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憧れの人
わかったこと
しおりを挟む伊藤さんが次々と電話をし始め、しばらく時間が過ぎていく。私はかわらずテレビを眺めるしか出来ていないが、二人は忙しそうに動いていた。
時刻もいつのまにか夕方近くになっている。時々トイレに行きたくなった時だけ手の自由が許された。約束通り首にはオイルを塗って素早く行く。帰ってきたら即座に布を巻かれる。大事で申し訳なかった。
それでも二人とも嫌な顔一つせずに対応してくれる。
そして日が暮れてきた頃、ようやく伊藤さんの調べ物が結果を出した。
彼は頭を掻きながら、複雑そうな顔で私たちに言った。
「川村莉子の周辺で亡くなった人はいません」
それが答えだった。
私と九条さんは黙り込む。あの男の人は、川村さんの知り合いではなさそうだ。ではことの始まりはどこなのか。見当もつかない。
伊藤さんはため息をつきながら説明した。
「SNS上でよく会話してる親しい友達らしき人と連絡が取れました。特に周囲で亡くなった人がいるなんて話は聞いたことがないと。
さらに、知り合いを辿って、他の仲良い子にも話を聞けました。同じように、そういった話は聞いたことがないと」
九条さんが困ったように腕を組んで考え込む。伊藤さんがさらに続けた。
「本人の川村莉子についても聞いてみました。まあ、普通の子ってイメージです。芸能人だか誰かに夢中で、それが生きがいのように過ごしてる。仕事もちゃんと行ってる。友達も家族も問題なくいる。普通の子です」
九条さんは天井を見上げた。有力な情報が何もないことを嘆いているようだった。せめてあの霊が誰か分かれば、除霊するのに有利になれるかもしれないのに。
伊藤さんもため息をつきながら続ける。
「となると、どこかで拾ってきたんですかねえ? もうちょっとこの子については調べてみようと思いますけど……」
「ええ、調べ物は続行しましょう。他の犠牲者についても調べようか否か……私は川村莉子が何より重要だと思っていたんですが」
「九条さんも見ていて何か気になることはありませんでしたか?」
「ごく普通の発言ばかりでした。ただ、一つ言えるなら……一ヶ月ほど前から、書き込む回数がめっきり減った、というのはあります」
伊藤さんがそれを聞いてパソコンを見る。いくらか眺めたところで、確かに、と呟いた。
「減ってますね。まあ、それでも無言というわけですけど」
「仕事が忙しかったりするだけかもしれませんが」
「気にはなりますがここからどうこうって言うもんでもないかなあ。あとは、この人たちに警察も把握できていない共通点などがないか、ですね。でも正直時間がかかっちゃいそうですよ。影山さんが今後どう除霊していくのか分かりませんが、あまり時間をかけるのはよくないでしょう?」
しんと沈黙が流れてしまう。九条さんはスマホを取り出し、影山さんにも意見を聞いてみようと提案した。私たちは頷き賛成する。
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