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一章
巣作り
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王子は俺のためなら地位も名誉も捨てると言っていたが、そんなこと絶対にあってはいけない。この国の未来を担う王子が、未来がある王子が1人のオメガのために捨てるなんて馬鹿なことだ。
俺の我儘を言うと、俺はカイル王子には王様になって欲しい。王子ならオメガへの差別や扱い方を変えてくれる気がするから。王子ならそれができる。カイル王子にしかできない事だと思うから。
勝手に家の中に入られるのは怖いので鍵を渡すことにした。家族以外に鍵を渡すのなんて初めてだった。
「ありがとうございます!実質半同棲ですね!あ、そうだ!僕の家の鍵もあげます!」
と、簡単に渡そうとしていたがさすがに断っておいた。俺が持っていて無くしたりしたら責任が取れない。
「じゃぁ、今から僕の家に来ませんか?そうだ!それがいいですよ!その間にガラスも直しておくので!ね!決まりです」
王子は強引に話を進めると嫌がる俺に「念の為」と言いながらカラーをつけた。不貞腐れた俺はされるがままに馬車に乗った。
約一時間ほど馬車に揺られ、到着したのは街の中心にあるお城の門前だった。門番さんが家紋の入った馬車を見て門を開けた。とてつもなく大きい門が音を立てて開く。馬車は優雅に中に入っていった。
馬車を降り、王子が「とりあえず僕の部屋に案内します」と言ってくれた。部屋に向かう途中、かなりの人数とすれ違ったがやけに視線を感じた。
服はみすぼらしいのに一人前にカラーを付けている人が王子と一緒に城の中にいるのだから視線を向けるのもわからなくはない。
「ここが、僕の部屋です。狭いですけどくつろいでください」
王子がそう言って招き入れた部屋は俺の部屋の10倍は軽くあった。それなのに狭いと言うのは謙遜なのか、嫌味なのか。
だだっ広い部屋には家具はあったがどこか生活感がなく、手持ち無沙汰となった俺はベッドに腰をかけた。身体が沈み込む。俺の部屋とは大違いだ。
「あ、僕の服何着か持って帰りますか?巣作りに使っていいですよ」
「作りませんよ」
王子はクローゼットから服を何着か出し、机に並べた。どれもこれも俺でも知ってるブランドのものだった。
「あんまり高いのはあれですけど、この辺の服ならいいですよ」
有名ブランドなのに高くないってなんですか。もっと高い服があるんですか・・・なんなら一着くらい貰って帰ろうかな。せっかくのブランド物だし家で着ようか・・・
「じゃあ、これもらいますね」
「あ・・・・はい」
適当にロングコートをとった。ちょっと大きいかもしれないけど着れないことはないだろう。しかし、王子は戸惑ったような表情をしていた。
「え、何かダメとかありますか?」
「い、いや、その本当に貰ってくれると思わなかったので・・・」
カイル王子が顔を赤くするのにつられて顔を赤くする。
「べ、別に巣作り用じゃないですからね!ただ、普通に着ようと思っただけですからね!」
と言うと「はいはい」とわかってますからね、みたいな言い方をされた。本当に違うってば!
俺の我儘を言うと、俺はカイル王子には王様になって欲しい。王子ならオメガへの差別や扱い方を変えてくれる気がするから。王子ならそれができる。カイル王子にしかできない事だと思うから。
勝手に家の中に入られるのは怖いので鍵を渡すことにした。家族以外に鍵を渡すのなんて初めてだった。
「ありがとうございます!実質半同棲ですね!あ、そうだ!僕の家の鍵もあげます!」
と、簡単に渡そうとしていたがさすがに断っておいた。俺が持っていて無くしたりしたら責任が取れない。
「じゃぁ、今から僕の家に来ませんか?そうだ!それがいいですよ!その間にガラスも直しておくので!ね!決まりです」
王子は強引に話を進めると嫌がる俺に「念の為」と言いながらカラーをつけた。不貞腐れた俺はされるがままに馬車に乗った。
約一時間ほど馬車に揺られ、到着したのは街の中心にあるお城の門前だった。門番さんが家紋の入った馬車を見て門を開けた。とてつもなく大きい門が音を立てて開く。馬車は優雅に中に入っていった。
馬車を降り、王子が「とりあえず僕の部屋に案内します」と言ってくれた。部屋に向かう途中、かなりの人数とすれ違ったがやけに視線を感じた。
服はみすぼらしいのに一人前にカラーを付けている人が王子と一緒に城の中にいるのだから視線を向けるのもわからなくはない。
「ここが、僕の部屋です。狭いですけどくつろいでください」
王子がそう言って招き入れた部屋は俺の部屋の10倍は軽くあった。それなのに狭いと言うのは謙遜なのか、嫌味なのか。
だだっ広い部屋には家具はあったがどこか生活感がなく、手持ち無沙汰となった俺はベッドに腰をかけた。身体が沈み込む。俺の部屋とは大違いだ。
「あ、僕の服何着か持って帰りますか?巣作りに使っていいですよ」
「作りませんよ」
王子はクローゼットから服を何着か出し、机に並べた。どれもこれも俺でも知ってるブランドのものだった。
「あんまり高いのはあれですけど、この辺の服ならいいですよ」
有名ブランドなのに高くないってなんですか。もっと高い服があるんですか・・・なんなら一着くらい貰って帰ろうかな。せっかくのブランド物だし家で着ようか・・・
「じゃあ、これもらいますね」
「あ・・・・はい」
適当にロングコートをとった。ちょっと大きいかもしれないけど着れないことはないだろう。しかし、王子は戸惑ったような表情をしていた。
「え、何かダメとかありますか?」
「い、いや、その本当に貰ってくれると思わなかったので・・・」
カイル王子が顔を赤くするのにつられて顔を赤くする。
「べ、別に巣作り用じゃないですからね!ただ、普通に着ようと思っただけですからね!」
と言うと「はいはい」とわかってますからね、みたいな言い方をされた。本当に違うってば!
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