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真夜中に来る女
ふたつ目の方法
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「そのまんまよ。あの女を呪ってる相手に返しちゃう。厄介そうだけど私なら大丈夫、もっとやばいの相手にしたことあるし。
ただこの方法あまりいい方法ではないの。なぜなら呪った相手が死ぬ可能性があるからよ。今回の場合向こうが素人であるから尚更。人を呪うようなクズとはいえども、さすがに気分悪いでしょ?」
あの女を相手に返す。そうすれば女は向こうの人を攻撃しちゃうってことなのか。
九条さんが付け足した。
「それもですが、生き残られても厄介なのですよ。返されたと気づけば、もっと強い力で呪ってやろうと奮起する輩もいますから。イタチごっこになるでしょう?」
私たちは返事すらせずに苦い顔をした。八重さんが大きなため息をつく。
「さて二個目。私はこれが一番おすすめ。
身代わりを作る」
おすすめと聞いて、まさこさんと八重さんがぐっと前のめりになる。麗香さんはニッコリと笑いながら言う。
「私が作るの。あなたの身代わりになる人形を。それを用意した上であの女に攻撃させる。女は目的を果たしたと思っていなくなる」
「娘の身代わり人形ってことですか……! でも、そんな簡単に欺けるものなんですか?」
「私が用意するんだから大丈夫よ」
清々しいほど自信に満ちた言葉に二人の顔がほっと安堵に包まれた。確かにそのやり方なら特にデメリットは無さそうだ。八重さんは少しだけ表情を緩めて言った。
「それでお願いします……!」
「ただ。これにも一つ厄介な出来事はあって」
続く麗香さんの言葉にまた場の空気が固まる。
「いい? あの女をうまく対応したとする。八重さんは事件解決と生き生き。そうなるとどうなると思う?」
「あ……」
話を聞いていて私は想像し声を漏らした。
「呪った相手は八重さんが元気なのを見て、また呪ってくるかもしれないってことですか?」
「その通りよ黒島さん」
そんな! 愕然とした。それこそまたいたちごっこになるではないか。麗香さんも困ったように息を吐いた。
「勿論、呪いなんてやっぱり効かないのかーって諦めるパターンもあるからそれならいいんだけどね。もっと粘ってやるぞ! ってやる気出すやつもいんのよ」
「そんな……じゃあ私どうすればいいんですか!?」
「仕事も長く休んで呪いが効いてるフリするとかね。本当に信頼できる人間以外とは会わずに引きこもるのが一番よ」
「そこまで……」
「理不尽だと思うでしょう。自分は何も悪くないのに。でもこうするしか手立てはない」
キッパリ言い放つ麗香さんに八重さんは項垂れた。あまりに哀れで掛ける言葉もない。八重さんは結婚も決まったばかりだと言っていたのに、結婚式どころではなくなってしまう。
黙って聞いていた九条さんが口を挟んだ。
「八重さん。あなたの周りについて調べさせてもらってもよろしいですか」
「……え?」
「誰が呪いをかけているか調べてみるのです。まあ尻尾を掴むのは簡単ではないと思いますが、うちには結構優秀なスタッフもいますからわずかな望みにかけて。誰がこんな真似をしているかわかれば、あなたも少し対処しやすいでしょう? 職場の人間なら転職を考えたり、友人なら縁を切れば仕事はそのままでいいかもしれない」
優秀なスタッフ、とは勿論伊藤さんのことを言っているのだと思った。だが確かに誰が呪っているかなんて流石に判明させるのは難しそうだけれど、もし万が一わかれば対応は変わってくるかもしれない。
八重さんは大きく頷いた。
「はい……よろしくお願いします!」
「あまり期待はできませんけどね。少し手を回してみます」
九条さんの言葉をきっかけに、麗香さんは場違いな欠伸をした。話がまとまった、という合図だ。それにしてもあんな物を見てしまった後にすぐにリラックス出来る彼女はやはり凄い。
「じゃあとりあえず身代わりを作る準備は明日するわ、道具も色々揃えなきゃだしね。このままこうしててもしょうがないしみんな休みましょう」
三時近くなっていた時計を見つめ、麗香さんは早々に控室へ戻っていった。大川さん二人を見れば、未だ顔色が悪い様子で、きっとこのまま寝ることなんかできないのだろうと想像できた。
ただこの方法あまりいい方法ではないの。なぜなら呪った相手が死ぬ可能性があるからよ。今回の場合向こうが素人であるから尚更。人を呪うようなクズとはいえども、さすがに気分悪いでしょ?」
あの女を相手に返す。そうすれば女は向こうの人を攻撃しちゃうってことなのか。
九条さんが付け足した。
「それもですが、生き残られても厄介なのですよ。返されたと気づけば、もっと強い力で呪ってやろうと奮起する輩もいますから。イタチごっこになるでしょう?」
私たちは返事すらせずに苦い顔をした。八重さんが大きなため息をつく。
「さて二個目。私はこれが一番おすすめ。
身代わりを作る」
おすすめと聞いて、まさこさんと八重さんがぐっと前のめりになる。麗香さんはニッコリと笑いながら言う。
「私が作るの。あなたの身代わりになる人形を。それを用意した上であの女に攻撃させる。女は目的を果たしたと思っていなくなる」
「娘の身代わり人形ってことですか……! でも、そんな簡単に欺けるものなんですか?」
「私が用意するんだから大丈夫よ」
清々しいほど自信に満ちた言葉に二人の顔がほっと安堵に包まれた。確かにそのやり方なら特にデメリットは無さそうだ。八重さんは少しだけ表情を緩めて言った。
「それでお願いします……!」
「ただ。これにも一つ厄介な出来事はあって」
続く麗香さんの言葉にまた場の空気が固まる。
「いい? あの女をうまく対応したとする。八重さんは事件解決と生き生き。そうなるとどうなると思う?」
「あ……」
話を聞いていて私は想像し声を漏らした。
「呪った相手は八重さんが元気なのを見て、また呪ってくるかもしれないってことですか?」
「その通りよ黒島さん」
そんな! 愕然とした。それこそまたいたちごっこになるではないか。麗香さんも困ったように息を吐いた。
「勿論、呪いなんてやっぱり効かないのかーって諦めるパターンもあるからそれならいいんだけどね。もっと粘ってやるぞ! ってやる気出すやつもいんのよ」
「そんな……じゃあ私どうすればいいんですか!?」
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「そこまで……」
「理不尽だと思うでしょう。自分は何も悪くないのに。でもこうするしか手立てはない」
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黙って聞いていた九条さんが口を挟んだ。
「八重さん。あなたの周りについて調べさせてもらってもよろしいですか」
「……え?」
「誰が呪いをかけているか調べてみるのです。まあ尻尾を掴むのは簡単ではないと思いますが、うちには結構優秀なスタッフもいますからわずかな望みにかけて。誰がこんな真似をしているかわかれば、あなたも少し対処しやすいでしょう? 職場の人間なら転職を考えたり、友人なら縁を切れば仕事はそのままでいいかもしれない」
優秀なスタッフ、とは勿論伊藤さんのことを言っているのだと思った。だが確かに誰が呪っているかなんて流石に判明させるのは難しそうだけれど、もし万が一わかれば対応は変わってくるかもしれない。
八重さんは大きく頷いた。
「はい……よろしくお願いします!」
「あまり期待はできませんけどね。少し手を回してみます」
九条さんの言葉をきっかけに、麗香さんは場違いな欠伸をした。話がまとまった、という合図だ。それにしてもあんな物を見てしまった後にすぐにリラックス出来る彼女はやはり凄い。
「じゃあとりあえず身代わりを作る準備は明日するわ、道具も色々揃えなきゃだしね。このままこうしててもしょうがないしみんな休みましょう」
三時近くなっていた時計を見つめ、麗香さんは早々に控室へ戻っていった。大川さん二人を見れば、未だ顔色が悪い様子で、きっとこのまま寝ることなんかできないのだろうと想像できた。
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