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豪邸に到着
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だがしかし圭吾さんすら納得してしまう。
「それは言えますね。舞香さんの魅力は楓さんとは真逆なところにあると思います。いいところを引き出して見せつけた方がいいです。大丈夫ですよ舞香さん、これだけ頑張り屋で凄いお人なんですから、ご両親もきっと分かってくれます」
バックミラー越しにニコリと笑ってくれた。ああ、いつでもほしい言葉をくれるのは圭吾さんだ。優しいし穏やかで、玲にはない物を全て持っている。うっとりと拝んだ。
「圭吾さんの優しさが玲にもちょっとは移りますように」
「何言ってんだ馬鹿、俺は優しいだろ」
「どこがよ、いつも散々言ってるけど玲は人としてのデリカシーと優しさが足りないよ!」
「お前には俺の良さが理解できないんだな、早くここまでステージを上がってこい」
「どこのステージよ……絶対ロクなステージじゃないじゃん……」
私たちが機嫌悪い顔で言い合っていると、圭吾さんが大声で笑った。ハンドルをしっかり両手で握ったまま、彼は非常に楽しそうに言う。
「なんだか二人とも夫婦っぽくなってきましたよね、凄くお似合いです」
「どこが!」
「なんで!」
「そういう息ピッタリなところがですよ。さ、もう少しで着きますよ」
私と玲は絶対に息ピッタリなんかではないし、あの男は相変わらず性格悪い。いつだってこっちを見下して馬鹿にしてくるんだから。
だが、ふと心の中で思い出す。私がパーティーで失敗したと思って落ち込んでるとき、一番いい女だった、って言ってくれたのは、ちょっとだけ嬉しかったしかっこよかったなあ。皆の前でもびしっと言ってくれたし、正直あれだけは見直した。
ちらりと隣を見てみる。玲は窓の外を眺めていた。そこで、大きなあくびをし眠そうにしている。私は彼の顔を覗きこんだ。
「そういえば玲、最近ちゃんと寝てる?」
「え?」
「ここ最近仕事忙しそうだよね、あまり寝てないでしょ」
あのパーティーが終わって以降、玲は仕事の繁忙期に入ったのか、夜寝る姿を見なくなった。私が先にベッドに入り、起きたときは玲はすでに起床している。私には『睡眠は美容にも頭脳にも欠かせないから早く寝ろ』と口うるさく言うくせに、当の本人は夜遅くまでパソコンを見ていたりする。
「ああ、まあ……ちょっとバタバタしててな」
「せっかくの休みなのにゆっくり出来ないしね。帰ったらゆっくりしてね」
「うん、そうする」
こういうどうでもいい会話が、どこか私たちの関係を柔らかくした証明だ。パーティーの一件以来、彼の口の悪さは変わりはしないものの、私は少し見直してしまったので、態度が柔軟になったのだ。そして玲自身も、私の救命行為に本当に感心してくれたのか、同じように変化している。
圭吾さんが言うようにお似合いだとは到底思えないが、まあよき戦友ぐらいにはなっている気がする。
玲はめちゃくちゃでデリカシーがない人間だが、ちゃんと私の味方をしてくれるし、褒めるところは褒めてくれる。
今更ながら、彼は悪い人じゃないんだな、と再確認したのだ。
あの日、汚れた私に軽蔑の眼差しを向ける事もなく、それどころか抱きかかえ、一緒になって汚れてくれた。そして私を褒めたたえてくれて、励ましてくれた。
正直なところーーあれでどれほど救われたか、分からない。
しばらく走った車は大きな門をくぐり、数台高級車が停められている駐車場に駐車された。私はドキドキしながら玲にエスコートされて降り、この日のために用意した手土産を持っていざ出陣した。圭吾さんは後ろから私に優しく励ましの言葉をかけてくれる。
緊張を必死に落ち着けながら、とにかく玲についていく。と同時に、あまりの家の大きさに圧倒された。想像以上のお家である。真っ白な外壁が眩しい。まるで城だ、と思った。
三人で玄関まで向かう。長いアプローチを通っていると、玄関の扉がガチャリと開いた。そして向こうにお手伝いさんであろう中年の女性が笑顔で顔を出した。気のよさそうな人である。
「玲さん、おかえりなさいませ!」
「お久しぶりです」
「ご実家にいらっしゃっるのはいつぶりでしたっけ……まあ、そちらが?」
お手伝いさんは私を見て顔を輝かせた。玲が微笑んで答える。
「妻の舞香です」
「まあまあ! お待ちしていましたよ、さあ中へどうぞ。あら圭吾さんもお久しぶりですね、お元気そうで! 皆さんお揃いですよ」
ニコニコ顔で案内してくれる。私達は中に足を踏み入れ、圭吾さんはお手伝いさんと共にどこかへ行ってしまった。そりゃそうだよなあ、一緒に食事するわけないか。でも圭吾さんがいなくなると一気に心細くなるよ、あの優しさが不足してしまうからか。
「それは言えますね。舞香さんの魅力は楓さんとは真逆なところにあると思います。いいところを引き出して見せつけた方がいいです。大丈夫ですよ舞香さん、これだけ頑張り屋で凄いお人なんですから、ご両親もきっと分かってくれます」
バックミラー越しにニコリと笑ってくれた。ああ、いつでもほしい言葉をくれるのは圭吾さんだ。優しいし穏やかで、玲にはない物を全て持っている。うっとりと拝んだ。
「圭吾さんの優しさが玲にもちょっとは移りますように」
「何言ってんだ馬鹿、俺は優しいだろ」
「どこがよ、いつも散々言ってるけど玲は人としてのデリカシーと優しさが足りないよ!」
「お前には俺の良さが理解できないんだな、早くここまでステージを上がってこい」
「どこのステージよ……絶対ロクなステージじゃないじゃん……」
私たちが機嫌悪い顔で言い合っていると、圭吾さんが大声で笑った。ハンドルをしっかり両手で握ったまま、彼は非常に楽しそうに言う。
「なんだか二人とも夫婦っぽくなってきましたよね、凄くお似合いです」
「どこが!」
「なんで!」
「そういう息ピッタリなところがですよ。さ、もう少しで着きますよ」
私と玲は絶対に息ピッタリなんかではないし、あの男は相変わらず性格悪い。いつだってこっちを見下して馬鹿にしてくるんだから。
だが、ふと心の中で思い出す。私がパーティーで失敗したと思って落ち込んでるとき、一番いい女だった、って言ってくれたのは、ちょっとだけ嬉しかったしかっこよかったなあ。皆の前でもびしっと言ってくれたし、正直あれだけは見直した。
ちらりと隣を見てみる。玲は窓の外を眺めていた。そこで、大きなあくびをし眠そうにしている。私は彼の顔を覗きこんだ。
「そういえば玲、最近ちゃんと寝てる?」
「え?」
「ここ最近仕事忙しそうだよね、あまり寝てないでしょ」
あのパーティーが終わって以降、玲は仕事の繁忙期に入ったのか、夜寝る姿を見なくなった。私が先にベッドに入り、起きたときは玲はすでに起床している。私には『睡眠は美容にも頭脳にも欠かせないから早く寝ろ』と口うるさく言うくせに、当の本人は夜遅くまでパソコンを見ていたりする。
「ああ、まあ……ちょっとバタバタしててな」
「せっかくの休みなのにゆっくり出来ないしね。帰ったらゆっくりしてね」
「うん、そうする」
こういうどうでもいい会話が、どこか私たちの関係を柔らかくした証明だ。パーティーの一件以来、彼の口の悪さは変わりはしないものの、私は少し見直してしまったので、態度が柔軟になったのだ。そして玲自身も、私の救命行為に本当に感心してくれたのか、同じように変化している。
圭吾さんが言うようにお似合いだとは到底思えないが、まあよき戦友ぐらいにはなっている気がする。
玲はめちゃくちゃでデリカシーがない人間だが、ちゃんと私の味方をしてくれるし、褒めるところは褒めてくれる。
今更ながら、彼は悪い人じゃないんだな、と再確認したのだ。
あの日、汚れた私に軽蔑の眼差しを向ける事もなく、それどころか抱きかかえ、一緒になって汚れてくれた。そして私を褒めたたえてくれて、励ましてくれた。
正直なところーーあれでどれほど救われたか、分からない。
しばらく走った車は大きな門をくぐり、数台高級車が停められている駐車場に駐車された。私はドキドキしながら玲にエスコートされて降り、この日のために用意した手土産を持っていざ出陣した。圭吾さんは後ろから私に優しく励ましの言葉をかけてくれる。
緊張を必死に落ち着けながら、とにかく玲についていく。と同時に、あまりの家の大きさに圧倒された。想像以上のお家である。真っ白な外壁が眩しい。まるで城だ、と思った。
三人で玄関まで向かう。長いアプローチを通っていると、玄関の扉がガチャリと開いた。そして向こうにお手伝いさんであろう中年の女性が笑顔で顔を出した。気のよさそうな人である。
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ニコニコ顔で案内してくれる。私達は中に足を踏み入れ、圭吾さんはお手伝いさんと共にどこかへ行ってしまった。そりゃそうだよなあ、一緒に食事するわけないか。でも圭吾さんがいなくなると一気に心細くなるよ、あの優しさが不足してしまうからか。
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