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一章

カラー

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 番の成立にはオメガの発情期期間内の行為中にうなじを噛むことが必要だった。噛まれることによってオメガは番以外のアルファとまぐわうことが難しくなる。

 番契約の解消はオメガ側からする事は出来ないため、番にされてしまえば奴隷のようなものだった。その一方で、アルファからの番解消は可能である。番が解消されたオメガは精神的なストレスを伴い、もう一度別の人と番になることは不可能となる。しかし、発情期は来るので捨てられたオメガはおもちゃにされるか廃人になるかの二択であった。

 山の麓まで、カラーを隠すために山に入る時の服装で降りていった。馬車には相変わらず王族の家紋が刻印されていたし、中からはいかにも屈強そうな人が出てきた。

 よく考えたら、服は山に入る用、仕事の時用、寝るとき用の三種類しか持っていなかった。その事を昨晩王子に告げると、「迎えの者にお金を渡しておくので買ってから来てください」と言われた。

 薄々勘づいてはいたが、案内されたのは俺でも知ってるような超有名ブランド店だった。ジャケットだけで、俺が半年かけて稼ぐ値段が表示されていた。

 あまりに未知の世界だったので、店員さんに一番安いセットアップを頼むと馬車に乗っていた護衛さんと思われる人が「いけません」と口にしたのでなすがままにされるがままに服を買った。正確には買ってもらっただけれど。

 試着室を借りて着替えると店員さんは目をパチクリとさせていた。それもそうだ、いかにも田舎者の男が王族の家紋のカラーをつけているのだから。しかし、数秒後には

「失礼致しました」

 と言っていたのでプロだなぁと思わず関心してしまう。

 無事に着替えを済ませ、このまま会場に行くのかと思いきや今度は高級そうな理髪店に案内された。いや、理髪店より美容院の表現の方が正しいのだが。

 人に数年ぶりに髪を切ってもらうのは何処かこそばゆい感じがした。美容師さんが、カラーの家紋を見て「え?この男が?」と言わんばかりに俺の顔を何度も見るので愛想笑いで返事をしておく。

 そんなこんなで見かけだけは一流になった俺はようやくパーティー会場へと到着した。馬車から降りると白い衣装に身を包んだカイル王子が出迎えてくれた。「いつにも増して素敵ですよ」と言うので「お世辞は大丈夫ですよ」と返すと「お世辞じゃないのに」と頬を膨らませていた。

「俺を番になる人だって紹介してもいいですけど、それで国に保護されたりはしませんよね?」

「それは大丈夫ですよ。第一王子たる、僕の伴侶ですので」

 カイル王子は誇らしげに笑った。番にはなるけど伴侶になると言った覚えはないのだけれど・・・

 手を引かれるがままに、会場に入る。会場には豪華なシャンデリアが吊り下がっていたり、理解し難い彫刻が置いてある。王子が入るとそれまで会話や食事に夢中だった人の手が止まり、すぐさまどよめきに変わった。俺は首元を隠すように襟を引っ張った。
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