サザンクロスの花束を

かのえらな

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撫子の蜜

謀略の兎達

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 「この道まっすぐの突き当りか・・・」


 は眠り、目を覚ますように灯り始めた夜の街、都内繁華街。

 大通りには車がびっしりと並び、
歩道を練り歩く老若男女の雑踏ざっとうで溢れる。

 提灯ちょうちんやら行燈あんどんが行き交う者達を照らす夜道。

 居酒屋等の飲食店が多く立ち並び、入口上のネオン看板達が所狭しと消費者に向けて客寄せをしていた。


 「駅前集合って話はどこいったんだか。」

 
 蒼汰とのやり取りは予定通りにいった試しがない。
今日だって駅前集合で店まで一緒にいこうという話だったのがこれだ。
 
 スマホのナビ案内と現地を交互に確認しながら人の流れに沿って歩く。

 場所は数分前にラインで送られてきた。


 「はぁ・・・なんていうか気乗りしないなぁ」


 蒼汰の言っていた≪新たなる恋≫というものに関心を持てずにいた。
自分には「おっしゃ!次の恋、次の恋」と切り替えられる気前の良さは持っていなかったからだ。

 そんな後ろ髪を引かれる思いではあったが
家に帰って部屋の隅で一人過ごす夜よりはマシだと、
ここまで足を運んでしまっていたのだった。


 『もう着くし、連絡しておくか』


 蒼汰にメッセージを送ろうとアプリを切り替えた時だった。


 ≪ドスッ≫

 「のわっ!!」


 突然鈍い衝撃が肩を打ち、驚嘆とともに思わず後ずさる。

 どうやら人とぶつかったようだ。


「あ!すみま―」
「オイッ!!ケータイいじりながら歩いてんじゃねーぞッ!馬鹿野郎がッ!」


 ぶつかった人物は黒スーツを着た強面の男が立っており、
ごもっともな罵声《ばせい》に目をつむり頭を下げる。

 伏せた顔で足の動きを追っていると、
男はそれ以上何を言うでもするでもなく、
その場から去っていった。


 『ひー!・・・俺が悪いからなんも言えんけど。こっわ・・・』


 伏せた顔で男の足が見えなくなると一安心した。

 が、一難去って。


「・・・ッ!?」


 下げた目線の先には
せたコンクリートにうつ伏せに身投げしたスマホの姿。
どうやらぶつかった衝撃で地面に落としたらしい。

 
「おいおい!まじか!まだ買ったばっかりだぞ!」


 また一難。

 膝をつき、まるで弱り切った鳥の雛を救い上げるようにケータイを救出する。

 ご臨終りんじゅうだった。

 液晶画面はことごとく割れ、現代アートのようになっている。

 電源こそ入るが、カラフルなハンドライトのように光り点滅するのみ。

 操作は一切受け付けず、タッチするごとに液晶が漏れハイカラに色を変える。

そこにかつてのシャープなデザイン性はなかった。


 「ぐぬ・・・ついてない。なんてついてないんだ。
別れてすぐ飲み会に行くなんて軽い男だという神からの罰なのか?・・・」

 〘目的地まで、35ふ――目的地に着きました案内を終了しま・・・〙

 「だあぁ!完全に壊れたぁ!」




◆◆◆◆◆





「よし、揃ったな選ばれし戦士たちよ。」


 都内の飲み屋『きっちり』

 店内はちょうどいい空調とほんのりと色気づいた柔らかい電飾で飾り付けられ、
雰囲気をワンランク上の和風居酒屋へと昇華させている。

 当然値段もワンランク上だが、完全個室で靴を脱いで上がるお座敷の間は女性ウケ間違いない。

 らしい。(メガネキノコ調べ)


 「何が戦士たちだよ。女の子1人も来てないじゃないか!」


 座敷に座り早々、抗議の声が飛ぶ。


『選ばれた戦士というより、選ばれなかった戦士達だな。女の子に・・・』


 時刻は6時半、駅を降りてすぐの居酒屋の御座敷に集いし男4人。

 自分と蒼汰以外には同世代の男が2人 『山下』、『河野』

 面識は初めてだったが、それぞれ名乗り自己紹介がてら入店前に
互いの挨拶と話は済ませていた。

 山下も河野も出会いを求め参加したらしく、
愛に飢えているにも関わらず野郎だけの個室に案内され不服のようだった。


「待ちたまえよ山下君、飲み会は7時から、男だけ先入りするのには訳がぁある!」

「な、なんだって!?」


 飲み会前でテンションが上がってる蒼汰と山下の茶番をよそに
水の入ったグラスに口をつけた。


 『女の子が来る飲み会って毎回こんな感じのノリなのか・・・』


 大学2年にもなったが飲み会に参加したことがあるのは数回のみだ。


 「いいか、飲み会、否!合コンは戦場、そしてチーム戦だ!
これより作戦会議≪オペレーションラビット≫を始める!」

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