上 下
354 / 449
憧れの人

疑問

しおりを挟む




 全国に踏切は、3万カ所以上存在するらしかった。私があげた特徴に当てはまるものを九条さんや伊藤さん、影山さんが見て挙げてくれる。それを私が見て判別するという形だった。

 狭い道幅、古い踏切、近くにアパートがあるくらい。そんな寂れた踏切を探しだすのにどれほどの時間を要するかわからなかったけれど、今縋りつけるのはその情報だけだった。川村莉子のことは一旦置いて、私たちは踏切の情報に必死になった。

 だが3万カ所だなんてところからたった一つを探し出すのは容易ではない。なかなか見たあの踏切を探し出すことができないまま、夜が更けていった。

 四人で長く無言が続く。画面の見過ぎで目が疲れてきた私は、少し目頭を抑えてチェックを続ける。

「あ、夕飯をとってないですよ」

 伊藤さんが思い出したように声に出す。時計を見てみるともう二十時だった。それぞれが一旦視線を上げる。

 伊藤さんは伸びをしながら立ち上がる。

「食事も大事ですよ。冷食やインスタントばかりもあれですから、出前とかとりませんか? なんなら僕買いに走ってもいいですし」

 九条さんが同意した。

「そうですね、食べたいものを食べましょう。光さん選んでください」

「え! 私ですか!」

「あなたが一番大事ですから」

「え、ええ……じゃ、じゃあ、中華とか?」

 迷いながら言ってみる。伊藤さんがすぐに笑顔を見せた。

「オッケ、食べたいものメニュー見ようか! あ、光ちゃんスマホ壊れてたね。貸すね、えーとこの辺だと……」

 テキパキと進めていく伊藤さんに流されながら、全員注文を決めた。伊藤さんはそれを店に注文してくれる。九条さんと影山さんはその間もパソコンをじっと見つめていた。

 私も再びパソコンの画面に目を落とした時、注文し終えた伊藤さんが九条さんに尋ねた。

「何か考えてるんですか?」

 見てみると、九条さんはパソコンを睨みつつ、眉間に皺を寄せていた。彼は少し唸った後、ポツリと言う。

「色々考えていました。光さんが言っていた疑問ですが、なぜ相手は顔を隠しているのか」

 反応したのは影山さんだ。椅子を引いて九条さんの方を向いた。

「そうだ、言われてみれば確かに」

「影山さん、あなたの除霊は相手の顔を知ることが重要ですか?」

「ええ。相手の全体をとらえることが重要なのです。上手く説明できませんが、簡単に言えば電話で知らない人と話すより、顔を見て話す方がずっと上手く話せるでしょう? 私の場合はそうなんです」

「先ほども話していたんです。今日の男はあえて顔を隠しているようだった。それはなぜ?」

 影山さんが何度か小さく頷く。

「尤もな疑問です、考えられるなら、私が顔を見えないと除霊しにくいと知っていた相手? ううん、ここ最近亡くなった知り合いもいない……以前除霊したことがある? あんな相手なら忘れないはず」


しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

みえる彼らと浄化係

橘しづき
ホラー
 井上遥は、勤めていた会社が倒産し、現在失職中。生まれつき幸運体質だったので、人生で初めて躓いている。  そんな遥の隣の部屋には男性が住んでいるようだが、ある日見かけた彼を、真っ黒なモヤが包んでいるのに気がついた。遥は幸運体質だけではなく、不思議なものを見る力もあったのだ。  驚き見て見ぬふりをしてしまった遥だが、後日、お隣さんが友人に抱えられ帰宅するのを発見し、ついに声をかけてしまう。 そこで「手を握って欲しい」とわけのわからないお願いをされて…?

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

適者生存 ~ゾンビ蔓延る世界で~

7 HIRO 7
ホラー
 ゾンビ病の蔓延により生きる屍が溢れ返った街で、必死に生き抜く主人公たち。同じ環境下にある者達と、時には対立し、時には手を取り合って生存への道を模索していく。極限状態の中、果たして主人公は この世界で生きるに相応しい〝適者〟となれるのだろうか――

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。