水面下ならば潜ろうか

森羅秋

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瞬とカンゴウムシ事件と夏休み

手に入れた情報

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 瞬はまず盗聴器の回収に向かった。ゴミ箱に少しゴミが溜まっていたが捨てられてはない。しっかり回収してポケットに突っ込む。

(さてと、証拠を探しますか)

 数台あるうちの一台を選んで電源を入れる。そこにノートパソコンを繋いでロックを解除しながらフォルダを片っ端から漁っていく。殆どが業務の内容で怪しいところは特にない。

(むー。やっぱりこっちとかには置いてないのかな)

 別の場所、もしくは情報は常に傍に置いているという可能性がある。

(だとすればー。研究職員全員ではなくて、数人が関与してるだけ…………そうだ、研究員全員がそれぞれ個別に情報を管理しているはず)

 瞬は記憶を辿る。メモに残すとそれが証拠となるので、匠からは秘密の行動をする際の情報は全暗記を徹底されている。

(パトリック=ビリオート。ステン=ホルムだったね)

 一台目のパソコンは彼らの名前がなかった。三台目にパトリックの名を発見する。ロックを解除してザッとタイトルを閲覧する。

(まるっとコピっちゃおう)

 データを移している間にステンを探し出し、パトリックが終わるとすぐにデータを抜きだす。その間少し時間があったので、部屋の中で事前に怪しいなぁという部分を調べ始める。まずは彼らのデスクの横にある引き出しを調べる。仕掛けが無いか入念にチェックすると、パトリックの引き出しの一番下。奥の板に変な厚みがあった。引っ張り出して中身が入ったままそこを触る。妙なでっぱりがあったので押すとガコっと音が鳴った。

(全部引っ張り出さないとわかんないけど、これ蓋だったね)

 後付けされて作られた五センチ幅の隙間からノートが数冊出てくる。ペラペラめくると、カンゴウムシの生態及び性質の記録が書かれていた。

(ふぅむ。実験の日記だ。収穫だね)

 詳しいことは後にして、そのノートすべてを写してデータにして保存する。勿論、どこに隠していたのかもしっかり写しておく。それが終わったら元通りに戻しておく。瞬間記憶も長けている彼女は触る前と全く同じように、埃すらも同じ場所に戻した。コピーも滞りなく終了した。電源を切る前に履歴を確認する。本日の履歴を全て消去してから終了する。

(多少の電気代はかかっているから、そこから割り出されたらやだなぁ。……大丈夫だろうけど)

 本日の目標はこれで達成したので瞬は最初の倉庫へ戻ると、細工していた監視カメラの映像を元に戻す。
 その後で写したノートのデータを確認した。実験の内容は一月から始まっている。カンゴウムシの卵を採取、遺伝子操作から始まり、多数の虫の遺伝子と他のカンゴウムシの遺伝子を合わせて新種を何百体も制作。
 その殆どが一代限り短命で終了するも、稀に生殖を残しつつ生存。
 それらをかけ合わせたりまた卵を採取して別のカンゴウムシとかけ合わせたりを繰り返すこと四か月間、自生できる毒性の高いカンゴウムシが数体誕生する。そこから更に改良を加えて数を増やし、現在の種類に達したようだ。

 五月ごろ、そこから泉都市の奥の森林に放して観察している内容が続いている。記載によると、そのころは毎回同じ場所に放しており、そこは深淵都市の一番北にあるホープになっている。

(ふーむ。その場所の付近に何かありそうだね。下見がてら今から行ってみるかな。でもちょっと遠い)

 時刻は午前四時前。

(匠起きてるかなー)

 メールで連絡を入れるとすぐに返事が返ってきた。『おっけー。メガトポリスで待ち合わせなー』と書かれている。

(起きてた…………。じゃぁ帰ろうっと)

 侵入スタイルから通常の私服に着替えて、誰もいない事を確認してから、瞬は倉庫の窓からこっそり抜け出した。

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