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見当はずれ
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「確かに怖い思いもしました。でも、柊一さんや暁人さんが必死に守ってくれたし」
「守り切れてないときもあったよ」
「でも気遣ってずっとそばにいてくれました。それに、昨日も言ったけど、柊一さんがあの悪霊を食べてくれなかったら、西雄さんはずっと囚われたままだったんですよ。私はそれに感動したんです。やりがいがある仕事だなって思えたんです」
そう説明したはずなのに、彼の中では納得しきれていないようだった。だから、再度同じことを言う。私の意思は変わってません、と伝えるために。
上手く説明できないけれど、柊一さんの心の奥底には、何か漠然とした不安があるようだ。一見悩みなんてなさそうなのに、時々感じる影は、こういうところから醸し出されているのだろうか。
しばらく沈黙が流れる。気まずくなり、私は冗談っぽく付け加えた。
「あとほら、今失職中だから、謝礼もありがたいですしね! 私にもメリットはあるんですから!」
笑って言ってみたのだが、彼は笑わなかった。そのままじっと私を見つめている。瞳の奥に、何か深い感情が渦巻いているように見えた。
「……そっか」
ポツリと柊一さんが言う。もう一つのおにぎりを手に持ち、食べながら私に言う。
「そこまで言ってくれるなら、お願いしよう。でも、嫌になったらいつでもやめて大丈夫。ほら、就職が決まったら忙しくなるだろうしね」
「あ、まあ確かに……そうしたら、また柊一さんが大変になりませんか? 浄化できる人間を他にも探した方がいいのでは」
「かなり希少な人だし、どう探していいのか分かんないんだよね。ほら、遥さんも自分の能力に無自覚だったでしょ? そんな人が多いんだ」
「あーそうか」
黒いモヤが見える自覚はあったけど、閉じ込めたそれを浄化する能力は自分でも知らなかったもんなあ。探そうと思っても中々難しい能力だろう。
柊一さんはおにぎりを全部頬張り、頷きながら答える。
「まあその時はその時だよ、回数こなして鍛えれば、僕ももっと平気になるからね」
「そうですか……あまり無理はしないでくださいね……」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず再就職先が見つかるまでよろしくね」
にこりと笑ってくれるのを見て、また心臓がきゅっと握られる。本当に不思議な人だなあ、可愛いし色っぽいし、儚いし天然なんだよ。
ドキドキしたのを隠すように私はパスタを頬張りながら言う。
「い、いえ、むしろせっかくの二人の調査を邪魔してしまうのは申し訳ありませんが……!」
「え? 何が?」
「柊一さんと暁人さんです! 邪魔者が入り込んじゃうのはごめんなさいって」
「なんで邪魔者??」
「いや、だって、二人はあの……恋愛関係がありますよね?」
ついに、核心に触れた。でも、一緒に働いていくというのならすっきりさせておきたい。その方が、向こうだって気兼ねなくいちゃいちゃ出来るではないか。そして私はその光景を愛でて楽しむ……というわけである。
ところが、柊一さんは目玉がこぼれそうなほど目を見開いた。そして間があったあと、部屋中に響き渡るほどの大声で笑いだしたのだ。
「あははは! ぼ、僕と暁人が? つ、付き合ってるって? ちょっと待っ、ごめん、おもしろすぎ、ぶは、あははは!」
きょとんとしてしまった。だって、あの様子は間違いないと思ってた。柊一さんの好みや性格を分かり切っててお世話してる感じ。言葉なくても通じ合ってるもん、あんなの普通の男同士の友情じゃ無理だよ。
ひとしきり笑った後、柊一さんは笑ったことで目に浮かんだ涙を拭きながら、きっぱり否定する。
「僕も暁人もそんな気持ち全くないから。そっかあ、たまに不思議に思ってた遥さんの言動、そんな勘違いがあったからなのか。なるほどねえ」
「違うんですか? だって、あんなに仲良くて?」
「違う違う。まあ、普通の友達ではないかも。僕らは兄弟みたいなもんなんだよ」
「幼馴染、って感じですか?」
私が尋ねると、彼は説明に困ったように頭を掻いた。
「まあそうだね。幼い頃から知ってるし、ずっと一緒だったんだよ。性格も、適当な僕と比べて、暁人はしっかり者で世話焼きだからね、合ってたのかも」
「お友達だったんですか……私てっきり」
そういう関係かと思い込んでいたし、むしろこんな素敵な二人が結ばれているなら、私は心の底から推そうって思っていたのに。見当外れだったようだ。
「守り切れてないときもあったよ」
「でも気遣ってずっとそばにいてくれました。それに、昨日も言ったけど、柊一さんがあの悪霊を食べてくれなかったら、西雄さんはずっと囚われたままだったんですよ。私はそれに感動したんです。やりがいがある仕事だなって思えたんです」
そう説明したはずなのに、彼の中では納得しきれていないようだった。だから、再度同じことを言う。私の意思は変わってません、と伝えるために。
上手く説明できないけれど、柊一さんの心の奥底には、何か漠然とした不安があるようだ。一見悩みなんてなさそうなのに、時々感じる影は、こういうところから醸し出されているのだろうか。
しばらく沈黙が流れる。気まずくなり、私は冗談っぽく付け加えた。
「あとほら、今失職中だから、謝礼もありがたいですしね! 私にもメリットはあるんですから!」
笑って言ってみたのだが、彼は笑わなかった。そのままじっと私を見つめている。瞳の奥に、何か深い感情が渦巻いているように見えた。
「……そっか」
ポツリと柊一さんが言う。もう一つのおにぎりを手に持ち、食べながら私に言う。
「そこまで言ってくれるなら、お願いしよう。でも、嫌になったらいつでもやめて大丈夫。ほら、就職が決まったら忙しくなるだろうしね」
「あ、まあ確かに……そうしたら、また柊一さんが大変になりませんか? 浄化できる人間を他にも探した方がいいのでは」
「かなり希少な人だし、どう探していいのか分かんないんだよね。ほら、遥さんも自分の能力に無自覚だったでしょ? そんな人が多いんだ」
「あーそうか」
黒いモヤが見える自覚はあったけど、閉じ込めたそれを浄化する能力は自分でも知らなかったもんなあ。探そうと思っても中々難しい能力だろう。
柊一さんはおにぎりを全部頬張り、頷きながら答える。
「まあその時はその時だよ、回数こなして鍛えれば、僕ももっと平気になるからね」
「そうですか……あまり無理はしないでくださいね……」
「ありがとう。じゃあ、とりあえず再就職先が見つかるまでよろしくね」
にこりと笑ってくれるのを見て、また心臓がきゅっと握られる。本当に不思議な人だなあ、可愛いし色っぽいし、儚いし天然なんだよ。
ドキドキしたのを隠すように私はパスタを頬張りながら言う。
「い、いえ、むしろせっかくの二人の調査を邪魔してしまうのは申し訳ありませんが……!」
「え? 何が?」
「柊一さんと暁人さんです! 邪魔者が入り込んじゃうのはごめんなさいって」
「なんで邪魔者??」
「いや、だって、二人はあの……恋愛関係がありますよね?」
ついに、核心に触れた。でも、一緒に働いていくというのならすっきりさせておきたい。その方が、向こうだって気兼ねなくいちゃいちゃ出来るではないか。そして私はその光景を愛でて楽しむ……というわけである。
ところが、柊一さんは目玉がこぼれそうなほど目を見開いた。そして間があったあと、部屋中に響き渡るほどの大声で笑いだしたのだ。
「あははは! ぼ、僕と暁人が? つ、付き合ってるって? ちょっと待っ、ごめん、おもしろすぎ、ぶは、あははは!」
きょとんとしてしまった。だって、あの様子は間違いないと思ってた。柊一さんの好みや性格を分かり切っててお世話してる感じ。言葉なくても通じ合ってるもん、あんなの普通の男同士の友情じゃ無理だよ。
ひとしきり笑った後、柊一さんは笑ったことで目に浮かんだ涙を拭きながら、きっぱり否定する。
「僕も暁人もそんな気持ち全くないから。そっかあ、たまに不思議に思ってた遥さんの言動、そんな勘違いがあったからなのか。なるほどねえ」
「違うんですか? だって、あんなに仲良くて?」
「違う違う。まあ、普通の友達ではないかも。僕らは兄弟みたいなもんなんだよ」
「幼馴染、って感じですか?」
私が尋ねると、彼は説明に困ったように頭を掻いた。
「まあそうだね。幼い頃から知ってるし、ずっと一緒だったんだよ。性格も、適当な僕と比べて、暁人はしっかり者で世話焼きだからね、合ってたのかも」
「お友達だったんですか……私てっきり」
そういう関係かと思い込んでいたし、むしろこんな素敵な二人が結ばれているなら、私は心の底から推そうって思っていたのに。見当外れだったようだ。
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