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一章

婚約者到来

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 第一王子とは当然順当に行けば国王になるわけである。よく、王になりたいが故に争いが起きて王子が怪我をするなんて話を聞いたことがある。それに、派閥が出来てしまい、派閥同士の衝突も聞いたことがあった。

 恐らくカイル王子は何事もなければ国王になる。王子なら国を納められるだろうし、それだけの器を持っている人だ。しかし、俺と結婚することは何事に当たってしまう。何の変哲もない俺がどうして巻き込まれなければならないのだろうと、思わなくもないがオメガである時点で普通じゃないよと言われたら反論しようがないのは事実だった。


 俺と王子が喋っているとチラチラとこちらを見てくる女性がいた。俺は今気づいたが王子はとっくに気づいていたのだろう。俺がどうぞ、と手振りすると王子は仕方ないと言わんばかりに女性に話しかけに言った。

 意外と紳士なんだな。これは女性が放って置かないのも納得できる。まぁ、王子という身分ありきで好きな女性が大半なのかもしれないけど・・・・

「少しいいかしら」

 そう言って近づいてきたのはローラ嬢と取り巻きの人達だった。ローラ嬢は俺と横並びに立った。俺は慌ててカイル王子を探したがなにせ凄い人の量なので見つかりそうになかった。

「はい」

「・・・単刀直入に言うと、カイル様と別れてくださらない?私は小さい頃からあのお方と結婚するために育てられてきたの。それなのに貴方みたいなぽっと出の、しかもオメガに取られたとあっては私も内心穏やかじゃないの」

 なるほどそういう方も居るのかと感心してしまう。おそらく、あまり強くない貴族だけど王族を親族にすることで権力を拡大としようとしている。といったところかな

「俺に言われても困りますよ。婚約を進めたのはカイル王子なので」

「オメガのくせに何がいいのかしら?あぁ、失礼オメガのいい所なんて身体以外にありませんでしたね」

 ローラ嬢はくすくすと、笑ってみせた。そして、わざとらしくお菓子を口に運んだ。俺も食べたかったなと思いながらローラ嬢を眺めた。

「それに、一人前に王族のカラーなんかつけちゃって笑わせてくれるわ。そんなものがなければ適当なアルファに無理やり犯させて噛ませたのに」

 心臓がドキリとした。『無理やり犯させて』その言葉に吐き気を催す。自分自身をオメガとして扱われるのが嫌で、見下されるのが怖くて、物として扱われるのが怖くて、偽ってきたというのに・・・

「どうせ、カイル様も身体で誘惑したんでしょう?そうでもなければ、あのお方が貴方を選ぶはずがありませんもの。なに、貴方のことを責めているわけではありませんわ。オメガなんてそれが宿命ですから仕方ありませんよね」

 ローラ嬢はまたクスクスと笑った。言葉一つ一つが俺の身体を刺す。宿命だなんて、そんなはずはない・・・・そんなはずは・・・

 そんなことを考えていると胃から込み上げるものがあった。

「う、うぇぇぇ」

 ビチャビチャという音と共にどよめきが聞こえてくる。立っているのもままならなくてその場にへたれこむ。

「あぁ、汚い。これだから、下賎の者は嫌だ。だれか、掃除してくれるかしら」

「すまない。通してくれ」

 どよめきが大きくなる中、カイル王子の声聞こえる。

「ダン!!!」

 俺の意識はそこで途絶えた。
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