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第一部 神殺しの陰謀 第二章 氷の国の王
招かれざる常世からの来訪者
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暴れまわる常世からの来訪者に向けて私は憤りを隠せなかった。
「おまえら、それ以上するならただじゃおかないぞ。」
私は高圧的な態度で二人を威嚇する。
「なんなんだ、このおっさんは?俺ら気持ちよくなってきているってのに…急に入ってきやがって。」
「そうだ、お前に指図される筋合いなんてないだろ。」
「少しここのルールをわからせないといけないようだな。」
その男らはエーテル体を使ったアストラル体変化も使いこなせず、むき出しの肉体で走っているような素人であった…、基礎的な説明も受けていない。十中八九、裏のルートで【ゾンビパウダー】を買ったのであろう。そして、この【ゾンビパウダー】を危険薬物か何かと思っているようだ。
決しておっさんと言われたことに腹を立てたわけではない、そう自分にいい聞かせ、腕を虎のように変化させた。
腕は炎が揺れるかの如くゆらゆらと立ち上る白く長い毛をなびかせ、すべてを切り裂く鎌のような爪が伸びている。
「この腕で切り裂かれたくなければ、立ち去れ、二度と戻ってくるな。」
「なんなんだよ、その腕!ば、化け物か。」
「あぁ、化け物だ、なんとでも言え。こっちの世界の住人は俺みたいに甘くはないぞ。」
「おら!おっさん、なめんなよ。」
一人の男はその姿に畏怖し腰を落とし地面にへたり込んだが、もう一人の男はそうではなかった。直感的にエーテル体の使い方を理解したのであろうか、アストラル体が先ほどに比べ筋肉が隆起しているような状態になっていた。
ここまではよくある話だ、エーテル体を使いアストラル体に力が流れ込むと全能感のような気持ちに覆われる。しかし、それは長くは続かない…、それは身をもって知っている。しっかりと想像し構築しなければ一瞬しかその効力は発揮されないのである。
私に全身全霊の力をもってパンチしてきたのであろうが、私はびくともしない。向こうからすると、鉄のマントを殴っているそんな感覚であっただろう…ただのぼろ布を纏っているおっさんに対してだ…。
「東雲さん、やっているなぁ…。俺をあの化け物から助けてくれた時を思い出すな。」
日出は東雲がもめている姿を達観し、まるで他人事のように見守っている。
「あぁ、千暁ちゃん、来たか。ちょっとまっててね、今東雲さんもめているんで。」
「日出さん、止めなくていいんですか?」
「なぁに、いつものことさ。」
千暁の心配とは裏腹に、日出は落ち着いていた。何の心配もない…余裕といった面持ちで、東雲と二人の男の方を見つめている。
その日出の姿に、千暁も心配の色はどんどんと抜けていき、まるで映画を見るかのようにリラックスしてその光景を眺め始めた。
「それで終わりか?もっと打って来いよ。」
「こいつおかしいぞ。どうなってるんだ?」
「だから言ったじゃねえか、化け物だって。」
ボクサーのミットうちを彷彿させるような攻防に、男たちも違和感を感じ始めたようだ。その瞬間を私は見逃さなかった。
「これも勉強料だ。」
私はその虎の腕を振りかぶり、男たちの体に4つの裂傷を刻み込んだ。
鎌のような形状のえぐり取る事に特化した爪を使い、男たちのアストラル体を削いだといった方が正しいかもしれない。
そして、削がれたその男たちのアストラル体は宙に舞い、霧のようにこの幽世の一部となった。
この現象はこの世界にアストラル体が還元されたと物であると推測しているが、正直なところよくわからない。しかし、こいつらのアストラル体もここにある草花の栄養の一部になれるのであれば本能であろう、そんなことを考えていた。
「俺の体が…。どうなってるんだ。」
「どうなったんだ、俺たち死ぬのか?」
「早く帰れ、死にたくなければな。」
私ははったりをかました。アストラル体が欠損したとしても、エーテル体がある限りそれを補填してくれる、いわば有限の自動回復機能といったところであろう。しかし、こいつらはその説明も受けていないような輩だ、さぞこのはったりは効いたであろう。
今言葉に恐れを抱いたのか、二人は尻尾を巻いて扉の方へ逃げかえっていった。
「とんだ災難だったな。」
私は言葉が通じるかわからなかったが、追いかけられていた草花をいたわった。
過去に私はこちらの世界の草花を誤って持ち帰ってしまい、現世で消滅させてしまったという罪がある、その罪滅ぼしとまではいかないとは思うが、少しでもその贖罪になればと思っていた。
草花は私の言葉を理解しているかのようにお辞儀をしてくれた…ように感じられた、それは私がそうであってほしいと思っただけかもしれないが…。
「東雲さん、終わりましたか?今回も派手に変化させちゃって。」
「脅しだよ。これくらいのインパクトがないとな。千暁さん、こっちはどうだい、変な感じはしないか?」
「はい、最初は戸惑いましたが。今は大丈夫です。それと、鎧の話ですがなんで買う前に言ってくれなかったんですか!」
千暁は仲間外れにされたようで怒っていた。しかし、相談もされていないので教えようもなかった、というのが喉まで出かかっていたがぐっとこらえた。
千暁は日出に教えてもらったのであろう、我々と同じようにぼろ布のようなアストラル体をまとっていたが我々より一回り大きい、そんな気がした。
「おまえら、それ以上するならただじゃおかないぞ。」
私は高圧的な態度で二人を威嚇する。
「なんなんだ、このおっさんは?俺ら気持ちよくなってきているってのに…急に入ってきやがって。」
「そうだ、お前に指図される筋合いなんてないだろ。」
「少しここのルールをわからせないといけないようだな。」
その男らはエーテル体を使ったアストラル体変化も使いこなせず、むき出しの肉体で走っているような素人であった…、基礎的な説明も受けていない。十中八九、裏のルートで【ゾンビパウダー】を買ったのであろう。そして、この【ゾンビパウダー】を危険薬物か何かと思っているようだ。
決しておっさんと言われたことに腹を立てたわけではない、そう自分にいい聞かせ、腕を虎のように変化させた。
腕は炎が揺れるかの如くゆらゆらと立ち上る白く長い毛をなびかせ、すべてを切り裂く鎌のような爪が伸びている。
「この腕で切り裂かれたくなければ、立ち去れ、二度と戻ってくるな。」
「なんなんだよ、その腕!ば、化け物か。」
「あぁ、化け物だ、なんとでも言え。こっちの世界の住人は俺みたいに甘くはないぞ。」
「おら!おっさん、なめんなよ。」
一人の男はその姿に畏怖し腰を落とし地面にへたり込んだが、もう一人の男はそうではなかった。直感的にエーテル体の使い方を理解したのであろうか、アストラル体が先ほどに比べ筋肉が隆起しているような状態になっていた。
ここまではよくある話だ、エーテル体を使いアストラル体に力が流れ込むと全能感のような気持ちに覆われる。しかし、それは長くは続かない…、それは身をもって知っている。しっかりと想像し構築しなければ一瞬しかその効力は発揮されないのである。
私に全身全霊の力をもってパンチしてきたのであろうが、私はびくともしない。向こうからすると、鉄のマントを殴っているそんな感覚であっただろう…ただのぼろ布を纏っているおっさんに対してだ…。
「東雲さん、やっているなぁ…。俺をあの化け物から助けてくれた時を思い出すな。」
日出は東雲がもめている姿を達観し、まるで他人事のように見守っている。
「あぁ、千暁ちゃん、来たか。ちょっとまっててね、今東雲さんもめているんで。」
「日出さん、止めなくていいんですか?」
「なぁに、いつものことさ。」
千暁の心配とは裏腹に、日出は落ち着いていた。何の心配もない…余裕といった面持ちで、東雲と二人の男の方を見つめている。
その日出の姿に、千暁も心配の色はどんどんと抜けていき、まるで映画を見るかのようにリラックスしてその光景を眺め始めた。
「それで終わりか?もっと打って来いよ。」
「こいつおかしいぞ。どうなってるんだ?」
「だから言ったじゃねえか、化け物だって。」
ボクサーのミットうちを彷彿させるような攻防に、男たちも違和感を感じ始めたようだ。その瞬間を私は見逃さなかった。
「これも勉強料だ。」
私はその虎の腕を振りかぶり、男たちの体に4つの裂傷を刻み込んだ。
鎌のような形状のえぐり取る事に特化した爪を使い、男たちのアストラル体を削いだといった方が正しいかもしれない。
そして、削がれたその男たちのアストラル体は宙に舞い、霧のようにこの幽世の一部となった。
この現象はこの世界にアストラル体が還元されたと物であると推測しているが、正直なところよくわからない。しかし、こいつらのアストラル体もここにある草花の栄養の一部になれるのであれば本能であろう、そんなことを考えていた。
「俺の体が…。どうなってるんだ。」
「どうなったんだ、俺たち死ぬのか?」
「早く帰れ、死にたくなければな。」
私ははったりをかました。アストラル体が欠損したとしても、エーテル体がある限りそれを補填してくれる、いわば有限の自動回復機能といったところであろう。しかし、こいつらはその説明も受けていないような輩だ、さぞこのはったりは効いたであろう。
今言葉に恐れを抱いたのか、二人は尻尾を巻いて扉の方へ逃げかえっていった。
「とんだ災難だったな。」
私は言葉が通じるかわからなかったが、追いかけられていた草花をいたわった。
過去に私はこちらの世界の草花を誤って持ち帰ってしまい、現世で消滅させてしまったという罪がある、その罪滅ぼしとまではいかないとは思うが、少しでもその贖罪になればと思っていた。
草花は私の言葉を理解しているかのようにお辞儀をしてくれた…ように感じられた、それは私がそうであってほしいと思っただけかもしれないが…。
「東雲さん、終わりましたか?今回も派手に変化させちゃって。」
「脅しだよ。これくらいのインパクトがないとな。千暁さん、こっちはどうだい、変な感じはしないか?」
「はい、最初は戸惑いましたが。今は大丈夫です。それと、鎧の話ですがなんで買う前に言ってくれなかったんですか!」
千暁は仲間外れにされたようで怒っていた。しかし、相談もされていないので教えようもなかった、というのが喉まで出かかっていたがぐっとこらえた。
千暁は日出に教えてもらったのであろう、我々と同じようにぼろ布のようなアストラル体をまとっていたが我々より一回り大きい、そんな気がした。
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