37 / 56
【2】
11.初体験の相手になって
しおりを挟む
「あ、なんか透がネコみたいに話しちゃったよね。違ってたらごめん」
「ううん、大丈夫。合ってるから」
ほっと息を吐きながら、透は少し落ち着いた様子でグラスを傾けた。
俺も安心してつまみのチーズに手を伸ばす。少しでも俺と話して透の気が楽になれば嬉しい。
「おれ、昔から人見知りでずっとユウの後をついていってるみたいな感じだったんだよ。大学からは地元離れるし、恋人作りたいなって思ってたのに、結局今もユウに助けてもらってるんだよね」
それが嫌なわけじゃないけど、と透は小さく溢した。
「変わりたいって思って外見から変えてみても、中身が変わったわけじゃないからうじうじしたままだし……出会い系も使ってみようと思ったけどセックス前提って感じで足踏みしちゃって……」
溜め息を吐く透の姿に、恭ちゃんが言ってたことを思い出す。
恋人を探そうにもその先にはどうしてもセックスがちらつくし、乗り気でなくても肌を重ねないと関係を進めることが難しいことは少なくなかったと。
タチとネコという役割もあるから、なおさらにそこを気にしなければいけないから男女の恋愛よりもさらに出会いから難しいんだろう。
「ここなら出会いを求めて来る人も少なくないし、しばらく通ってみたらどう? ママに相談しておけば紹介もしてくれるし」
「うん、ありがとう陽」
気の抜けた笑みを浮かべた透は、空になったグッズを手にしたままニコニコと俺の肩へと頭を預ける。
眠いのか尋ねれば、呂律の怪しい返事が出てきて、そろそろ帰ったほうが良さそうだと透の体を押し返すために肩に触れた。
「……ねぇ、陽。おれとシない?」
「え?」
聞き逃してしまいそうだった、ぽつりと零された透の言葉。透は、じっと俺を見つめていた。
「やっぱ、初めてって不安だから知ってる人とがいい。陽なら、そういうの気にしないでしょ?」
同じようなことを頼まれた方は何回かある。
経験しておきたいけど誰でもいいわけじゃないし、と女友達に誘われて、その度に応じてきた。
頼んできた相手とはその後も変わらず友達でいたから、そういうのもあって声を掛けられていたんだと思う。
仲の良い相手となら、出掛けるのも、ご飯を食べるのも、セックスするのだって楽しいに決まっている。
それは別に、男でも女でも変わらない。
今までの俺ならきっと、透からのこの誘いも断ったりはしなかっただろうな。
「ごめん、それは出来ない」
透の肩を押し返し、体を離す。
驚いた様子で目を丸くした透は、俺の袖を掴むとゆっくりと首を振った。
「それは、おれが男だから? 女の子だったら抱いてくれた?」
「女でも断るよ。透が男だからじゃなくて、俺に今好きな人がいるから出来ない」
誰に誘われたとしても、この答えは変わらない。
「流石に酔い過ぎだって。そろそろ帰ろう」
「そうだね。はぁ、陽ならオーケーしてくれると思ってたのに……」
なんとなく申し訳ない気持ちになって、ごめんと呟けば透は苦笑を浮かべていた。
「ううん、大丈夫。合ってるから」
ほっと息を吐きながら、透は少し落ち着いた様子でグラスを傾けた。
俺も安心してつまみのチーズに手を伸ばす。少しでも俺と話して透の気が楽になれば嬉しい。
「おれ、昔から人見知りでずっとユウの後をついていってるみたいな感じだったんだよ。大学からは地元離れるし、恋人作りたいなって思ってたのに、結局今もユウに助けてもらってるんだよね」
それが嫌なわけじゃないけど、と透は小さく溢した。
「変わりたいって思って外見から変えてみても、中身が変わったわけじゃないからうじうじしたままだし……出会い系も使ってみようと思ったけどセックス前提って感じで足踏みしちゃって……」
溜め息を吐く透の姿に、恭ちゃんが言ってたことを思い出す。
恋人を探そうにもその先にはどうしてもセックスがちらつくし、乗り気でなくても肌を重ねないと関係を進めることが難しいことは少なくなかったと。
タチとネコという役割もあるから、なおさらにそこを気にしなければいけないから男女の恋愛よりもさらに出会いから難しいんだろう。
「ここなら出会いを求めて来る人も少なくないし、しばらく通ってみたらどう? ママに相談しておけば紹介もしてくれるし」
「うん、ありがとう陽」
気の抜けた笑みを浮かべた透は、空になったグッズを手にしたままニコニコと俺の肩へと頭を預ける。
眠いのか尋ねれば、呂律の怪しい返事が出てきて、そろそろ帰ったほうが良さそうだと透の体を押し返すために肩に触れた。
「……ねぇ、陽。おれとシない?」
「え?」
聞き逃してしまいそうだった、ぽつりと零された透の言葉。透は、じっと俺を見つめていた。
「やっぱ、初めてって不安だから知ってる人とがいい。陽なら、そういうの気にしないでしょ?」
同じようなことを頼まれた方は何回かある。
経験しておきたいけど誰でもいいわけじゃないし、と女友達に誘われて、その度に応じてきた。
頼んできた相手とはその後も変わらず友達でいたから、そういうのもあって声を掛けられていたんだと思う。
仲の良い相手となら、出掛けるのも、ご飯を食べるのも、セックスするのだって楽しいに決まっている。
それは別に、男でも女でも変わらない。
今までの俺ならきっと、透からのこの誘いも断ったりはしなかっただろうな。
「ごめん、それは出来ない」
透の肩を押し返し、体を離す。
驚いた様子で目を丸くした透は、俺の袖を掴むとゆっくりと首を振った。
「それは、おれが男だから? 女の子だったら抱いてくれた?」
「女でも断るよ。透が男だからじゃなくて、俺に今好きな人がいるから出来ない」
誰に誘われたとしても、この答えは変わらない。
「流石に酔い過ぎだって。そろそろ帰ろう」
「そうだね。はぁ、陽ならオーケーしてくれると思ってたのに……」
なんとなく申し訳ない気持ちになって、ごめんと呟けば透は苦笑を浮かべていた。
46
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる