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一章
嘘つき
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巣作りとは簡単に言うとオメガが発情期にアルファの匂いを求めて衣類などを収集することだ。なので、発情期が来ない俺にとっては縁もゆかりも無い話である。
王子はお手洗いに行く、と部屋を出た。耳まで真っ赤にしていたので子供みたいだなと思いながら後ろ姿を眺めていた。
部屋が静まり返り暇になってしまった俺はベッドに倒れ込む。布団に顔を押し付け思いっきり息を吸う。変態だとかは置いといて、布団からは柔軟剤の匂いがした。アルファの匂いがするかとも思ったがやはりそんなことはない。
「なんでオメガって分かったんだろ・・・」
思わず口から出た言葉が部屋に消えていく。ミラ王子は匂いがしないって言ってたし、俺もアルファの匂いはわからない。俺が特異体質だからわからないだけで実は運命の番、とか?いや、だとしたらカイル王子があそこまで冷静なのはおかしい。うーん、わからん
「・・・・」
「ん?」
廊下から話し声が聞こえてくる。好奇心からドアに耳を当てる。
「だからぁ!兄貴の婚約者はベータだっつってんだろ!」
「そんなわけないじゃないですか!」
「と、とにかく!2人とも落ち着いて!」
ミラ王子とカイル王子の言い争う声が聞こえる。ミラ王子の発言を聞く限り俺の事で揉めているようだった。
「騙されてんだよ!いい加減目覚ませ!」
「ダンが僕のこと騙すわけないじゃないですか!」
カイル王子には申し訳ないけど騙すことは多分あるよ・・・収集が付かなそうだし、俺の事のようなので俺も廊下に出た。
「あ!いた!コイツだよ!嘘つき!」
「ダンは嘘なんかつかないって言ってるじゃないですか!」
「落ち着いてー!」
ミラ王子は俺を見るや否や突っかかってきた。廊下にはミラ王子とカイル王子、それから前のパーティーで会った少年がいた。
廊下だと色んな人の視線を集めているのでカイル王子の部屋で話すことになった。
「また会ったね!僕、ノエル・アルルカンだよ!ミラきゅんの番候補だよ!」
向かいに座った少年はそう名乗った。気性の荒いミラ王子をきゅん呼びとは中々勇気がある。
「番候補じゃなくて、恋人だろ」
「あれー?そうだったかな?」
「そうだよ」
ミラ王子が顔を赤くするのと対照的にノエル様はきょとんとしていた。
「その・・・ミラ王子は婚約者様がいらっしゃらないのですか?」
「あ?いるに決まってんだろ」
「それなのに恋人と言うのは・・・」
「婚約者は婚約者で別に好きなやついるからいーんだよ。俺は俺でノエルがす、好きだし・・・」
ミラ王子は口篭りながら言う。こんな顔をする人だなんて思わなかった。ましてや、一国の王子が仮面夫婦だなんて信じられない・・・
「君は・・・え~と、ジョン・ルーシャだったかな?あれ?でも、ダンって呼ばれてたからー?ん~?」
ノエル様は顎に手を当てて首を傾げた。何とも愛らしいお姿だった。
「あ、ダン・ベルサリオです。あの時は訳あって偽名使ってたんです・・・」
「そうだったんだー!僕びっくり!仲良くしてね!僕オメガの友達っていないから嬉しいな!」
「あ、俺もです!」
ノエル様が出した手を握る。すると、ミラ王子が分かりやすく不機嫌になったので早急に手を離す。そもそも、オメガと会うのは初めてに近い。それに、数える程しかいない友達になってくれるなんてこの上なく嬉しかった。
王子はお手洗いに行く、と部屋を出た。耳まで真っ赤にしていたので子供みたいだなと思いながら後ろ姿を眺めていた。
部屋が静まり返り暇になってしまった俺はベッドに倒れ込む。布団に顔を押し付け思いっきり息を吸う。変態だとかは置いといて、布団からは柔軟剤の匂いがした。アルファの匂いがするかとも思ったがやはりそんなことはない。
「なんでオメガって分かったんだろ・・・」
思わず口から出た言葉が部屋に消えていく。ミラ王子は匂いがしないって言ってたし、俺もアルファの匂いはわからない。俺が特異体質だからわからないだけで実は運命の番、とか?いや、だとしたらカイル王子があそこまで冷静なのはおかしい。うーん、わからん
「・・・・」
「ん?」
廊下から話し声が聞こえてくる。好奇心からドアに耳を当てる。
「だからぁ!兄貴の婚約者はベータだっつってんだろ!」
「そんなわけないじゃないですか!」
「と、とにかく!2人とも落ち着いて!」
ミラ王子とカイル王子の言い争う声が聞こえる。ミラ王子の発言を聞く限り俺の事で揉めているようだった。
「騙されてんだよ!いい加減目覚ませ!」
「ダンが僕のこと騙すわけないじゃないですか!」
カイル王子には申し訳ないけど騙すことは多分あるよ・・・収集が付かなそうだし、俺の事のようなので俺も廊下に出た。
「あ!いた!コイツだよ!嘘つき!」
「ダンは嘘なんかつかないって言ってるじゃないですか!」
「落ち着いてー!」
ミラ王子は俺を見るや否や突っかかってきた。廊下にはミラ王子とカイル王子、それから前のパーティーで会った少年がいた。
廊下だと色んな人の視線を集めているのでカイル王子の部屋で話すことになった。
「また会ったね!僕、ノエル・アルルカンだよ!ミラきゅんの番候補だよ!」
向かいに座った少年はそう名乗った。気性の荒いミラ王子をきゅん呼びとは中々勇気がある。
「番候補じゃなくて、恋人だろ」
「あれー?そうだったかな?」
「そうだよ」
ミラ王子が顔を赤くするのと対照的にノエル様はきょとんとしていた。
「その・・・ミラ王子は婚約者様がいらっしゃらないのですか?」
「あ?いるに決まってんだろ」
「それなのに恋人と言うのは・・・」
「婚約者は婚約者で別に好きなやついるからいーんだよ。俺は俺でノエルがす、好きだし・・・」
ミラ王子は口篭りながら言う。こんな顔をする人だなんて思わなかった。ましてや、一国の王子が仮面夫婦だなんて信じられない・・・
「君は・・・え~と、ジョン・ルーシャだったかな?あれ?でも、ダンって呼ばれてたからー?ん~?」
ノエル様は顎に手を当てて首を傾げた。何とも愛らしいお姿だった。
「あ、ダン・ベルサリオです。あの時は訳あって偽名使ってたんです・・・」
「そうだったんだー!僕びっくり!仲良くしてね!僕オメガの友達っていないから嬉しいな!」
「あ、俺もです!」
ノエル様が出した手を握る。すると、ミラ王子が分かりやすく不機嫌になったので早急に手を離す。そもそも、オメガと会うのは初めてに近い。それに、数える程しかいない友達になってくれるなんてこの上なく嬉しかった。
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