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第一部 神殺しの陰謀 第三章 神殺しの罪人
神縛りの面
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ロキは静かに私たちが準備している姿を見つめている。どれほどここに幽閉されていたのか、それはその姿を見れば一目瞭然である。
もとは神の力を持っていたのであろうアストラル体は痩せ衰え、髪や髭は手入れもされず伸びっぱなしなのだ…。アストラル体でありながらも髭や髪は伸びる…、しかし常世のような肉体とは違いそれが起こるのはかなりの時間が必要である。
「ロキさん一つお尋ねしてもよいでしょうか。」
日出は作業の手を止めロキの目の前に立った。
「私がわかる事であれば何なりと…。ここにつながれていて古い情報しか知らないと思うがね。」
日出はロキの置かれた状況とその姿から、その言葉の重みをしっかりと飲み込んでいるようだ。
「なぜ神々は幽世に閉じこもったのでしょうか…。信仰や恐怖を受けると力を増すという話がありましたが…。そうなると、常世から幽世への力の伝搬の問題があると思うのですが…。」
日出の言葉にロキはうなだれた顔を上げ、日出のことをまじまじと見ていた。
「古き神々は恐れたのだ…常世での信仰を失い…消えることを…。だから幽世を作り、こちらに閉じこもったのだ。」
「自分たちのアストラル体を少しでも保持するために…。」
「昔は神も人々も同じ世界で暮らしていた…。しかし、神は肉体を持たず…常世での生活は信仰による力の増幅とアストラル体の消耗がイコールにならなければ成り立たない…。」
各地の伝承に残る、国つくりや人づくりそういった話は神と人々が同じ場所で生活していたということを裏付ける資料でもある。
「古き神たちは考えたのさ…地上にいつか舞い降りられるように…受肉できるようになるまで、こちらの世界でなりを潜めようと…。」
「それが先ほどおっしゃっていた話の背景なのですね…。」
「あぁ、そういうことだ…。常世の幽世はこの幽世が作られたときの残滓が常世に残ったことにより出来上がった…。不完全で…脆い…、まるで新しく生まれた神を幽世に引きずり込む罠の様に…。」
ロキはそう話し終えると、つっかえていた小骨が取れたように少し声のトーンが上がった。
「そろそろ準備はできたようだね。暴食の時代の弟…か。」
私たちがトール王からもらった角をまじまじと見つめながら嬉しそうにそう発した。
「日出、千暁さん、まずはここにメンタル体を呼び出そう…。メンタル体の可視は私であれば可能だと王様もおっしゃっていたので、来たら知らせるよ。」
私たちはどのようにすればメンタル体を呼び出せるかがいまいち理解できていなかったので、UFOを呼び出すかのように3人で手をつなぎ円を作った。
そして、常世に帰りたいという気持ちを強めるように、常世でやりたいことを考えながら、回り始めた…。
「東雲さん、これ回る意味ありますか?UFOを呼ぶわけではないですよね…。」
「日出…、俺にもわからないんだ…とりあえず付き合ってくれ…。」
その奇妙な光景を見かねたロキが話しかけてきた。田村丸たちは黙ってじっと私たちのやっていることを見つめていた。
「手をつなぐ必要もないし、回る必要もない、その場でじっと考えればいいよ。それと、東雲と呼ばれてた君はヘイムダルの匂いがするな…、何か他にも渡されてはいないか。」
ロキはあきれるわけでもなく、私たちの行動に真摯に向き合ってくれている。今から自分が葬られるというのにどこか幸せそうである。
そして私はロキに言われた通り、ヘイムダルの兜をかぶり、周囲のアストラル体を感知するために精神統一をした。
すぐに私はヘイムダルの兜を部脱いだ…、あまりもののアストラル体濃度に驚きを隠せなかった。これをもし直視していたとなるとホルスの様に目はいかれていた可能性もある。
「ロキさん、あなたのアストラル体の濃度が濃すぎて…。」
「すまない…、この面のせいだ。この面は私のアストラル体を放出させ、弱らせる役割を担っているのだ…。」
「お面は取れないのですか?」
「可能だ。神々が作ったこの面は神々と同等の力、神殺しに匹敵する力で破壊はできると思う。」
よほど強力な面であるが破壊可能となると光明は見えた、ここには力があるものは多くいる。
田村丸と千暁に面の破壊をお願いすることとした。
田村丸は刀を抜き、深呼吸をした後、まるで空間を切り裂くような速さで面を切った。しかし、面には傷一つつかず、杭をかけさせることはできたがその程度であった。
千暁は先ほどの禁忌の者との戦闘によって自信をつけたようであり、待っていましたと言わんばかりのすがたがそこにはあった。大斧を軽々と持ち上げ、全身のアストラル体に力を入れた。
「素晴らしい…力を持っているようだね。」
「いきますよぉ!」
千暁はそう言うと、腕をぐるぐると回し、勢いをつけたうえでロキの仮面を思いっきり殴りつけた。
首が飛んで行ってしまうのではないかという衝撃はロキの顔面を突き抜けるように拡散し、拘束している鎖を大きく揺らした。しかし、杭が完全に破壊されることはなかった…。
「力は神にも届きうるが…、お嬢さんはアストラル体の使い方がなっていない。こうしてみていると弟子たちを思い出すな…。」
ロキは千暁の攻撃を受けてもびくともしていない様子であった。攻撃を受けた際には瞬き一つせずにすべての攻撃を見極めていたようにも見えた。
「平面ではなく、点でとらえるようなイメージで攻撃してもらえないか?針に糸を通すそんなイメージで思いっきりこの面を攻撃してみてくれ。」
「やってみます。」
千暁はそう言うと、大斧は千暁のアストラル体でコーティングされるかのように姿を変えた。今までは刃は丸みを帯びていたのだが、アストラル体でコーティングされた後のその刃は三角張っている。
「あぁ、すごい呑み込みの早さだ…その調子だ。次はすべてを破壊できる…貫けるそんなイメージをもってくれ。」
千暁はさらにロキの言うことを聞き、さらに握り拳に力をこめ始めた。
「神殺しの武器…、私が使ったヤドリギの枝を彷彿とさせる。それなら成し得られる。」
ロキはそう言うと頭を突き出し、全身に力をこめた。その攻撃に耐えるように踏ん張っているように見える。
千暁は気合の声とともに勢いをつけ、その変化した大斧をロキの面に突き立てた。
もとは神の力を持っていたのであろうアストラル体は痩せ衰え、髪や髭は手入れもされず伸びっぱなしなのだ…。アストラル体でありながらも髭や髪は伸びる…、しかし常世のような肉体とは違いそれが起こるのはかなりの時間が必要である。
「ロキさん一つお尋ねしてもよいでしょうか。」
日出は作業の手を止めロキの目の前に立った。
「私がわかる事であれば何なりと…。ここにつながれていて古い情報しか知らないと思うがね。」
日出はロキの置かれた状況とその姿から、その言葉の重みをしっかりと飲み込んでいるようだ。
「なぜ神々は幽世に閉じこもったのでしょうか…。信仰や恐怖を受けると力を増すという話がありましたが…。そうなると、常世から幽世への力の伝搬の問題があると思うのですが…。」
日出の言葉にロキはうなだれた顔を上げ、日出のことをまじまじと見ていた。
「古き神々は恐れたのだ…常世での信仰を失い…消えることを…。だから幽世を作り、こちらに閉じこもったのだ。」
「自分たちのアストラル体を少しでも保持するために…。」
「昔は神も人々も同じ世界で暮らしていた…。しかし、神は肉体を持たず…常世での生活は信仰による力の増幅とアストラル体の消耗がイコールにならなければ成り立たない…。」
各地の伝承に残る、国つくりや人づくりそういった話は神と人々が同じ場所で生活していたということを裏付ける資料でもある。
「古き神たちは考えたのさ…地上にいつか舞い降りられるように…受肉できるようになるまで、こちらの世界でなりを潜めようと…。」
「それが先ほどおっしゃっていた話の背景なのですね…。」
「あぁ、そういうことだ…。常世の幽世はこの幽世が作られたときの残滓が常世に残ったことにより出来上がった…。不完全で…脆い…、まるで新しく生まれた神を幽世に引きずり込む罠の様に…。」
ロキはそう話し終えると、つっかえていた小骨が取れたように少し声のトーンが上がった。
「そろそろ準備はできたようだね。暴食の時代の弟…か。」
私たちがトール王からもらった角をまじまじと見つめながら嬉しそうにそう発した。
「日出、千暁さん、まずはここにメンタル体を呼び出そう…。メンタル体の可視は私であれば可能だと王様もおっしゃっていたので、来たら知らせるよ。」
私たちはどのようにすればメンタル体を呼び出せるかがいまいち理解できていなかったので、UFOを呼び出すかのように3人で手をつなぎ円を作った。
そして、常世に帰りたいという気持ちを強めるように、常世でやりたいことを考えながら、回り始めた…。
「東雲さん、これ回る意味ありますか?UFOを呼ぶわけではないですよね…。」
「日出…、俺にもわからないんだ…とりあえず付き合ってくれ…。」
その奇妙な光景を見かねたロキが話しかけてきた。田村丸たちは黙ってじっと私たちのやっていることを見つめていた。
「手をつなぐ必要もないし、回る必要もない、その場でじっと考えればいいよ。それと、東雲と呼ばれてた君はヘイムダルの匂いがするな…、何か他にも渡されてはいないか。」
ロキはあきれるわけでもなく、私たちの行動に真摯に向き合ってくれている。今から自分が葬られるというのにどこか幸せそうである。
そして私はロキに言われた通り、ヘイムダルの兜をかぶり、周囲のアストラル体を感知するために精神統一をした。
すぐに私はヘイムダルの兜を部脱いだ…、あまりもののアストラル体濃度に驚きを隠せなかった。これをもし直視していたとなるとホルスの様に目はいかれていた可能性もある。
「ロキさん、あなたのアストラル体の濃度が濃すぎて…。」
「すまない…、この面のせいだ。この面は私のアストラル体を放出させ、弱らせる役割を担っているのだ…。」
「お面は取れないのですか?」
「可能だ。神々が作ったこの面は神々と同等の力、神殺しに匹敵する力で破壊はできると思う。」
よほど強力な面であるが破壊可能となると光明は見えた、ここには力があるものは多くいる。
田村丸と千暁に面の破壊をお願いすることとした。
田村丸は刀を抜き、深呼吸をした後、まるで空間を切り裂くような速さで面を切った。しかし、面には傷一つつかず、杭をかけさせることはできたがその程度であった。
千暁は先ほどの禁忌の者との戦闘によって自信をつけたようであり、待っていましたと言わんばかりのすがたがそこにはあった。大斧を軽々と持ち上げ、全身のアストラル体に力を入れた。
「素晴らしい…力を持っているようだね。」
「いきますよぉ!」
千暁はそう言うと、腕をぐるぐると回し、勢いをつけたうえでロキの仮面を思いっきり殴りつけた。
首が飛んで行ってしまうのではないかという衝撃はロキの顔面を突き抜けるように拡散し、拘束している鎖を大きく揺らした。しかし、杭が完全に破壊されることはなかった…。
「力は神にも届きうるが…、お嬢さんはアストラル体の使い方がなっていない。こうしてみていると弟子たちを思い出すな…。」
ロキは千暁の攻撃を受けてもびくともしていない様子であった。攻撃を受けた際には瞬き一つせずにすべての攻撃を見極めていたようにも見えた。
「平面ではなく、点でとらえるようなイメージで攻撃してもらえないか?針に糸を通すそんなイメージで思いっきりこの面を攻撃してみてくれ。」
「やってみます。」
千暁はそう言うと、大斧は千暁のアストラル体でコーティングされるかのように姿を変えた。今までは刃は丸みを帯びていたのだが、アストラル体でコーティングされた後のその刃は三角張っている。
「あぁ、すごい呑み込みの早さだ…その調子だ。次はすべてを破壊できる…貫けるそんなイメージをもってくれ。」
千暁はさらにロキの言うことを聞き、さらに握り拳に力をこめ始めた。
「神殺しの武器…、私が使ったヤドリギの枝を彷彿とさせる。それなら成し得られる。」
ロキはそう言うと頭を突き出し、全身に力をこめた。その攻撃に耐えるように踏ん張っているように見える。
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