或る騎士たちの初体験事情

shino

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或る騎士たちの恋愛事情(完結)

14話(R18表現あり)

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「えーっと、じゃあとりあえず、キス、してみる?」
「はあ!?い、いくらなんでも早急すぎないか?!」

 握手の後、リカルドの唐突な提案にノクスが顔を真っ赤にして慌てふためく。
 
「いやいや。俺たち21だぜ。そんな子供でもないだろ?」
「…………そう、だな」
 
 本当は生まれて初めてのキスはもう少しムードがある雰囲気の中でしたかったが、ここで純情ぶるのもなんだか恥ずかしいし、折角のチャンスを逃すのも勿体ない。
 何でもない顔を装いノクスが了承する。
 許可が出たのでリカルドは嬉しそうにノクスの顎を掴んで上を向かせ唇を寄せると、ノクスがぎゅっと目をつぶる。
 キスするときは目をつぶるタイプかと思いつつリカルドはノクスの顔を改めてみる。
 こんな至近距離で見るのは初めてだが、本当に綺麗な男だ。
 閉じられた目を縁取っているまつ毛は長く、金色に輝いていてわずかに震えている。
 つるりとした白い顔に頬がほんのり赤くなっていて、リカルドは可愛いなと思いつつ、ノクスの唇に唇を寄せる。
 ぎゅっと引き結ばれたピンク色の薄い唇にそっと唇を重ね、ちゅっちゅっと何度か啄んでみるが、唇は固く閉ざされており開く気配がない。
 ぺろりと舌で唇を舐めると驚いたのかノクスの口が薄く開いた。
 その隙を逃がさずリカルドは舌先を侵入させ歯列をこじ開けると、逃がさないというようにノクスの舌を絡めとる。
 リカルドの熱く柔らかい舌の感触にノクスは自分の口の中に別の生き物が入ってきたような感覚に陥り、どうしていいか分からず硬直する。
 混乱した頭の中でノクスはこれがディープキスと言う奴かと、少ない性知識を引っ張り出してどう対応したらいいか考えをめぐらせる。
 縮こまってしまったノクスの舌をあやすようにリカルドが舌先でそれを優しく突くと、ノクスも何か答えなければとリカルドの真似をしておずおずと舌を舐め返す。
 ノクスの反応に嬉しくなったリカルドはさらに口づけを深くする。
 夢中になって口を吸っているとノクスがリカルドの胸を乱暴にたたく。
 驚いて唇を離すとノクスがゲホゲホとむせ返る。

「お、おい、大丈夫か?もしかして息止めてた?」
「お前が全然離さないから……」
「ええと…………もしかしてキス、初めて……だったりする?」

 恐る恐る聞くリカルドに苦しさで涙の浮かべたノクスが睨みつけてくる。
 
「…………悪かったな。経験なくて」
「いやいやいや。別に悪くない!ちょっと驚いただけで……ほら、お前士官学校でもモテてたからさ。結構経験豊富なのかなって思ってただけで……」
「別にモテてなんかいない。私の周りにいると都合のいい奴らが勝手に群がっていただけだ」
「いや……結構本気の奴もいたと思うぞ……」
 
 学生時代、ノクスは何度か告白されたり、手紙をもらったりしたことはあったが全く興味はなかったので、時間の無駄だとすぐその場で断っていた。
 相手にされなかった見知らぬ誰かをリカルドは少し哀れに思う。
 
「じゃあ、今まで誰かと付き合ったことは……」
「……プライベートな時間を割いてまで、付き合いたいと思う奴がいなかったからな……」
「なるほど……。だったらゆっくりお前のペースに合わせるから」
「別に、気遣いは無用だ。お前の好きにすればいい」
「いやいや、こういうのはお互いを尊重するべきだろ?」

そう言うとリカルドは「でも……」と少し照れながら頬を掻く。

「その、お前のペースには合わせるけど、俺スケベだからさ……。その~~~ゆくゆくはエッチなこともしたいんだけど……」

 ストレートな言い方にノクスの顔がかっと熱くなる。
 もちろん、誰かと肌を重ねた経験もなかったが、下手に恥ずかしがるのも悔しくて目線をそらして答える。

「…………まあ、私も興味がないわけではないから……」
「そうか!じゃあ、一応確認だけど……」
 
 リカルドは嬉しそうに笑うと、慎重な面持ちになりノクスに尋ねる。
 
「その……お前は俺を抱きたいのか?」
「……お前のようなデカくて重そうなやつを抱く趣味はない……」
「じゃあ、俺が抱く側でいいってことか?」

 さすがに言葉に出すのは恥ずかしくてノクスは無言で小さく頷く。
 リカルドはほっと息を吐くと安心したように脱力する。

「よかった~!俺もまあ、お前が抱きたいっていうんなら覚悟を決めようと思っていたんだけど。じゃあ、さっそく……」
 
 ノクスのシャツのボタンにリカルドの手が伸びる。目的を察して慌ててノクスがその手を叩き落とす。

「ちょっと待て!だから早急すぎると言ってるだろう!」
「でもさ~、恋人っぽいことといえばやっぱりスキンシップだろ?」

 叩かれた手をさすりながらリカルドが口をとがらせて不満げに言うが、今日はもう許容量を超えているノクスがぴしゃりと言い放つ。

「私のペースに合わせるんだろう?!」
「う……そうだな……。じゃあキスだけ!」

 先ほどのキスは混乱して何が何だか分からなかったし、リカルドに翻弄されてばかりは負けず嫌いのノクスとしては屈辱だった。それに何より、夢にまで見たリカルドとのキスをもっと味わいたかった。
 
「…………それだったら、考えなくも……ない……」

 ノクスが恥ずかしそうにそう言うと、待てを許された犬のようにリカルドが嬉しそうにノクスの口に吸い付く。唇を舐めたり、下唇を甘噛みしたりするとノクスがくすぐったそうに笑う。

「犬か、お前は」

 ノクスの緊張が解けたことが分かると、優しい声音でリカルドが囁く。

「……口開けて」

 その声にぞくりと背筋を震わせるとノクスは導かれるように口をゆっくりと開く。

「キスしてるときは鼻で息すればいいんだ」
「……分かった……」

 リカルドが再び唇を寄せて優しく啄む。リカルドの唇は厚くて柔らかく、唇を食まれると気持ちいい。快感にノクスが蕩けてくるとそっとリカルドの舌先が口の中に侵入する。
 二回目という事もあり、驚きつつもノクスは先ほどよりかは落ち着いてそれを迎え入れる。そっと舌を絡め、リカルドの動きを真似するように懸命に舌を動かす。
 口の中で戯れるように二人の舌が絡み合う。
 段々体が熱くなってきて、鼻で息をしているのにかかわらずノクスは酸欠のように頭がぼんやりとしてきた。
 たっぷり唇と舌を堪能して満足したのかリカルドがちゅっと音を立ててゆっくり顔を離す。唾液で二人の間に糸を引いていたのをペロリと嘗めとる。その仕草がすごくセクシーでノクスの胸がドキリと高鳴る。
 リカルドが熱い目でじっと見つめてくるので、何を言われるのかとノクスはドキドキしながら言葉を待つ。

「……ノクス……す…………」
「す……?」

 その次に来るのは「き」だろうかとノクスは期待に胸を膨らませる。
 
「……すげえムラムラして、勃っちゃった。ちょっと触ってくんない?」
「………………は??」

 照れたようにはにかむリカルドに、ノクスの開いた口が塞がらない。
 今そんな雰囲気だったか?軽薄な男だと思っていたが、ここまでとは。
 いくら何でもデリカシーがなさすぎるとノクスの中に沸々と怒りが湧いてくる。

「いや、お前がすげえエロ可愛いから!」
「馬鹿!もう少しムードとかあるだろ?!」
「しょうがないだろ、男なんだから……その、分かるだろ?」
「…………トイレで抜いてこい!」
「ええー?!恋人が目の前に居るのに自分で抜くとか寂しすぎない?」
「お前が図々しすぎるんだ!このスケベ!!」
「ええ~~」

 ノクスが信じられない気持ちで怒鳴ると、リカルドはしょんぼりと肩を落としてトイレに向かう。
 
「……前の彼女はやってくれたのに……」
 
 ぼそりとつぶやいたリカルドの声をノクスは聞き逃さなかった。

「……待て」

 リカルドが振り向くと眉間にしわを寄せ氷のような冷たい目をしたノクスがいた。
 その目に睨まれると体感温度が10度ほど下がって、リカルドはぶるりと体を震わせる。

「そんなに言うならやってやる……」
「い、いや、そんな怖い顔で言われても…………」
「いいから座れ!」

 ノクスの迫力に負け、リカルドはおとなしく自分のベットに腰掛ける。
 
「む、無理しなくてもいいんだぞ……」
「黙っていろ!」

 前の彼女が出来て、自分にできない訳はない。対抗心が湧いてきたノクスはベットに座ったリカルドの前に跪き、緊張した手つきでズボンの紐を解く。
 くじけそうな心を振り払うように勢いよくリカルドのズボンごと下着を下ろすと、大きくて赤黒い性器が飛び出す。黒々と生えた下生えの下にあるそれは半分ほど勃ち上がっており、自分の倍くらいの大きなそれにノクスはごくりと息を飲む。自分のものとは色も形もサイズも違う。他の男の性器をこんなに近くで見たのは初めてだった。
 ノクスが興味深くジロジロと観察しているとリカルドが少し居心地悪そうに体を動かす。

「あ、あの~あんまりじっと見られると、さすがに恥ずかしいんだけど……」

 ノクスは恐る恐る指を伸ばしそれの先端にそっと触れる。先端の割れ目を指で何度が擦るとじわじわと透明な液体があふれ出てくる。
 自分の行為に対して反応したのかと思うと、このグロテスクなものが途端に愛しく感じるから、恋とは不思議なものだとノクスは思った。
 真剣な表情で股間を見つめるノクスにリカルドは少し不安になってくる。
 
「や、優しくお願いします……」

 性的な知識も経験もがないノクスは、とりあえず自分でする時のようにあふれ出た体液を竿に広げで塗り込めるようにゆるゆると手上下に動かす。
 リカルドにとってそれは少し優しすぎて刺激が足りなかったが、ノクスの白くて美しい指が自分の性器に触れているというビジュアルだけで興奮してくる。

「ん、気持ちいい……。でも、もう少し強くしてもいいぞ」

 リカルドがノクスの頭をなでるとノクスは嬉しそうに顔を上げる。
 少し指に力を入れて強めにこすり上げると、リカルドの口から熱い吐息が漏れる。

「ん……イイ……そこ、カリの部分……ああ、上手だな……」

 どうやらリカルドはここが好きらしい。集中的にカリの部分を指で引っ掛けるようにして擦り上げる。すると手の中の性器はさらに硬度が増して、ムクムクと勃ち上がる。先端からトロトロと透明な液体があふれ出てノクスの手を濡らす。
 自分がこの男を興奮させているのだと思うとノクスの中に少し優越感めいたものが生まれる。
 滑りの良くなった手でリズミカルに擦るとリカルドは気持ちよさそうに荒い息を上げる。
 その息づかいと熱を孕んだ色っぽい顔を見ているとノクスは自分も興奮してきて、股間がムズムズしてきた。

「何?お前も興奮してきた?一緒にする?」
 
 もじもじと下半身を捩るノクスの動きを見逃さなかったリカルドがにやりと笑う。
 ノクスが顔を真っ赤にして手を止める。

「するわけないだろ!」
「いいじゃん、恋人になったんだし。恥ずかしがんなって。ほら、俺もこうやって見せているわけだし」

 恥ずかしげもなく堂々と足を開いて見せるリカルドにノクスが呆れる。その大きさなら自信があるのだろうが色気がない。
 
「それにさ、セックスって裸で急所さらしてるわけだし、一番無防備な状態なわけだろ?それって、信頼関係がないとできないよな」
 
 お前の信頼を見せてみろと言われている様で、負けず嫌いのノクスはやらないわけにはいかなかった。

「……分かった……」
 
 立ち上がり、自分のズボンの紐に指を掛ける。
 しかし、紐を解き終えたところでノクスの指が止まる。
 リカルドは異性愛者だ。もし自分の性器を見て萎えられたら立ち直れないかもしれない。
 ノクスが戸惑っていると、リカルドがその腰を抱き寄せ、ノクスを見上げる。

「膝の上、座って」
「な……」
「恥ずかしいなら下は見ないからさ、一緒にやろうぜ」

 この状態なのもつらくてノクスは覚悟を決めるとベッドに膝を付きリカルドの足の上に跨る。
 人の膝の上に座るなんて子供の時にもした記憶がない。こんなに人と密着するのも初めてで、恥ずかしくてまともに顔が見れなかった。
 座高差でリカルドの顔が胸あたりにあるこの体勢はある意味ありがたかった。
 リカルドが顔を上げるとノクスに向かって唇を付きだしてくる。

「ん。お前がキスしてくんねえと届かないんだけど」

 チュウチュウと口を付きだすリカルドがタコみたいで面白くてノクスの口から笑いがこぼれる。
 緊張がほぐれ、ノクスは初めて自分からその唇にキスを落とす。
 チュッと一瞬触れただけだったがリカルドは嬉しそうに笑うと何度もノクスの唇を啄む。鳥の雛みたいで可愛いなとノクスが応えているとその間にリカルドの手がノクスのシャツのボタンにかかり、ゆっくりと外していく。
 ノクスが気づいたときにはすっかり胸元が開かれ、リカルドの唇が唇から頬、首筋、鎖骨と段々降りてくる。
 そんなところにキスされるのも初めてで、ノクスは驚きつつもその感触のくすぐったさに身を捩る。
 一人だけ胸を丸出しにしているのが恥ずかしくなり、ノクスが口を開く。
 
「私だけは不公平だ……お前も脱げ」
「ん?そうだな。俺も熱くなってきた」

 そう言うと手早くシャツを脱ぎベットの上に放り投げる。
 精悍な褐色の肌の厚い胸筋、綺麗に割れた腹筋が現れ、男の色気を感じてノクスの胸がドキドキと早鐘を打つ。
 
 再びリカルドはノクスの胸に唇を寄せ、右の小さな膨らみに吸い付く。暖かいぬるりとした感触に包まれノクスの体がピクリと反応する。
 口の中で舌で乳首を転がされて、そんなところも舐められたのももちろん初めてでノクスは恥ずかしくて死にそうな気分になった。
 チュッとリップ音を立てて口を離すとリカルドは濡れたノクスの乳輪を指で撫でる。
 
「前から思ってたけど、お前の乳首めちゃくちゃ綺麗だな。色といい、形といい。乳輪の大きさも俺が今まで見た中で一番綺麗だ」
「馬鹿!そんなとこ褒められても全然嬉しくない!というか、いつの間に見てたんだ!」
「ああ、着替える時とかにちらっとな」
「このスケベ!それに他人と比べるなんてデリカシーがなさすぎるぞ!」
「悪い、悪い」

 ノクスが真っ赤な顔をして怒鳴ると、リカルドは軽く笑って、再び乳首を舐め始める。反対側の乳首にも指が伸び、その突起を摘まんだりこねたりして愛撫というより遊んでいるようだった。
 無言で弄られているのに耐えられなくなりノクスが口を開く。

「……男の胸なんて弄っても楽しくないだろう……」
「そう?俺は楽しいけど。手触り良いし。気持ち良くない?」
「……どっちかというとくすぐったい……」
「そっか、まだ弄ったことないんだもんな。そのうち気持ちよくなるよ」

 そういってリカルドは反対側の乳首に口を寄せる。
 心臓の音がリカルドに聞こえないかとノクスはドキドキしながらその様子を見下ろす。
 
「ん……そんなところ感じない……」
 
 そういいながらもリカルドが自分の乳首を舐めているというビジュアルに再び股間が熱くなる。その様子に気づいたリカルドは、ノクスのズボンの裾からそっと手を忍び入れて陰茎をつかむ。

「あっ……!」

 いきなり触られてノクスは驚き、声を上げる。
 初めて他人に一番敏感な部分を握られ、腰が引けそうになる。
 なるほど、恥ずかしいのはもちろんだが、これは信頼関係がないとこんなところを触れさせるのは無理だ。リカルドならば少し力を入れれば握りつぶすこともできるだろう。
 緊張と混乱で体を固くしていると、先ほど自分がリカルドにしたようにゆるゆると亀頭の先を指で擦られる。快感と共に強張った体からゆっくりと力が抜けていく。じんわりと先端から液体が流れ出て、それを性器全体に塗り付けられる。
 
「んん……」

 鼻がかった声が出てしまいノクスはハッとなる。
 リカルドがにやりと満足そうに笑いかける。
 
「ん?気持ちいい?」
「……別に……」
「素直じゃねえなあ……」

 リカルドは不満げに言うと少し強めに竿を扱く。

「あっ……うっん……!」
 
 思わず高い声が出てしまい慌ててノクスが自分の口をふさぐ。

「かーわいい。もっと聞かせろよ」

 リカルドがにやりと笑い、ノクスの耳元でそう囁くと、遠慮なく下着の中で手を動かす。同時に乳首を可愛がることも忘れない。

「ん、痛い……少し強すぎる…」
「あ、すまん、お前はソフトタッチが好みなんだな」

 少し力を弱めてなだめる様に竿を優しく撫でる。
 気持ちよさにノクスの口から甘い吐息が漏れる。

「気持ちいいか?」
 
 初めて人から与えられる刺激にノクスの腰が揺れる。恥ずかしくてたまらないのに自分の意思とは関係なく体が勝手に動く。
 淫らな自分の姿にノクスは自己嫌悪で泣きたい気分になった。

「こんなの、私じゃない……」
「ここにいるのは俺だけだ。我慢せずに素直になれよ。恋人ってそういうもんだろ?ほら、俺なんかこんなに素直だ」 
 
 そんなノクスを励ますようにリカルドが明るく言うと完全に立ち上がってる自分の起立を布越しにノクスのそれに擦り付ける。
 ノクスはチラリとそれを見て、リカルドの性欲に比べれば自分の慎ましやかなのかもしれないと少し気分が楽になった。

「ん、大分濡れてきたな……このままだと下着が汚れちまうな」

 性器から一度手を離し、リカルドはノクスのズボンに手をかけ下着と一緒に下ろそうとするとノクスが慌ててリカルドの目を手で覆い隠す。

「見るな!」
「はいはい、見ないよ。腰上げて」

 言われるがままノクスが少し腰を浮かせる。
 するりとズボンと下着が下ろされ、ノクスの下半身が外気に晒される、寒さにぶるっと体を震わせる。こうして改めて比べてみると大きさも色も形も全然違う。

「見ないから、俺にも触って。実は結構限界なんだ」

 目元を隠されたままリカルドが切羽詰まった声を上げる。リカルドの性器は痛そうなくらいに張り詰めていた。
 ノクスはリカルドの目を覆っていた手を外し、リカルドの性器に手を伸ばす。
 下を見ないようにリカルドはノクスの顔をじっと見ながらノクスの陰茎を優しく包み込む。
 顔をずっと見られているのもある意味恥ずかしいのでは、とノクスは少し後悔した。
 ズボンの中では動きづらそうだったリカルドの手が大胆に動き、優しく、時に力強く、緩急をつけた巧みな動きにノクスは翻弄される。あまりの気持ちよさにノクスの手が止まる。
 
「ん……あっ……ああ……」
「おいおい、手がお留守になってるぞ」
 
 そういってリカルドは自分のものと一緒にノクスの性器を握りこむ。

「あっ…!」
 
 手とはまた違った感触にノクスが驚く。
 熱くて、硬くて、リカルドの脈動を感じて火傷しそうだ。
 亀頭同士がふれあい、お互いが流した先走りでちゅっと水音が鳴る。

「お、チンコ同士もキスした」
「ばっ……恥ずかしいことを言うな!!」
「ん?でも気持ちいいだろ?」
 
 そう笑うとリカルドは一緒に握りこんだ手を上下に動かす。
 大きなリカルドの手のひらに一緒に握りこまれて、熱くててヌルヌルしていて気持ちがいい。初めて感じる蕩けそうな快感にノクスの口から短い嬌声が漏れる。
 リカルドの息も上がってきて手の動きだけでは物足らないとばかりに腰が動き、ギシギシとベッドのきしむ音が部屋に響く。

「ああ、気持ちいいな……」
「ん……あっ……ああ……はぁ……」

 どんどん激しくなる動きに、ノクスは快感の海に溺れそうになり、不安になってリカルドの肩にしがみ付く。リカルドの肌は汗でしっとりと濡れており、汗の匂いがさらにノクスの脳を麻痺させる。


「はあ、はっ……あともう少しでいきそうだ……」
「あ……んっ……わ、私も……」
「一緒に……一緒にいこうぜ……」
「う、あっ……んんっ……!」

 ノクスの性器から熱い迸りが飛び出てリカルドの腹を汚す。
 脱力したノクスが荒い息を整えながらリカルドの肩にもたれかかる。
 
「お前早いって……」
「うるさい……お前が遅いんだ……」

 強すぎる絶頂の余韻にノクスの体と思考は停止し、すぐには動けそうにない。
 性器の大きさと持久力は比例するのだろうか、などとぼんやりと考えているとリカルドに右手を取られ、そのまま性器に導かれる。

「お前の手で行かせてくれ」

 今までにない余裕のない切羽詰まった表情でリカルドが言う。痛そうなくらいに膨張しそそり勃った性器が絶頂を待っていた。ノクスは早く楽にしてやろうとリカルドの性器を強めに扱く。その動きに合わせて吐かれる熱い吐息、眉根を寄せて感じ入る顔が男らしくてすごく色っぽい。その顔を見ているとさっきいったばかりのノクスの股間にまた熱が灯る。

「ああ、気持ち良い……いく……いくぞ……」

 低い呻き声と共にリカルドの先端から白濁が飛び出してノクスの手を汚す。
手の中でくたりと性器が力を失っていく。

「はあ、はあ……気持ちよかった……ありがとな……」

 荒い息を整えつつ、ノクスのこめかみにキスをする。
 ぼんやりとして反応のないノクスにリカルドは少し心配になってぺちぺちと頬を軽く叩く。

「おい、ノクス、大丈夫か?」
「…………大丈夫……じゃない……初めて、だったんだ……」
「誰だって初めてはある。俺も初めての時は何も分かんなかったからな。これからゆっくり慣れて行けばいいさ」

 そういってリカルドは笑うとノクスの頬にチュッと音を立ててキスをする。
 なるほど、セックスは一種のコミュニケーションなのかもしれない。ぐっとリカルドとの距離が縮まった気がする。スキンシップは偉大だなとリカルドにもたれかかったままノクスはぼんやりと考える。

「気持ちよかったか?」
「……なんか、もう頭がいっぱいで、何が何だか……」
「そっか……今日色々初めてだったもんな。こっから先はキャパオーバーか」

 そういいながらあやすように背中を撫でていた手が下に降りて行きノクスのむき出しの尻をなでる。その指がすっと割れ目をたどって、隠された窄まりに触れる。
 急に思ってもみなかった場所に触れられてノクスが飛び上がる。

「な、な、な、なんでそんな所に触る?!」
「俺も男とはしたことないけど、その、男同士はここを使うんだろ?」
「そ、そうなのか……?そこに、その……挿入……するのか……?」
「そう聞いたことあるけど、でも具体的どうすればできるのか俺も知らないから、調べてみねえと……」
「入るのか……?こんなところに……」

 そう言ってリカルドの股間を見る。今は力を失って先ほどではないが、それでも大きい。
 どう考えても入るとは思えなくてノクスは少し怖気づく。
 
「まあ、でもいきなりやったら怪我するだろうし、ゆっくりやろうぜ。疲れただろうし、今日はもう寝よう」

 リカルドはノクスの唇に軽くキスをすると、ノクスを膝から降ろし先ほど脱いだシャツで汚れたノクスの手と下半身を丁寧にぬぐう。自分の下半身を乱暴に拭うとまとめて床に放り投げた。

「おい、服を床に投げるな」
「はいはい、明日ちゃんと洗うから。もう寝ようぜ」


 いつもなら片付けるまでうるさく言うノクスだが、今日はもうその元気も残っていなかった。
 今までは一応気を使って後ろを向いて着替えたりしていたが、今更隠すのも馬鹿らしいと思い、リカルドは堂々と下着を履き替えると寝間着に着替え自分のベッドに潜り込む。
 まだ先ほどまでの出来事を処理しきれていないノクスはゆっくりと寝間着に着替えると、首の後ろでまとめていた髪を横で緩くまとめ直しいつも通り自分のベッドの布団をめくる。

「おいおい、そっちじゃねえだろ?」
「は?」
「恋人になって初めての夜だぞ。一緒に寝ようぜ」

 そう言ってリカルドは自分の布団をめくりあげて、ここに来いとばかりにベットの空いたスペースを叩く。

「恋人同士は普通一緒に寝るものなのか……?」
「まあ、いつもじゃなくていいと思うけど……今日くらいはいいだろ?」
「でも狭いし、ゆっくり寝れないだろ……」
「も~。もう少しイチャイチャしたい男心が分かんねえかなあ」

 すねたように言うとリカルドはノクスのベットにやってきて、その上にノクスを優しく押し倒す。
 そのまま上から布団をかぶると、その中で正面からノクスを抱きしめる。

「おい、狭い!暑い!」
「つれないなあ。さっきはあんなに可愛かったのに……」
「うるさい……!」
「さ、明日も早いし、さっさと寝るぞ。お休み」

 真っ赤になって暴れるノクスを抱きしめたまま額にキスすると、リカルドは寝息を立て始める。
 体に回された腕を外そうとしてもがっちりと抱きしめられていてほどけそうにない。
 ノクスは脱出をあきらめて眠るリカルドの顔を見る。自分のものとは違う体臭に包まれて違和感はあったが嫌な臭いではない。

 今日はいろんなことが起きすぎて混乱しっぱなしだった。まさかリカルドと付き合うことになって、キスして、お互いの性器を触りあって、一緒のベッドに寝ることになるなんて。昨日まではそんなことになるなんて思いもしなかった。本当に人生何が起こるか分からない。
 この先何が起きても、今日という日を忘れることはないだろうとノクスはリカルドの腕の中で思った。
 誰かと一緒に寝るなんてそれこそ物心ついてから一度もなかったから、人の体温がこんなに暑いなんて思わなかった。いや、単にリカルドが子供体温なのかもしれないが。

 「暑い……」
 
 今夜は眠れそうにないなとリカルドの寝息と体温を感じつつ、幸せな気分に包まれてノクスは目を閉じた。

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