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【2】
19.友達として好きだよ
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約束のクリスマスが目前に迫っている。大学は明日から冬期休暇。
浮かれきっていた俺は、透とのいざこざについてすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
「本当に気にしてないから大丈夫だって」
悠一の隣で、透は頭を下げたまま顔を上げようとしなかった。
更には悠一まで頭を下げるものだから、俺は困りながら二人の肩を叩く。
「もういいって。二人とも目立つから顔上げて」
休み前で人が少なくなったとはいえ、食堂内にはそれなりに人も多い。
俺の言葉に渋々顔を上げた二人は、互いに顔を見合わせ申し訳無さそうに眉を下げた。
「けしかけたのはオレだからさ。透が陽のこと好きだってのは知ってたし、男もいけるんならチャンスじゃんって」
「それでも、恋人いるってわかってて迫ったのはおれだから。悪いのはおれだよ」
自分が悪いとお互いを庇い合う二人を前にしたら、つい苦笑が溢れてしまった。
「ほんとにもういいって。俺はそういう二人だから好きなんだしさ」
友達としてこれからも付き合っていきたい。笑う俺を見て、二人は少し安心した様子でほっと胸を撫で下ろしていた。
「でもさ、陽がそんなに本気になるなんて意外だった」
「俺も自分で驚いてる。でも、好きになっちゃったからもうどうしようもないよ」
自分らしくない恋をしている。でも、それでいいと思えるんだ。
「おれもそんな風に思える相手と付き合えたらいいなぁ。ショーコさんに相談してみようかな」
「良いと思うよ。実際ママの紹介で付き合った人って長続きしてるみたいだし」
ほんと、と表情を明るくする透へと頷く。それなのに上手くいかなかったと恭ちゃんが話していたから、間違いない。
「なぁ、オレもそのお店行きたい!」
「え、ユウが? なんで?」
「今回のことで、オレって視野が狭いんだなって思い知ってさ。だから、色んな人と知り合って視野を広げたい!」
今度は俺と透が顔を見合わせた。
「紹介があればノンケもオーケーって言ってたし、今度三人で行ってみようか」
「マジ! ありがとな!」
満面の笑みで悠一は俺の手を掴むとぶんぶん振り回す。あまりにもいつも通りな光景に、俺は堪えきれずに吹き出した。
つられて透も笑い出し、目元に浮かんだ涙を指先で拭いながらそっと息を吐き出した。
「ありがとう、陽」
「え?」
「あんなことしても、友達として好きって言ってくれて」
俺にとっては当たり前のことを、特別なことのように透は微笑む。
「透こそ、それでも俺と友達でいてくれてありがとう。告白されて断ると縁が切れちゃうことも多かったから、嬉しいよ」
顔を見るのも辛いからと、友達に戻れないことだって少なくなかった。だから、今回こうして透が俺に笑ってくれたことにほっとしていた。
「でさー、陽! こうなったらオレにもその恋人紹介してくれよ!」
「どうなってそんな話になるんだよ……」
「陽が惚れ込んでるなんてどんな人か興味あるしさ」
キラキラと期待の籠もった眼差しを向ける悠一に他意はなさそうだった。本当に純粋に、恭ちゃんに興味があるだけだ。
「一応聞いてみるよ」
「やった! 楽しみだな」
「まだ紹介するって決まったわけじゃないから」
恭ちゃんはオーケーしてくれるだろうか。それとも、嫌がるだろうか。
案外俺って恭ちゃんのことを分かってないんだなぁと気付かされ、会いたい気持ちは募っていくばかりだった。
浮かれきっていた俺は、透とのいざこざについてすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
「本当に気にしてないから大丈夫だって」
悠一の隣で、透は頭を下げたまま顔を上げようとしなかった。
更には悠一まで頭を下げるものだから、俺は困りながら二人の肩を叩く。
「もういいって。二人とも目立つから顔上げて」
休み前で人が少なくなったとはいえ、食堂内にはそれなりに人も多い。
俺の言葉に渋々顔を上げた二人は、互いに顔を見合わせ申し訳無さそうに眉を下げた。
「けしかけたのはオレだからさ。透が陽のこと好きだってのは知ってたし、男もいけるんならチャンスじゃんって」
「それでも、恋人いるってわかってて迫ったのはおれだから。悪いのはおれだよ」
自分が悪いとお互いを庇い合う二人を前にしたら、つい苦笑が溢れてしまった。
「ほんとにもういいって。俺はそういう二人だから好きなんだしさ」
友達としてこれからも付き合っていきたい。笑う俺を見て、二人は少し安心した様子でほっと胸を撫で下ろしていた。
「でもさ、陽がそんなに本気になるなんて意外だった」
「俺も自分で驚いてる。でも、好きになっちゃったからもうどうしようもないよ」
自分らしくない恋をしている。でも、それでいいと思えるんだ。
「おれもそんな風に思える相手と付き合えたらいいなぁ。ショーコさんに相談してみようかな」
「良いと思うよ。実際ママの紹介で付き合った人って長続きしてるみたいだし」
ほんと、と表情を明るくする透へと頷く。それなのに上手くいかなかったと恭ちゃんが話していたから、間違いない。
「なぁ、オレもそのお店行きたい!」
「え、ユウが? なんで?」
「今回のことで、オレって視野が狭いんだなって思い知ってさ。だから、色んな人と知り合って視野を広げたい!」
今度は俺と透が顔を見合わせた。
「紹介があればノンケもオーケーって言ってたし、今度三人で行ってみようか」
「マジ! ありがとな!」
満面の笑みで悠一は俺の手を掴むとぶんぶん振り回す。あまりにもいつも通りな光景に、俺は堪えきれずに吹き出した。
つられて透も笑い出し、目元に浮かんだ涙を指先で拭いながらそっと息を吐き出した。
「ありがとう、陽」
「え?」
「あんなことしても、友達として好きって言ってくれて」
俺にとっては当たり前のことを、特別なことのように透は微笑む。
「透こそ、それでも俺と友達でいてくれてありがとう。告白されて断ると縁が切れちゃうことも多かったから、嬉しいよ」
顔を見るのも辛いからと、友達に戻れないことだって少なくなかった。だから、今回こうして透が俺に笑ってくれたことにほっとしていた。
「でさー、陽! こうなったらオレにもその恋人紹介してくれよ!」
「どうなってそんな話になるんだよ……」
「陽が惚れ込んでるなんてどんな人か興味あるしさ」
キラキラと期待の籠もった眼差しを向ける悠一に他意はなさそうだった。本当に純粋に、恭ちゃんに興味があるだけだ。
「一応聞いてみるよ」
「やった! 楽しみだな」
「まだ紹介するって決まったわけじゃないから」
恭ちゃんはオーケーしてくれるだろうか。それとも、嫌がるだろうか。
案外俺って恭ちゃんのことを分かってないんだなぁと気付かされ、会いたい気持ちは募っていくばかりだった。
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