事仲間だけですよ」
九条さんは黙り込む。デスクの上に置かれた丸い鏡をじっと見つめ、そのまま囁くように言った。
「麗香も力負けした。あなたが用意したお守りもお札も効果が見られなかった。除霊は顔が見えていなかったからというのもありますが、それすら相手に筒抜けだとすれば、勝機はない。
私は、今必要なのは除霊ではないと思っているんです」
影山さんが目を見開いた。まさかの九条さんの発言にただ驚いている。
「な、なにを……ですがこのままでは黒島さんは」
九条さんは無言で数歩歩いた。先にあったのは伊藤さんが使っていたノートパソコンだ。それを手に持ち、操作する。
「私が必要だと思っているのは、
影山さん。あなたの自覚です」
日比谷はあえて黒島さんにヒントを与え、自分の正体に辿り着くようにしたと?」
「さすが、理解が早いですね」
だが納得できない顔をしているのは影山さんだ。小さく首を振って否定した。
「矛盾してるではないですか、今までは顔を隠していたのに、それを自分で導く? まどろっこしいです、なら初めから顔を出せばよかったのでは? なんの意味があるんですか」
「まさにその通りです。
私も不思議だと思いました。そこでまず、日比谷の生前のやり方を踏まえてこう考えたんです。
『彼は光さんに希望を与えたんじゃないか』と」
「希望?」
「考えてみてください。あの除霊の時、顔を見せたまま除霊失敗していたら。あなたはどう思いますか?」
はっと影山さんが口を開けた。数珠をさらに強く握りしめる。ごくりと唾を飲み込み呟く。
「そうか……顔も見えていたのに除霊失敗すれば、もう私ではどうにもならないということになります。でもあの時、あえて顔を隠すことにより、『顔さえ見えていればなんとかなるかも』と希望を見ることができた。
日比谷は生前、女性をすぐには殺さず、恐怖に溺れさせてから手にかけて殺している。今回も被害者たちはすぐには死んでいない。
希望を見せたことにより、より大きな絶望と恐怖が待っている」
九条さんが頷いた。影山さんは唇を震わせる。
「……だが、結果日比谷は顔を出してきた。それはつまり、顔を見せても私に除霊されないという確かな自信がある? そういうことですか?」
「そうです」
キッパリと九条さんが言い切った。影山さんは狼狽える。
「まさかそんな、ではどうすればいいんでしょうか。自分で言うのも何ですが、もっと力の強い除霊師に心あたりはありません、このままでは!」
「落ち着いてください。まだ考察は続きます」
「え?」
九条さんは淡々とした声で、さらに続ける。影山さんは唖然としているだけだ。
「ここで見逃したくない疑問が二つ。
日比谷はなぜそんな確たる自信があったのか。
そして、顔が見えなければ除霊の効果が下がるという影山さんの特徴を知っていたのか」
九条さんが長い指を二本立てた。その指をみて、影山さんはじっと考え込む。
初めから言われていたことだ。向こうは影山さんを知っているのか。
故意に顔を隠して現れていたとすれば、そう疑うのが普通だ。影山さんは困ったように視線を泳がす。
「言いましたが日比谷と面識はありません。となれば一方的に、でしょうか。確かに日比谷が逮捕される前、すでに私はこの世界で働いていました。
ですがね、いわば自分の弱点のようなものです。今までそれを自分から言ったことはありませんし、知っていてもそれこそ麗香や親しい仕事仲間だけですよ」
九条さんは黙り込む。デスクの上に置かれた丸い鏡をじっと見つめ、そのまま囁くように言った。
「麗香も力負けした。あなたが用意したお守りもお札も効果が見られなかった。除霊は顔が見えていなかったからというのもありますが、それすら相手に筒抜けだとすれば、勝機はない。
私は、今必要なのは除霊ではないと思っているんです」
影山さんが目を見開いた。まさかの九条さんの発言にただ驚いている。
「な、なにを……ですがこのままでは黒島さんは」
九条さんは無言で数歩歩いた。先にあったのは伊藤さんが使っていたノートパソコンだ。それを手に持ち、操作する。
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影山さん。あなたの自覚です」
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