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第一部 神殺しの陰謀 第三章 神殺しの罪人

コキュートスと八寒地獄

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 日出はその古ぼけた本をまじまじと見ている…。まがまがしさもあるその本にすぐに日出は反応した。

 「レメゲトン…ですね。」
 「あぁ、その通りだ。知っているなら使い方もわかるな。」

 日出は少しがっかりしていた…。後で理由を聞くにレメゲトンは常世でも存在するらしく、中身は読んだ事がなかった様だが、もっと神秘の物が欲しかったと言う事であった。

 しかし、精霊の召喚や悪魔の使役など黒い内容が書かれていると言う事で、じっくりと研究するぞと意気込んだ。

 「一つだけ言い忘れておった、私は呼び出すでないぞ!ここから離れられんから、呼び出し要請を受けても対応できんからな。」

 王様は日出が興味本位で呼び出すことを少し恐れた様だ。それもそのはずだ、ギラギラとした目つきで王様に対して不適な笑みを日出は送っていたのだから…。

 「おぬしでも、そのレメゲトンと扱いは難しいであろう…。そこに載っておる者達は曲者、変わり者が多いのでな。」

 王様はどこか不安そうであった…。

 王様はそのレメゲトンは強制的に召喚できる様な代物ではなく、あくまで常世で言う電話帳のような物だと説明してくれた。

 非常にわかりやすい説明で、常世の例でいくと電話してOKかNGかを確認したあとに、直接来てもらうか、力だけを貸してもらうか、そんな選択をしていくと言うことであると説明をしてくれた。

 日出もっと悪魔召喚のように神秘的に召喚し、使役する事を求めていたようで…、そのリアルな話を聞いて肩を落としていた。

 「レメゲトン、ソロモン王との戦は楽しかったなぁ…。今でも交友がある常世での縁を築いた数少ない友である。その友からの贈り物だ…大切に扱ってくれよ。」

 日出に釘を刺すように、王様は念を押した。そして、ソロモン王そのものが使っていた原本である事がわかった途端、日出は息を吹き返したかのように王様に感謝の眼差しを向けた。

 側から見ていると、王様に対してかなり無礼ではあったが、王様は気にも留めていない様子であった。

 器のなせる物なのか…、日出を子ども扱いしているのかは定かではないが、丸く治った事にホッとした。

 「王様、一つ質問よろしいでしょうか?今回…このメンタル体を吸収させる罪人とはどのような者なのでしょうか?」
 「…神殺し…の罪人だ。これを話す前にはコキュートスと八寒地獄の話をせねばならんな。その深部に奴を閉じ込めておる。」

 神殺し…その言葉だけでその者の罪の重さが理解できる…。

 王様はその者とは知り合いのようなそぶりを見せている。

 「まず、コキュートス、八寒地獄とはお主らも知っておると思うが…。凍れる河…お主らの日本で言う三途の川と似たような物だ…、その河で罪を洗い流す。そして、罪の精算…贖罪を行う。」

 王様はこの凍れる大地における、贖罪のプロセスを丁寧に説明してくれた。

 また、日本における八大地獄は主に八熱地獄を刺すのだが、それはこことは別の場所にあるとのことも付け加えてくれた。

 コキュートスは罪で穢れたアストラル体を蝕む河であると言うことも…。

 コキュートスは八寒地獄の第一層から第八層までを横断するように流れており、罪人はその川を一層から順に下らされるそうだ。そして、罪が洗い流された時の層で贖罪に入るとのことだ。

 例えば、第三層で罪が洗い流された場合は第三層で、第一層で罪が洗い流された場合は第一層でその贖罪を行うとのことらしい。
 そして、その河で罪が洗い流しきれなかった者が行き着く先が第八層という事である…。

 第一層はこの凍れる大地とあまり変わらない環境であり、下層に進むほど環境はどんどんと劣悪になっていくそうだ。しかし、しっかりとした対策をしていればそんなに厳しいわけではなく、そこで働く獄卒たちもいるとのことだ。

 しっかりと対策するという言葉はコキュートスで罪を洗い流したむき出しのアストラル体の罪人にとって、本当の地獄であると言い換えられる。

 「第八層でもあやつにはぬるま湯であった…。しかし、贖罪のプロセスとしてはそれ以上何もできん…。そのため無期の第八層への幽閉という形を取らざる得なんだ。」

 王様も苦渋の決断であったようだ…、しかし、その者の贖罪が終わらぬまま世に放ってしまっては威厳が保たれないのであろう。

 コキュートス、八寒地獄と言えども、それを超える存在にはでも足元でないのだ…。

 しかし、その幽閉が今回は功を奏したと言っていいのかはわからないが、一つの回答になったのであろう…禁忌だとしても…。

 そして、王様の表情からどこか罪人の素性をあまり話したくないようであった、特にその名前は…。

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