みえる彼らと浄化係

橘しづき

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みえてる?

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 かちゃりと開き、顔を出してみる。隣の家の前に、二人の男性がいた。やはり、一人はぐったりしたままもう片方の人に体を支えられており、意識がないように見えた。黒いパーカーのフードを深く被っており、ああ、介抱されている方がお隣さんか、と瞬時に分かった。

 だが同時に、私は息を呑んだ。

 先日見た時より、さらに濃いもやたちが二人を包んでいたからだ。

 だがよく見てみると、もやはフードの男性の方にまとわりついているようだった。それを支えるもう一人は、短髪の黒髪で、キリっとした表情をした男性だ。必死にポケットの中を探している。スマホを取り出そうとしているのだろうか。

 二人を覆いつくすほどの黒。これほど凄いのは見たことがない。明らかに、以前見た時よりも酷くなっている。

 私はあまりの驚きに、つい声を出してしまった。

「あの、大丈夫ですか!?」

 ぎょっとしたように短髪の男性が私を見た。でもすぐに、早口で返事を返す。

「ああ、すみません、騒がしくして」

「家に入れないんですか?」

「ちょっと鍵を落としまして」

 私はそのまま外へ飛び出した。そして近づき、改めてぐったりしている方の男性を見る。酔っ払いかと思い込んでいたが、アルコールの匂いなんてちっともしなかった。

「体調悪いんですか?」

「ああ、えっと、少し休めばよくなるんで……」

「よければ一度うちに入ってください! 横にしてあげた方がよくないですか?」

 もやが怖いとか言っている場合ではなかった。これほど蝕まれていては、この人の生命すら心配になる。早く休ませてあげた方がいいと思った。

 だが短髪の男性は首を振る。

「ご親切にどうも。でも大丈夫なので」

「でもだって、こんなに包まれているのに」

 ついそう口走った瞬間、相手が停止した。目を丸くして私を見ている。
 
 その間も、フードの男性はびくともしない。死んでないか心配になるほどだ。

「……見えてる?」

 短髪の男性が呟く。そんな質問にも私は答えず、とにかくフードの方が心配で、全身を観察する。息はしている……ように見えるけど、どうなのだろう。ぶらりと垂れ下がった腕に、つい手を伸ばした。

「あ! 触っちゃだめだ!」

 厳しい声で短髪の人がそう言ったけれど、すでに触れてしまった後だった。ひんやりとした肌を両手で包み、とりあえず脈をみてみる。うん、よかった、ちゃんと脈はあるみたいだ。ほっと胸を撫でおろした。

 そんな私を、唖然として短髪の男性が見ている。言葉を失ったかのように、ただひたすら驚愕の表情で私を見ていた。
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