魔法の葉っぱ 〜落ち葉になった小犬〜（改稿）

誤解

　わたしのおとうさんとおかあさんは、保健所や動物愛護センターのことを誤解していたのです。

　一昔前までは、収容された動物たちは殺処分以外の選択肢がなかったのかもしれません。でも、職員さんたちの地道な努力の積み重ね、ボランティアさんたちの協力で、少しづつ、でも確実に変わってきているのです。
　それぞれの地域で、成果にはまだ差はありはするものの、命を守るためにみんな頑張っていると、わたしは思います。

　だから、わたしのおとうさんやおかあさんも人から聞いた話を鵜呑みにしたりせずに、まずは自分たちの目で見て調べてくれたら良かったのです。そうしたら、わたしもきっと山の中に置き去りにされることもなく、センターに引き取ってもらえたでしょう。

　だけど、そうは言っても「引っ越しするから」「赤ちゃんが生まれるから」「世話がやけるから」「動物が病気になったから」「飼い主さんが死んでしまったから」と、むやみやたらに何でもセンターに押し付けたりするのも、困りものです。
　センターは大きな建物ではありません。ボランティアさんを含めても、そんなにたくさんの人手があるわけではありません。

　収容頭数を超えれば、秋川さんが言ったようにセンターでしか生きられない動物たち、重い病気やひどい怪我、歳をとって体が不自由になった動物たちから順々に犠牲になっていきます。

　そして、動物たちだけじゃなく、秋川さんみたいな職員さんたちだって、すごく苦しむのです。
　白崎さんは、３歳の子どものおかあさんです。小さな子どもを抱く同じその手で、動物たちの命をうばうドリームボックスのスイッチを入れなくてはなりません。
　あるいは安楽死の注射をしなければならないのです。

　秋川さんの口癖は「動物は悪くない。動物はただそこで生きているだけ。悪いのは、みんな人間」

　動物愛護センターの職員さんたちは、そんな人間たちの罪を被っているのです。
　それが仕事だから仕方がないという人たちもいるでしょう。
　それなら、命を奪う仕事から守る仕事になるために、先の見えない道であっても諦めず一歩一歩地道に努力をし続けるしかないのです。

　殺処分ゼロを一番願っている人たちの中には、センターの職員さんたちがいるのもわかってほしいです。
　心からお願いします。安易な気持ちでペットを飼い始めたりはしないでください。ペットには命があります。おもちゃでも道具でもないのです。
　動物を家族に迎え入れる前には必ずよく考えて準備してください。