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第一部 神殺しの陰謀 第一章 受肉
危険な賭け
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気持ちの悪い浮遊感が終わり、いつも通りの場所に降り立ったと思っていたが、幽世の様相が変わっていることに気がついた。
「どうなってるんだ…。」
色とりどりの大地は荒れ果て、生い茂っていた草木は無惨にも踏み荒らされ、刈り取られている。その原因はすぐにわかった…、常世からの訪問者だ…、観光気分でこちらの世界に来ているのであろう。
ゾンビパウダーを服用しこの世界のルールを守らずに荒らしているのだ…。故意ではないにしろ私たちのようなイレギュラーな存在は幽世に大きな影響を及ぼしてしまう。しかし、明らかに通常の処方される流通量に比べて常世からの来訪者が多いように見えるのは気になる。そんなことを考えていた時に田口さんの母親がこの地に降り立った。
「田口さんのお母さん、リリーを感じる事はできますか?」
「はい、しっかりと感じられます。こちらの世界では別々な感じがしますね。」
私は目の前に広がる光景に目をつぶり、目の前の問題に集中した。よく目を凝らして見ると、リリーのアストラル体は完全に結合しているわけではなく各々の存在が見て取れた。
「お母さん、リリーと結合した時の事を教えてもらえますか?」
「はい…。リリーを連れて帰ってきてから、私には漠然とリリーを感じる事ができる様になりました。」
「はっきりと見えていたわけでは無いんですね。」
「はい…こう、力場と言いますか、そういった物が感じられるといった感じです。」
「ふむ…。」
この事象は一度、新薬開発の時に経験している。私が誤ってこちらの草花を現実に持ち帰ってきてしまった時と同じだ。霊的な何かが見えるといったような心霊番組であるようなことはなかなかない、見えるということはその幽世の住人はよほど強大なアストラル体を持っているものだと思っている。
「リリーは何か話しかけてきましたか?」
「いいえ。何らか力を感じるだけでした。でも、その力場もどんどん小さくなっていく感じがして、このままでは消えてしまうと思った私はリリーとまだ一緒にいたいと願いました。」
自らが望んで死者の世界の住人のアストラル体を取り込んでしまった様だ。
「わかりました。酷なことを言うかも知れませんが、あなたとリリーを完全に切り離したいと思っております。」
「はい…。私も申し訳無いことをしたなと思っています。こちらで楽しそうにしていたリリーを現世に連れ帰ってしまって…。」
「はい…、あなたの行動は間違いだらけでした。私の言いつけを守らなかった事が今回の事を引き起こしたと言うことを心に留めておいてください。」
「はい。大変申し訳ございません。」
私は強めの口調で田口さんのお母さんを叱責した。しかし、事は私が【ゾンビパウダー】を開発していた時にこういったトラブルが起こった際の対応に関して、安全性も含めてしっかりと詰めておくべきだったのだ。この叱責は自分への戒めの意味もこもっている。
「でも、よかったです、まだ間に合います。ここからは、お母さんの力もお借りしますよ。」
「何をすれば良いでしょうか?」
「ここからは私でもぶっつけ本番です。あなたのアストラル体の中にあるリリーのアストラル体と話したいと思っています。そのため、あなたの意識を一旦リリーに預ける事はできますか?」
「どうすれば…。」
「これも私の仮説の域は出ないのですが、エーテル体を使って一時的にリリーのアストラル体にエネルギーを供給してもらえないでしょうか?簡単に言うと、リリーに力を渡す想像をしてもらえればと思います。」
突拍子もない話に田口さんの母親は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているが、私の真剣な顔を見てやりますといった顔で頷いた。
私と日出で導き出した仮説としてはこうだ。
今は田口さんの母親のアストラル体の方が大きいため、結合してしまったリリーの意識が出てこられないのであろう。そして、幽世の住人はアストラル体しか持たないと考えている。
そうなると、大きなアストラル体に飲み込まれた小さなアストラル体は表に出てくることは不可能だと考えたのだ。しかし、受肉した場合は肉体を持つことになるのでこの結合した方のアストラル体にもエーテル体でエネルギーを送ることが可能になると仮説づけたのだ。
そうすることで、犬の方のアストラル体を一時的に田口さんの母親より大きくし、リリーの意識を引っ張り出すそれが今回の実験…解決案だ。しかし、リリーにそのままアストラル体を奪われるという最悪の事態も想定できる。
その一方で逆のやり方も考えたが、それは危険なので今回は止めた…、田口さんの母親のアストラル体を犬のアストラル体より小さくするという方法だ…。この方法であれば、もしアストラル体を犬のリリーに乗っ取られたとしても、犬のサイズのアストラル体なら簡単に私でも制圧できる…。
問題は制圧=消滅させるとなる可能性がある…ことだ。
実際に幽世の住人がアストラル体だけしか持たないかはわからないが、我々は肉体により作られたエネルギーがエーテル体として蓄積される。
エーテル体はいわば取り出し可能な蓄えられたエネルギーであり、アストラル体のエネルギーとして還元できる。そのため、我々は幽世でアストラル体の消費は無いに等しい。
実際はアストラル体を消費しているのであろうが、それをエーテル体が逐次補給しているので、プラスマイナスゼロといった様に打ち消していると思っている。これは日出のアストラル体欠損事件からわかったことだ。
こんな仮説を頭の中で押し黙ってぐるぐると試行していた私とは相対的に田口さんのお母さんは一心不乱に目を瞑り、何かをぶつぶつと呟いている。そして、田口さんのお母さんの中にあったリリーのアストラル体が次第に大きく反応し、田口さんのお母さんの半分を占めた時に急に様子が変わった。
「どうなってるんだ…。」
色とりどりの大地は荒れ果て、生い茂っていた草木は無惨にも踏み荒らされ、刈り取られている。その原因はすぐにわかった…、常世からの訪問者だ…、観光気分でこちらの世界に来ているのであろう。
ゾンビパウダーを服用しこの世界のルールを守らずに荒らしているのだ…。故意ではないにしろ私たちのようなイレギュラーな存在は幽世に大きな影響を及ぼしてしまう。しかし、明らかに通常の処方される流通量に比べて常世からの来訪者が多いように見えるのは気になる。そんなことを考えていた時に田口さんの母親がこの地に降り立った。
「田口さんのお母さん、リリーを感じる事はできますか?」
「はい、しっかりと感じられます。こちらの世界では別々な感じがしますね。」
私は目の前に広がる光景に目をつぶり、目の前の問題に集中した。よく目を凝らして見ると、リリーのアストラル体は完全に結合しているわけではなく各々の存在が見て取れた。
「お母さん、リリーと結合した時の事を教えてもらえますか?」
「はい…。リリーを連れて帰ってきてから、私には漠然とリリーを感じる事ができる様になりました。」
「はっきりと見えていたわけでは無いんですね。」
「はい…こう、力場と言いますか、そういった物が感じられるといった感じです。」
「ふむ…。」
この事象は一度、新薬開発の時に経験している。私が誤ってこちらの草花を現実に持ち帰ってきてしまった時と同じだ。霊的な何かが見えるといったような心霊番組であるようなことはなかなかない、見えるということはその幽世の住人はよほど強大なアストラル体を持っているものだと思っている。
「リリーは何か話しかけてきましたか?」
「いいえ。何らか力を感じるだけでした。でも、その力場もどんどん小さくなっていく感じがして、このままでは消えてしまうと思った私はリリーとまだ一緒にいたいと願いました。」
自らが望んで死者の世界の住人のアストラル体を取り込んでしまった様だ。
「わかりました。酷なことを言うかも知れませんが、あなたとリリーを完全に切り離したいと思っております。」
「はい…。私も申し訳無いことをしたなと思っています。こちらで楽しそうにしていたリリーを現世に連れ帰ってしまって…。」
「はい…、あなたの行動は間違いだらけでした。私の言いつけを守らなかった事が今回の事を引き起こしたと言うことを心に留めておいてください。」
「はい。大変申し訳ございません。」
私は強めの口調で田口さんのお母さんを叱責した。しかし、事は私が【ゾンビパウダー】を開発していた時にこういったトラブルが起こった際の対応に関して、安全性も含めてしっかりと詰めておくべきだったのだ。この叱責は自分への戒めの意味もこもっている。
「でも、よかったです、まだ間に合います。ここからは、お母さんの力もお借りしますよ。」
「何をすれば良いでしょうか?」
「ここからは私でもぶっつけ本番です。あなたのアストラル体の中にあるリリーのアストラル体と話したいと思っています。そのため、あなたの意識を一旦リリーに預ける事はできますか?」
「どうすれば…。」
「これも私の仮説の域は出ないのですが、エーテル体を使って一時的にリリーのアストラル体にエネルギーを供給してもらえないでしょうか?簡単に言うと、リリーに力を渡す想像をしてもらえればと思います。」
突拍子もない話に田口さんの母親は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているが、私の真剣な顔を見てやりますといった顔で頷いた。
私と日出で導き出した仮説としてはこうだ。
今は田口さんの母親のアストラル体の方が大きいため、結合してしまったリリーの意識が出てこられないのであろう。そして、幽世の住人はアストラル体しか持たないと考えている。
そうなると、大きなアストラル体に飲み込まれた小さなアストラル体は表に出てくることは不可能だと考えたのだ。しかし、受肉した場合は肉体を持つことになるのでこの結合した方のアストラル体にもエーテル体でエネルギーを送ることが可能になると仮説づけたのだ。
そうすることで、犬の方のアストラル体を一時的に田口さんの母親より大きくし、リリーの意識を引っ張り出すそれが今回の実験…解決案だ。しかし、リリーにそのままアストラル体を奪われるという最悪の事態も想定できる。
その一方で逆のやり方も考えたが、それは危険なので今回は止めた…、田口さんの母親のアストラル体を犬のアストラル体より小さくするという方法だ…。この方法であれば、もしアストラル体を犬のリリーに乗っ取られたとしても、犬のサイズのアストラル体なら簡単に私でも制圧できる…。
問題は制圧=消滅させるとなる可能性がある…ことだ。
実際に幽世の住人がアストラル体だけしか持たないかはわからないが、我々は肉体により作られたエネルギーがエーテル体として蓄積される。
エーテル体はいわば取り出し可能な蓄えられたエネルギーであり、アストラル体のエネルギーとして還元できる。そのため、我々は幽世でアストラル体の消費は無いに等しい。
実際はアストラル体を消費しているのであろうが、それをエーテル体が逐次補給しているので、プラスマイナスゼロといった様に打ち消していると思っている。これは日出のアストラル体欠損事件からわかったことだ。
こんな仮説を頭の中で押し黙ってぐるぐると試行していた私とは相対的に田口さんのお母さんは一心不乱に目を瞑り、何かをぶつぶつと呟いている。そして、田口さんのお母さんの中にあったリリーのアストラル体が次第に大きく反応し、田口さんのお母さんの半分を占めた時に急に様子が変わった。
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