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1.望まれぬ婚姻
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「止めろ!」
男の拳とアリアの間に滑り込む影があった。
「レオンさん!?」
大の男の力で頬を打たれ、レオナルドはその場に踏み留まれずに足をもつれさせてしまった。
咄嗟に腕を伸ばしたアリアに抱かれるようにして、二人で盛大に倒れ込む。
助けるつもりが庇われてしまうなんて、男として情けない。そう思うレオナルドであったが、今はそのようなことを考えるときではない。
レオナルドは立ち上がり、服に着いた土を払った。そして、座り込むアリアへと手を差し伸べる。
手を引いて立ち上がらせた体は、当たり前だがレオナルドの想像以上に軽く小さかった。
自分より年上で僅かに身長が高かろうが、紛れもなく彼女は女性だ。その背に庇われていたことを深く恥じる想いでレオナルドは眉をしかめた。
「……すみません」
「え?」
「僕は貴方に嘘をついていました」
彼女にだけ聞こえる声で呟いて、レオナルドは彼女の髪に引っ掛かる埃を取った。
そして、呆然と自分達を見下ろす男に向かい合って、手のひらを自身の胸に当てると胸を張った。
「……僕は、レイノアール王国の第三王子レオナルド・インフォード。貴方が憎むべきは彼女ではなく、この僕だ!」
「レイノアールの王子……?」
「あの子が王子様だって……?」
男だけではない。周りを囲む人々も動揺を隠しきれずに、互いに顔を見合わせた。
そしてそれはアリアにも同じことで、彼女は目を丸くしたままレオナルドの背中を見つめていた。
「僕を殴って少しでも気が晴れるのなら、好きにすればいい。だけど、他の者には手を出さないでください。レイノアールの民でも、アカネースの民でもなく、憎むのなら僕だけにしてほしい!」
怒りを捨てろと、口で言うのは簡単だ。
だが、そう簡単なものではないこともレオナルドにはよくわかっている。大切な人を失う痛みは、何も戦争だけが産み出すものではない。
男の表情に迷いが見えた。
レオナルドがレイノアールの王子だと知っても、男の中に先程のような沸き上がる怒りは生まれなかったのだ。
それはきっと、男の胸にも前を向きたい気持ちが存在していたからだ。そしてその想いは、先程のアカネースの人々の声で無視できない大きさに膨らんでいる。
「じゃあ、俺が妹の仇だとお前を殺してもいいってことかよ……!」
憎悪に満ちたはずの言葉は、頼りなく揺れる声で人々の鼓膜を揺らした。
やり場のない怒りを持て余す男の姿は迷い子のように頼りなく、レオナルドは彼の求める答えをあえて避ける。
「……それはさせません。僕はこれからアカネースの姫を迎えて、両国の平和の架け橋となります。なので、この命だけは渡せません。ですが、貴方の気が済むまでその拳を受け止めます」
男はレオナルドが構わないと答えれば自分の問いの馬鹿らしさに気付いて心の刃を折ったことだろう。本当にレオナルドを殺すなどできはしないのだと、冷静になればすぐにわかることだ。
しかし、レオナルドはそれを望まなかった。どうせ出来るわけがないからといって、嘘で男の意思を削ぐ真似は卑怯だと思ったのだ。
「……もう殴れるわけないだろ。一発殴っただけでも、手が痺れるみたいに痛いんだ」
男は拳を擦ると、深いため息を吐く。
憑き物が落ちたように平静を取り戻した瞳には、心配そうに自分を見上げるレオナルドが写った。
先程のアリアといい、どうして彼らは自分が危害を加えられているというのに加害者の心配をするのだろうか。
「もう恨みがないとは言えねぇ。けど、俺がレイノアールを恨み続けたら、いつかまた戦争が起きるかもしれない。その時、どっかの名前も知らないだれかの家族や友達が殺されるかもしれない。……そんなこと知ったこっちゃねぇなんて言えるほど、俺は自分勝手でもないんだ」
レイノアールを憎む気持ちが完全に消えたわけではない。ただ、少しだけ前を向いて生きたいと思っただけだ。
男は二人に背を向けると、奥へと身を引っ込めた。
周囲の人々が安堵の息を吐いて、それぞれ自分の店へと戻っていった。
レオナルドがレイノアールの王子と聞いて、近寄る者は流石にいない。囲まれて騒ぎが大きくなるよりはよっぽどマシであるが、悲しくも思える。
騒ぎ立てる者が現れないのは、皆が第一王女の理念を守ろうとしているのだろう。顔も知らない第一王女に感謝しながら、レオナルドは大きく肩を落とした。
「あの……」
俯いたレオナルドに声を掛けたのは、アリアであった。彼女だけが、離れずに側にいた。
しかし、レオナルドは彼女の顔を真っ直ぐに見ることができない。身分を偽っていたことの罪悪感が、レオナルドの心に重石となってのし掛かる。
「……レオナルド様、もう戻りましょう」
「うん……」
イヴァンの言葉に頷いたレオナルドは、アリアの手の甲に赤く滲む血に気付く。
宿の方向へと足を向けたイヴァンの腕を掴み、レオナルドはその足を止めさせた。そして、上着からハンカチを取り出すと彼女の手を取る。
「レオンさ……レオナルド様?」
「レオンでいいです」
自分の肌と同じ白さのハンカチを、羽毛が撫でるような繊細さで彼女の手の甲に押し当てる。強張っていた彼女の指先は、レオナルドの両手に包まれてゆっくりと固さを失っていった。
レオナルドは彼女の手を反転させて、手のひらを上に向けさせた。そして、ハンカチの端をきつくならないようにきゅっと結んだ。
手を離せば、白の中に血が染み込み赤い円を作る。それは雪原で燃す炎のように、頼りなく、しかし目を離せない存在感があった。
「……レオン、さん。こんなかすり傷気にしなくても……」
何も言わずにレオナルドは首を振った。
顔を上げることが出来なかったレオナルドには、その時の彼女の顔は見えなかった。少しでも彼女の中にレイノアール王国への敵意が見えてしまったら、今のレオナルドには耐えることが出来そうにない。
彼女に伝えたいことはたくさんあった。
短い時間であったが、彼女を通して目にしたアカネースの景色はどれも美しく、レオナルドの心に眠る和平への想いは光を増した。
知らない世界を見せてくれた彼女に感謝をしている。
しかし、言葉は形にならない。想いは胸に積もっているというのに、締め付けられた胸は喉までもを圧迫する。
「……レオンさん!」
背を向けたレオナルドを、呼び止める声。
しかし、レオナルドは振り返らない。心配そうに表情を曇らせたイヴァンへと頷いて、彼の隣へと並ぶ。
イヴァンは何も言わない。だから、レオナルドも口を開かなかった。
「貴方に嫁ぐアカネースの姫は、必ず貴方を愛します!」
レオナルドの足を止めるためではない言葉が、背中から強くぶつけられる。
穏やかな微笑みの似合う女性がこんなにも大きな声を出せるのか。胸の中で呟いて、レオナルドは顔を上げる。
「必ず、レイノアールという国ごと、愛してみせます!」
顔を上げたレオナルドの目には、濃紺の空と煌めく星。星空はレイノアールの方が美しく、輝きに満ちている。
「……期待せずに待つことにするよ」
レオナルドは隣を歩くイヴァンに聞こえるように呟いた。
聞こえていても黙ったままのイヴァンを見上げて微笑みを浮かべれば、彼もまた安堵の笑みを返し息をついた。
男の拳とアリアの間に滑り込む影があった。
「レオンさん!?」
大の男の力で頬を打たれ、レオナルドはその場に踏み留まれずに足をもつれさせてしまった。
咄嗟に腕を伸ばしたアリアに抱かれるようにして、二人で盛大に倒れ込む。
助けるつもりが庇われてしまうなんて、男として情けない。そう思うレオナルドであったが、今はそのようなことを考えるときではない。
レオナルドは立ち上がり、服に着いた土を払った。そして、座り込むアリアへと手を差し伸べる。
手を引いて立ち上がらせた体は、当たり前だがレオナルドの想像以上に軽く小さかった。
自分より年上で僅かに身長が高かろうが、紛れもなく彼女は女性だ。その背に庇われていたことを深く恥じる想いでレオナルドは眉をしかめた。
「……すみません」
「え?」
「僕は貴方に嘘をついていました」
彼女にだけ聞こえる声で呟いて、レオナルドは彼女の髪に引っ掛かる埃を取った。
そして、呆然と自分達を見下ろす男に向かい合って、手のひらを自身の胸に当てると胸を張った。
「……僕は、レイノアール王国の第三王子レオナルド・インフォード。貴方が憎むべきは彼女ではなく、この僕だ!」
「レイノアールの王子……?」
「あの子が王子様だって……?」
男だけではない。周りを囲む人々も動揺を隠しきれずに、互いに顔を見合わせた。
そしてそれはアリアにも同じことで、彼女は目を丸くしたままレオナルドの背中を見つめていた。
「僕を殴って少しでも気が晴れるのなら、好きにすればいい。だけど、他の者には手を出さないでください。レイノアールの民でも、アカネースの民でもなく、憎むのなら僕だけにしてほしい!」
怒りを捨てろと、口で言うのは簡単だ。
だが、そう簡単なものではないこともレオナルドにはよくわかっている。大切な人を失う痛みは、何も戦争だけが産み出すものではない。
男の表情に迷いが見えた。
レオナルドがレイノアールの王子だと知っても、男の中に先程のような沸き上がる怒りは生まれなかったのだ。
それはきっと、男の胸にも前を向きたい気持ちが存在していたからだ。そしてその想いは、先程のアカネースの人々の声で無視できない大きさに膨らんでいる。
「じゃあ、俺が妹の仇だとお前を殺してもいいってことかよ……!」
憎悪に満ちたはずの言葉は、頼りなく揺れる声で人々の鼓膜を揺らした。
やり場のない怒りを持て余す男の姿は迷い子のように頼りなく、レオナルドは彼の求める答えをあえて避ける。
「……それはさせません。僕はこれからアカネースの姫を迎えて、両国の平和の架け橋となります。なので、この命だけは渡せません。ですが、貴方の気が済むまでその拳を受け止めます」
男はレオナルドが構わないと答えれば自分の問いの馬鹿らしさに気付いて心の刃を折ったことだろう。本当にレオナルドを殺すなどできはしないのだと、冷静になればすぐにわかることだ。
しかし、レオナルドはそれを望まなかった。どうせ出来るわけがないからといって、嘘で男の意思を削ぐ真似は卑怯だと思ったのだ。
「……もう殴れるわけないだろ。一発殴っただけでも、手が痺れるみたいに痛いんだ」
男は拳を擦ると、深いため息を吐く。
憑き物が落ちたように平静を取り戻した瞳には、心配そうに自分を見上げるレオナルドが写った。
先程のアリアといい、どうして彼らは自分が危害を加えられているというのに加害者の心配をするのだろうか。
「もう恨みがないとは言えねぇ。けど、俺がレイノアールを恨み続けたら、いつかまた戦争が起きるかもしれない。その時、どっかの名前も知らないだれかの家族や友達が殺されるかもしれない。……そんなこと知ったこっちゃねぇなんて言えるほど、俺は自分勝手でもないんだ」
レイノアールを憎む気持ちが完全に消えたわけではない。ただ、少しだけ前を向いて生きたいと思っただけだ。
男は二人に背を向けると、奥へと身を引っ込めた。
周囲の人々が安堵の息を吐いて、それぞれ自分の店へと戻っていった。
レオナルドがレイノアールの王子と聞いて、近寄る者は流石にいない。囲まれて騒ぎが大きくなるよりはよっぽどマシであるが、悲しくも思える。
騒ぎ立てる者が現れないのは、皆が第一王女の理念を守ろうとしているのだろう。顔も知らない第一王女に感謝しながら、レオナルドは大きく肩を落とした。
「あの……」
俯いたレオナルドに声を掛けたのは、アリアであった。彼女だけが、離れずに側にいた。
しかし、レオナルドは彼女の顔を真っ直ぐに見ることができない。身分を偽っていたことの罪悪感が、レオナルドの心に重石となってのし掛かる。
「……レオナルド様、もう戻りましょう」
「うん……」
イヴァンの言葉に頷いたレオナルドは、アリアの手の甲に赤く滲む血に気付く。
宿の方向へと足を向けたイヴァンの腕を掴み、レオナルドはその足を止めさせた。そして、上着からハンカチを取り出すと彼女の手を取る。
「レオンさ……レオナルド様?」
「レオンでいいです」
自分の肌と同じ白さのハンカチを、羽毛が撫でるような繊細さで彼女の手の甲に押し当てる。強張っていた彼女の指先は、レオナルドの両手に包まれてゆっくりと固さを失っていった。
レオナルドは彼女の手を反転させて、手のひらを上に向けさせた。そして、ハンカチの端をきつくならないようにきゅっと結んだ。
手を離せば、白の中に血が染み込み赤い円を作る。それは雪原で燃す炎のように、頼りなく、しかし目を離せない存在感があった。
「……レオン、さん。こんなかすり傷気にしなくても……」
何も言わずにレオナルドは首を振った。
顔を上げることが出来なかったレオナルドには、その時の彼女の顔は見えなかった。少しでも彼女の中にレイノアール王国への敵意が見えてしまったら、今のレオナルドには耐えることが出来そうにない。
彼女に伝えたいことはたくさんあった。
短い時間であったが、彼女を通して目にしたアカネースの景色はどれも美しく、レオナルドの心に眠る和平への想いは光を増した。
知らない世界を見せてくれた彼女に感謝をしている。
しかし、言葉は形にならない。想いは胸に積もっているというのに、締め付けられた胸は喉までもを圧迫する。
「……レオンさん!」
背を向けたレオナルドを、呼び止める声。
しかし、レオナルドは振り返らない。心配そうに表情を曇らせたイヴァンへと頷いて、彼の隣へと並ぶ。
イヴァンは何も言わない。だから、レオナルドも口を開かなかった。
「貴方に嫁ぐアカネースの姫は、必ず貴方を愛します!」
レオナルドの足を止めるためではない言葉が、背中から強くぶつけられる。
穏やかな微笑みの似合う女性がこんなにも大きな声を出せるのか。胸の中で呟いて、レオナルドは顔を上げる。
「必ず、レイノアールという国ごと、愛してみせます!」
顔を上げたレオナルドの目には、濃紺の空と煌めく星。星空はレイノアールの方が美しく、輝きに満ちている。
「……期待せずに待つことにするよ」
レオナルドは隣を歩くイヴァンに聞こえるように呟いた。
聞こえていても黙ったままのイヴァンを見上げて微笑みを浮かべれば、彼もまた安堵の笑みを返し息をついた。
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