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【2】
3.どっちも大事にしたいから
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ただの友達との飲み会だから心配しないでよ、なんて今までのようには笑えない。
「……え、なに?」
二人がぽかんと俺を見つめているから、その理由がわからなくて俺は二人の顔を見比べた。
悠一と透は互いに顔を見合わせると、信じられないものでも見たような目をしてそっと声を潜める。
「陽、それマジで言ってる?」
「マジで言ってるけど……」
「あの陽が、彼女を不安にさせたくない……?」
信じられない、と声を合わせた二人には流石に笑ってしまった。
「なにそれ。二人とも失礼過ぎ」
「いや~だって……ねぇ?」
「陽がそんなこと言うなんてありえないだろ。彼女いようが誘われたら断らなかったのに……」
愕然としていた悠一は、食堂の入口に同じゼミの有馬と咲希を見つけ、立ち上がると二人に向けて大きく手を振った。
「おい! 陽に彼女できた!」
賑やかな食堂とはいえ結構な大声で、知らない人たちも何人か振り返っている。
有馬も咲希もトレーに昼飯を乗せ、大したことじゃなさそうに笑いながらこちらへと近付いてきた。
「高瀬に彼女が出来たって何も驚かないだろ」
「そうそう。むしろ最近フリーだったことのほうが驚きだよ」
有馬も咲希も笑いながら空いていた席に腰を下ろす。
「で? 高瀬も飲み会来るだろ?」
「だから、来ないんだって! 彼女いるから!」
そんな大げさに話すことじゃないだろ。
悠一へと溜息を吐いたが、それを聞いた有馬と咲希はいただきますと手を合わせたまま固まってしまった。
「え! 高瀬、本気で言ってる? 彼女さんそんなに束縛激しいタイプなの?」
「そんなことないけど、誤解させて嫌われたくないし」
「嫌われたくないって……もしかして高瀬から告白したのか?」
「そうだけど」
有馬と咲希だけじゃない。一緒にいた悠一と透も食事の手を止め、俺を見つめていた。
「ついに高瀬を射止めるヤツが現れたか……」
「意外すぎる。あたしの友達でも狙ってる子何人かいるのに」
「もしかして陽が最近女の子の誘い乗らなかったのって、今の彼女にアタック中だったから……?」
みんなが好き勝手話してる中、透だけはまだ疑うような眼差しを俺へと向けていた。
他のみんなも笑いながら話しているから多分そこまで信じていないんだろう。こうしてみんなの印象を見ていると、本当に俺って女性関係に緩いやつだったんだなと溜息がこぼれた。
「とにかく、俺はしばらく恋人優先させるから! で、ちゃんと安心してもらったら遊び行く!」
恭ちゃんを大事にしたい気持ちに嘘はないけど、友達のことも大切にしたい。
そのためにはまず、きちんと恭ちゃんに信用してもらわないと。
「じゃあさ、年明けのスキーはどうする? まぁ、まだ先だから急いで返事しなくてもいいけどさ」
一年の頃から悠一たちと一緒に出掛けているスキー旅行は、女友達も一緒だし、何なら元カノだっている。
元カノには今は新しい彼氏もいて幸せそうだし、俺も恭ちゃん以外とどうこうなりたいとは思ってない。
友達との旅行だから行きたい気持ちはあるけれど、不安にさせることは間違いないだろうな。
「ダメとは言わないと思うけど、相談してみるよ。行けなかったらゴメン」
「そこで行かない方選ぶなんてどんなに魅力的な子なんだよ~!」
悠一は俺の腕を掴むと大きく揺さぶった。
大好きなんだよ、と笑ってみせれば、ますます悠一は声を大きくして、泣き真似と共に俺にくっついてきた。
「……え、なに?」
二人がぽかんと俺を見つめているから、その理由がわからなくて俺は二人の顔を見比べた。
悠一と透は互いに顔を見合わせると、信じられないものでも見たような目をしてそっと声を潜める。
「陽、それマジで言ってる?」
「マジで言ってるけど……」
「あの陽が、彼女を不安にさせたくない……?」
信じられない、と声を合わせた二人には流石に笑ってしまった。
「なにそれ。二人とも失礼過ぎ」
「いや~だって……ねぇ?」
「陽がそんなこと言うなんてありえないだろ。彼女いようが誘われたら断らなかったのに……」
愕然としていた悠一は、食堂の入口に同じゼミの有馬と咲希を見つけ、立ち上がると二人に向けて大きく手を振った。
「おい! 陽に彼女できた!」
賑やかな食堂とはいえ結構な大声で、知らない人たちも何人か振り返っている。
有馬も咲希もトレーに昼飯を乗せ、大したことじゃなさそうに笑いながらこちらへと近付いてきた。
「高瀬に彼女が出来たって何も驚かないだろ」
「そうそう。むしろ最近フリーだったことのほうが驚きだよ」
有馬も咲希も笑いながら空いていた席に腰を下ろす。
「で? 高瀬も飲み会来るだろ?」
「だから、来ないんだって! 彼女いるから!」
そんな大げさに話すことじゃないだろ。
悠一へと溜息を吐いたが、それを聞いた有馬と咲希はいただきますと手を合わせたまま固まってしまった。
「え! 高瀬、本気で言ってる? 彼女さんそんなに束縛激しいタイプなの?」
「そんなことないけど、誤解させて嫌われたくないし」
「嫌われたくないって……もしかして高瀬から告白したのか?」
「そうだけど」
有馬と咲希だけじゃない。一緒にいた悠一と透も食事の手を止め、俺を見つめていた。
「ついに高瀬を射止めるヤツが現れたか……」
「意外すぎる。あたしの友達でも狙ってる子何人かいるのに」
「もしかして陽が最近女の子の誘い乗らなかったのって、今の彼女にアタック中だったから……?」
みんなが好き勝手話してる中、透だけはまだ疑うような眼差しを俺へと向けていた。
他のみんなも笑いながら話しているから多分そこまで信じていないんだろう。こうしてみんなの印象を見ていると、本当に俺って女性関係に緩いやつだったんだなと溜息がこぼれた。
「とにかく、俺はしばらく恋人優先させるから! で、ちゃんと安心してもらったら遊び行く!」
恭ちゃんを大事にしたい気持ちに嘘はないけど、友達のことも大切にしたい。
そのためにはまず、きちんと恭ちゃんに信用してもらわないと。
「じゃあさ、年明けのスキーはどうする? まぁ、まだ先だから急いで返事しなくてもいいけどさ」
一年の頃から悠一たちと一緒に出掛けているスキー旅行は、女友達も一緒だし、何なら元カノだっている。
元カノには今は新しい彼氏もいて幸せそうだし、俺も恭ちゃん以外とどうこうなりたいとは思ってない。
友達との旅行だから行きたい気持ちはあるけれど、不安にさせることは間違いないだろうな。
「ダメとは言わないと思うけど、相談してみるよ。行けなかったらゴメン」
「そこで行かない方選ぶなんてどんなに魅力的な子なんだよ~!」
悠一は俺の腕を掴むと大きく揺さぶった。
大好きなんだよ、と笑ってみせれば、ますます悠一は声を大きくして、泣き真似と共に俺にくっついてきた。
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