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一章
事件発生
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カイル王子が居なくなって数週間。すっかり元の生活が戻ってきた。いつも通り、平穏な日々。何の新鮮味もない日々。可もなく不可もない日々だったが満足している。
俺は本来、この生活が続くことを願っていたんだ。これでいいんだ
最近は栗のレシピを日々考案して、優しい常連さんに囲まれて。充実した素晴らしい日々だ。
「おう!元気にしてるか!」
「ジルさん!って昨日も来てたじゃないですか」
ジルさんは「ははっそうだな」と言うといつもの席に腰をかけた。最近はロールケーキを気に入ったらしくもっぱらそればかり食べている。
「そういえば、王宮の方は今大変らしい。なんでも第一王子が倒れたとか」
「えっ」
心臓が速くなる。
カイルが・・・・?いや、俺には関係ない話だ・・・・
「栄養失調に加えて過労らしい。それだけじゃない。第一王子の婚約者の席が開いてるとかで付け入ろうとした貴族からの貢物で溢れかえってるらしい」
栄養失調・・・俺とのことが関係しているのだろうか。いや、そんな訳ない・・・・・だってもうあれから何週間も経ってるし・・・・
「栄養失調って・・・・なんで・・・」
「さぁな。そこまでは知らん」
ジルさんは大きな口でロールケーキを食べた。心臓の鼓動がより一層速くなる。
何も食べてないのか・・・・?休めてないのか・・・?違う・・・こんな風になって欲しかったんじゃない・・・・俺は幸せになって欲しくて・・・・
胸が締め付けられる。
「ジルさんすみません。今日早めにお店閉めます」
「お、おう」
俺の珍しい真剣な声色に戸惑っていた。俺も今更こんなことを言うなんてと内心呆れている。
ジルさんが帰って直ぐに休業の看板を出した。
カイルに貰った正装にカイルに貰ったロングコートを羽織る。それに安物のカバンを掛けて中にサンドイッチを入れる。カラーは最後まで迷いカバンの中に入れた。
生憎、贅沢をできるような生活状況では無いので俺は徒歩で王宮へ向かい、着く頃にはすっかり日が落ち始めていた。大きな門は前に来た時とは違い威圧感が増した気がする。
そこである事に気がついた。ノープランで出て来たので中に入る方法を考えていない。門の近くで待機している騎士の男性に声をかけることにした。
「中に入りたいんですけど・・・」
「なんの御用でしょうか」
「えっと、カイル王子のお見舞いに参りました」
「すみませんが、一般の方の入場は御遠慮頂いています」
男性は俺を鋭く睨んだ。確実に怪しまれていた。そりゃ夜に服だけ一流の得体の知れない男が「中に入れろ!」なんて言ってたら誰でも怪しむと思う。
「・・・・俺はカイル王子の婚約者です」
男性は一瞬目を見開いたが直ぐに馬鹿にするように笑った。
「いいですか、カイル王子に婚約者はいないんです。つくならもっとマシな嘘に・・・・」
俺がカバンからカラーを取り出すと「失礼しました」と言って何処かに電話をかけ始めた。
数分待つと俺の何倍も大きい門が動き始めた。中に入れる頃にはすっかり暗くなっていた。
俺は本来、この生活が続くことを願っていたんだ。これでいいんだ
最近は栗のレシピを日々考案して、優しい常連さんに囲まれて。充実した素晴らしい日々だ。
「おう!元気にしてるか!」
「ジルさん!って昨日も来てたじゃないですか」
ジルさんは「ははっそうだな」と言うといつもの席に腰をかけた。最近はロールケーキを気に入ったらしくもっぱらそればかり食べている。
「そういえば、王宮の方は今大変らしい。なんでも第一王子が倒れたとか」
「えっ」
心臓が速くなる。
カイルが・・・・?いや、俺には関係ない話だ・・・・
「栄養失調に加えて過労らしい。それだけじゃない。第一王子の婚約者の席が開いてるとかで付け入ろうとした貴族からの貢物で溢れかえってるらしい」
栄養失調・・・俺とのことが関係しているのだろうか。いや、そんな訳ない・・・・・だってもうあれから何週間も経ってるし・・・・
「栄養失調って・・・・なんで・・・」
「さぁな。そこまでは知らん」
ジルさんは大きな口でロールケーキを食べた。心臓の鼓動がより一層速くなる。
何も食べてないのか・・・・?休めてないのか・・・?違う・・・こんな風になって欲しかったんじゃない・・・・俺は幸せになって欲しくて・・・・
胸が締め付けられる。
「ジルさんすみません。今日早めにお店閉めます」
「お、おう」
俺の珍しい真剣な声色に戸惑っていた。俺も今更こんなことを言うなんてと内心呆れている。
ジルさんが帰って直ぐに休業の看板を出した。
カイルに貰った正装にカイルに貰ったロングコートを羽織る。それに安物のカバンを掛けて中にサンドイッチを入れる。カラーは最後まで迷いカバンの中に入れた。
生憎、贅沢をできるような生活状況では無いので俺は徒歩で王宮へ向かい、着く頃にはすっかり日が落ち始めていた。大きな門は前に来た時とは違い威圧感が増した気がする。
そこである事に気がついた。ノープランで出て来たので中に入る方法を考えていない。門の近くで待機している騎士の男性に声をかけることにした。
「中に入りたいんですけど・・・」
「なんの御用でしょうか」
「えっと、カイル王子のお見舞いに参りました」
「すみませんが、一般の方の入場は御遠慮頂いています」
男性は俺を鋭く睨んだ。確実に怪しまれていた。そりゃ夜に服だけ一流の得体の知れない男が「中に入れろ!」なんて言ってたら誰でも怪しむと思う。
「・・・・俺はカイル王子の婚約者です」
男性は一瞬目を見開いたが直ぐに馬鹿にするように笑った。
「いいですか、カイル王子に婚約者はいないんです。つくならもっとマシな嘘に・・・・」
俺がカバンからカラーを取り出すと「失礼しました」と言って何処かに電話をかけ始めた。
数分待つと俺の何倍も大きい門が動き始めた。中に入れる頃にはすっかり暗くなっていた。
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