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一章

友人として

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 念の為に言っておくが、別にカイルに恋愛感情があるとかじゃない。断じてだ。だから俺が珍しく街に来てるのは別に王位継承権争いが気になったからとかではない。

 時刻はお昼時。街は賑やかで活気に満ちていた。八百屋の前を通ると見たことも無い果物がずらりと並んでいる。

 た、食べたい!!!どんな味がするんだろう…ジャムとか作ったら美味しいのかな……

「おっいらっしゃい!安いよ安いよ!」

 物珍しさに凝視していると店員さんにロックオンされてしまった。

「兄ちゃんかっこいいね。安くしとくよ?」

「あっ、えっと……じゃ、じゃあこれください!」

 普段慣れ親しんだ人としか話さない影響から挙動不審に陥り、適当に赤黒い物体を掴む。

「お!兄ちゃんチャレンジャーだね!まいどあり!」

 お金を渡し、その場を離れる。国章の入った服を着ている人を視界が捉えた。九割九分俺がオメガであるとバレることは無いが瞬発的に隠れてしまう。

 路地に入り一息付く。さっき買った赤黒い何かを一かじり。その瞬間口に信じられない痛みが走った。

 か、辛い!それもかなり!

「大丈夫ですか?」

 人気のない路地裏で辛味に悶えていると女性の声がした。

「水を飲んでください」

 受け取ろうと顔を上げたらそこには見覚えのある顔があった。不敵な笑みを浮かべたローラ嬢だ。

「な・・・なんで、ここに・・・?」

 心臓が早くなる。息が上手く吸えなくなっていく。いつかのパーティーの記憶がつい昨日のことかのように脳内を駆け巡る。

「えぇ、なに、偶然ですよ。偶然。そうだ、ここで出会ったのも何かの縁ですし今度私が開くパーティーにいらっしゃらない?」

「お、俺は・・・」

「まさか、オメガの分際で断りませんよね?」

 断ろうとする俺を遮り、相変わらず不敵な笑みを浮かべたローラ嬢がそう言う。そして、「そこの衛兵さんに貴族の元から逃げ出したオメガがいるって教えて差し上げてもいいのよ」と耳打ちしてきた。

「ぜ、是非行かせていただきます」

 至極当然だが、声が震えていた。

 満足気な顔をしてローラ嬢は去って行った。果たして本当に偶然なのだろうか

 ローラ嬢がその場を離れた後緊張が一気に溶けた俺はその場に座り込んでしまった。心臓の鼓動は早いままだ。

 嫌だ。行きたくない。もう、あんな思いをしたくない

 ローラ嬢の付き人から渡された招待状を胸に抱いて考える。

 もし俺が行かなかったりしたら、カイル様の名に傷が付いたりするのだろうか。俺程度でも傷をつけれる存在なのだろうか。足枷にはなりたくない。たとえどんな重さだったとしても
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