5 / 5
5、居場所
しおりを挟む
目が覚めて驚いた。お兄さんに抱きついて寝ていたから。
恥ずかし…。内緒にしよう。
私はそっとベッドから出て玄関へ向かった。
まだ六時半だから父は寝てる。そっと隠しておいた鍵を使って家に入って学校のバックと制服一式、あと家にある食料を少しだけもってまたお兄さんの家に戻った。
さっき家の棚に引っ掛けて切れた手の甲が痛いけどほかは無事。
ブカブカのパジャマを脱いで制服に着替えるとなんだか制服がいつもより小さく感じた。
大きいものを着てるといつもの服が小さく感じるのか…。
あ、お泊まりバックも持ってきておこう。もう一度家へ戻って黒いバックへパジャマと下着。その他諸々を詰め込んでお兄さんの家のキッチンへ持ってった。
さて、朝ごはんを作ろう。
キッチンお借りしますよ~っと。
あまり使われていない様子のきれいなキッチンは料理がしやすかった。
食器もお兄さん家のを借りた。
トーストとスクランブルエッグとソーセージ。
まぁ、うまく作れたんじゃない?そろそろお兄さんも起きてくるはず。アラームのかけてある時間をこっそり見たから知ってる。
ちなみにお兄さんのケータイはまさかのガラケーだった。
あ、お兄さん。
「おはよー」
「ん」
寝ぼけているのかぽやぽやしてる。
「キッチン借りたよー?ご飯あるから座って」
お兄さんはやっぱり食べている間も自分からは話さなかった。
ま、美味しいですって言葉はちゃんとくれたけど。
私はお兄さんの寝癖がツボにはまって笑いが止まんなかった。あれはないよ。そのせいでお茶を吹いてしまって、お兄さんには誰にも言わないでよねって口止めした。
「そーいやおにーさん、その髪が白いのって染めてるんじゃないの?そのわりにはすごいサラサラだったんだよね」
そう、気になって昨日の夜ちょっとだけさわっちゃったんだ。
「……アルビノなんですよ」
ヤバいって思った。
「さわったんですか?勝手に?」
地雷だった。
「許可ぐらい………とれよ…」
「ご、ごめん」
慌てて謝ったけれど、お兄さんは静かに立ち上がってどこかへ行こうとする。
「謝る…ってば」
どうしたらいいんだろう。表情が読めないせいで余計にどうしていいかわからない。
どこかへ行ったかと思ったけれど、お兄さんは小さな箱を持って私の前へと戻ってきた。
「ごめん…なさい…」
お兄さんは私の手の傷に絆創膏を貼ってくれた。何度も何度もやり直して、二枚も無駄にした。
お兄さんは結局私を許してくれて、安心した私は調子に乗ってお兄さんの手の大きさにはしゃいでしまった。
だって私の手よりも関節一つ分くらい大きかったんだもん。
ふと時計を見て私は正直かなり焦った。遅刻する。
「ごめんお兄さんっ、遅刻しちゃうから学校行くねっ」
「気をつけてください」
「…うんっ」
まるで普通の家の朝みたいな会話。
「いってきまぁーす」
「いってらっしゃい」
そんな会話にちょっとだけ顔がにやけてしまう。
何年も前にお母さんに行ってきますと言ったような記憶がある。その時いってらっしゃいと言われたかどうかは覚えてない。
学校にはギリギリで着いた。
(おはよー和ちゃん)
「あ、おはよーあーちゃん」
(遅かったねー、お休みかと思っちゃったよ)
「あはっ、私も今日は本気で遅刻するって思った」
私を和ちゃんと呼ぶのは中学からの友達のあやねという子。
おっとりしてて凄く可愛い。
「でもちゃんと着いたからいいや」
(…また…お父さん?)
あーちゃんは私の家のことを知ってる。まぁこんな傷だらけじゃ皆分かってんだけど私が気にしないでっていった。
先生にも、何もしないでって。
それでもあーちゃんはやっぱり私のことを毎日心配してくれる。シップとか絆創膏を貼ってくれるのもあーちゃん。
「違うよー」
そう、今日は違う。今日は…にやけちゃうほど幸せな朝だった。
(そっか、よかったぁ)
「んふふ、ありがとう。いっつも心配してくれて」
前、どうしてそんなに心配するのって聞いたことがある。そしたらあーちゃんってば私がお父さんに殺されちゃう気がして怖いって泣いた。まさか友達にそんな心配されてるなんて思わなかったからびっくりしたよ。あのときは。
だから私はあーちゃんを泣かせないために生きてるんだ。だってそれくらいしか私に生きる理由がないんだもん。
(当たり前だよ!)
当たり前…か。それがどれだけ私を支えてるか…あーちゃんは知らないんだもんなぁ。
「ありがとう、あーちゃん大好きぃ」
大好き。本当にありがとう。
私の居場所。私の居ていい所。
私の……大好きな時間。
恥ずかし…。内緒にしよう。
私はそっとベッドから出て玄関へ向かった。
まだ六時半だから父は寝てる。そっと隠しておいた鍵を使って家に入って学校のバックと制服一式、あと家にある食料を少しだけもってまたお兄さんの家に戻った。
さっき家の棚に引っ掛けて切れた手の甲が痛いけどほかは無事。
ブカブカのパジャマを脱いで制服に着替えるとなんだか制服がいつもより小さく感じた。
大きいものを着てるといつもの服が小さく感じるのか…。
あ、お泊まりバックも持ってきておこう。もう一度家へ戻って黒いバックへパジャマと下着。その他諸々を詰め込んでお兄さんの家のキッチンへ持ってった。
さて、朝ごはんを作ろう。
キッチンお借りしますよ~っと。
あまり使われていない様子のきれいなキッチンは料理がしやすかった。
食器もお兄さん家のを借りた。
トーストとスクランブルエッグとソーセージ。
まぁ、うまく作れたんじゃない?そろそろお兄さんも起きてくるはず。アラームのかけてある時間をこっそり見たから知ってる。
ちなみにお兄さんのケータイはまさかのガラケーだった。
あ、お兄さん。
「おはよー」
「ん」
寝ぼけているのかぽやぽやしてる。
「キッチン借りたよー?ご飯あるから座って」
お兄さんはやっぱり食べている間も自分からは話さなかった。
ま、美味しいですって言葉はちゃんとくれたけど。
私はお兄さんの寝癖がツボにはまって笑いが止まんなかった。あれはないよ。そのせいでお茶を吹いてしまって、お兄さんには誰にも言わないでよねって口止めした。
「そーいやおにーさん、その髪が白いのって染めてるんじゃないの?そのわりにはすごいサラサラだったんだよね」
そう、気になって昨日の夜ちょっとだけさわっちゃったんだ。
「……アルビノなんですよ」
ヤバいって思った。
「さわったんですか?勝手に?」
地雷だった。
「許可ぐらい………とれよ…」
「ご、ごめん」
慌てて謝ったけれど、お兄さんは静かに立ち上がってどこかへ行こうとする。
「謝る…ってば」
どうしたらいいんだろう。表情が読めないせいで余計にどうしていいかわからない。
どこかへ行ったかと思ったけれど、お兄さんは小さな箱を持って私の前へと戻ってきた。
「ごめん…なさい…」
お兄さんは私の手の傷に絆創膏を貼ってくれた。何度も何度もやり直して、二枚も無駄にした。
お兄さんは結局私を許してくれて、安心した私は調子に乗ってお兄さんの手の大きさにはしゃいでしまった。
だって私の手よりも関節一つ分くらい大きかったんだもん。
ふと時計を見て私は正直かなり焦った。遅刻する。
「ごめんお兄さんっ、遅刻しちゃうから学校行くねっ」
「気をつけてください」
「…うんっ」
まるで普通の家の朝みたいな会話。
「いってきまぁーす」
「いってらっしゃい」
そんな会話にちょっとだけ顔がにやけてしまう。
何年も前にお母さんに行ってきますと言ったような記憶がある。その時いってらっしゃいと言われたかどうかは覚えてない。
学校にはギリギリで着いた。
(おはよー和ちゃん)
「あ、おはよーあーちゃん」
(遅かったねー、お休みかと思っちゃったよ)
「あはっ、私も今日は本気で遅刻するって思った」
私を和ちゃんと呼ぶのは中学からの友達のあやねという子。
おっとりしてて凄く可愛い。
「でもちゃんと着いたからいいや」
(…また…お父さん?)
あーちゃんは私の家のことを知ってる。まぁこんな傷だらけじゃ皆分かってんだけど私が気にしないでっていった。
先生にも、何もしないでって。
それでもあーちゃんはやっぱり私のことを毎日心配してくれる。シップとか絆創膏を貼ってくれるのもあーちゃん。
「違うよー」
そう、今日は違う。今日は…にやけちゃうほど幸せな朝だった。
(そっか、よかったぁ)
「んふふ、ありがとう。いっつも心配してくれて」
前、どうしてそんなに心配するのって聞いたことがある。そしたらあーちゃんってば私がお父さんに殺されちゃう気がして怖いって泣いた。まさか友達にそんな心配されてるなんて思わなかったからびっくりしたよ。あのときは。
だから私はあーちゃんを泣かせないために生きてるんだ。だってそれくらいしか私に生きる理由がないんだもん。
(当たり前だよ!)
当たり前…か。それがどれだけ私を支えてるか…あーちゃんは知らないんだもんなぁ。
「ありがとう、あーちゃん大好きぃ」
大好き。本当にありがとう。
私の居場所。私の居ていい所。
私の……大好きな時間。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる